証券会社をはじめとする金融機関からIFAへの転職が増加しています。
転職者に話を聞くと、転職の動機として、「働き方を変えたい」というビジネスモデルに関する点と、「年収増加が期待できるから」という待遇面の2つの軸があるようです。
この記事では、特に待遇面に焦点を当て、IFAは儲かるのか、という疑問に対して客観的に解説します。
IFAの報酬の仕組み
IFAの報酬は、所属するIFA法人との雇用契約、給与形態によって異なります。給与形態は、業務委託契約の完全歩合制と、正社員雇用による固定給と賞与の大きく2つのタイプに分かれます。
稼ぐには業務委託契約
社員雇用でIFAとして働く場合は、証券会社や銀行などの金融機関の給与水準と大きく変わりませんので、IFAに転身して大きく稼ぎたいと考えている方は、業務委託契約でIFA法人に所属して、個人事業主として働くことをお勧めします。
なぜなら、業務委託契約のIFAの報酬は、自身が達成した金融商品、保険契約、不動産仲介などの手数料のうち30%-70%が期待できるからです。
大きな金額の取引が発生すれば、短期的に大きな収入を確保することができるでしょう。
個人事業主は経費が使える
また、個人事業主として業務委託契約にてIFA法人に所属するメリットの一つは、個人事業主の税金対策が活用できるです。
会社員として年収1,000万円の所得がある場合、所得税、住民税、社会保険料等で約300万円が給与天引きされて700万円が可処分所得となります。
一方で、個人事業主の場合は、所得金額から必要経費を差し引くことができますので、所得税や住民税の金額は会社員の場合よりも低くなる可能性があります。
兼業・複業が可能
例えば、転職エージェントとして働きながら、転職希望者の資産運用などのライフプランニング面でも相談にのるIFAがいます。
業務委託でIFAを行う場合は、出社や勤務時間などの制約に縛られず、比較的自由に活動できます。
収入面だけではなく、仕事の幅を広げるメリットがある点、また、金融機関という肩書が社会的信頼を高める点も人気の一つです。
稼いでいるIFAの3つの特徴
IFAのビジネスは金融商品の販売、仲介による手数料収入を基本として成り立っています。稼いでいるIFAは主に3つのタイプに分かれますが、それぞれの共通点を見ていきましょう。
富裕層ビジネスをしている
富裕層ビジネスを得意とするのは、証券会社出身のIFAと、不動産仲介出身のIFAです。
すでに前職で富裕層とのネットワークを築いており、このネットワークを生かして顧客基盤を構築することで成功しています。
富裕層ビジネスの特徴は、取引金額が大きいことです。IFAの報酬額は、取引金額×手数料率×還元率が基本となるため、取引金額が大きいと一度の取引による報酬も大きくなります。
このようなIFAは、相対的に少人数の富裕層に対して時間をかけて幅広いサービスを提供しています。その背景は、富裕層がIFAに求めるニーズが広範囲にわたるからです。
資産運用によって金融資産を増やすことだけでなく、金融資産以外の不動産や自社株のマネジメント、相続や事業承継の相談、M&Aや人材採用に至るまで様々なニーズに応えることで、顧客と強い関係性を維持しています。
まさにプライベートバンカーのような働き方と言えるでしょう。また、前職で不動産仲介をしていたIFAは、引き続き不動産ビジネスも継続していることが多くあります。
法人ビジネスをしている
法人ビジネスを得意とするのは、銀行、保険代理店出身のIFAです。
それぞれ強みとする分野は異なりますが、共通しているのは、企業経営者の法人の悩みに応えることで、法人の資産運用、保険、不動産等のビジネスを受託する以外に、経営者個人の資産運用なども相談に乗っている点です。
銀行出身のIFAは企業の経営やファイナンスに精通しており、経営者の悩みに乗るだけではなく、具体的なアドバイスをすることが可能です。
また、保険代理店で事業保険と言われる事業に関連する保険商品や、事業リスクを軽減する損害保険等を取り扱ったことがあるIFAは業務提携先の保険会社を通して適切な保険商品を紹介することが可能です。
彼らは知り合いの税理士を紹介して、税務面のアドバイスも提供していることが多くあります。
資産形成層ビジネスをしている
資産形成層ビジネスを得意とするのは、保険代理店や保険会社で営業員として働いていたIFAです。
20代や30代などの資産形成層のビジネスは取引金額が小さくて儲からないと思われがちですが、生命保険の収益モデルはその限りではありません。
例えば、毎月3万円を積み立てる米ドル建ての生命保険を契約した場合、積み立て期間や保険商品によって手数料率は異なりますが、初年度で30万円程度の手数料を期待することは難しくありません。
また、契約者が積み立てを継続していれば、2年目以降の手数料も期待できます。
資産形成層ビジネスでは、取引金額は小さいものの、契約件数を積み上げることで年収2,000万円以上の報酬を得ているIFAが多くいます。
取引手数料の大きな案件は3つある
次に、大きな報酬を稼いでいるIFAのビジネスモデルについて、投資商品やサービスの観点から見ていきましょう。以下、取引手数料の大きな案件として代表的なものを記載しました。
不動産仲介
不動産の仲介手数料は3%が相場であり、1億円以上の物件の取引が成立することもあるため、大きな手数料収入につながります。
もともとマンションや駐車場などの投資用不動産は、将来のインカムゲインを得る投資対象として根強い人気があります。
また、数年前から、相続対策でタワーマンションを購入する富裕層が増え、IFAにとっても大きな収益の柱になっています。
M&A仲介
最近は、自身が経営する企業をM&Aで売却する取引が多くなっています。
その背景は、後継者不在や、相続時の納税資金対策など様々ですが、レコフデータが公表している2019年の国内M&Aの件数は4,088件となっており、過去最高を更新しています。
M&A仲介は成功報酬の形態が一般的となっており、その手数料率はレーマン方式という累進手数料率が採用されることが通例です。
しかし、未上場の中小企業が成立した際の成功報酬は最低保証1,000万円を掲げているM&A仲介会社が多く、これはIFAが仲介を成立させた場合も期待できる報酬水準と言えます。
また、M&A仲介は、特別な免許や事前登録なく業務を開始できるため、取り扱いサービスの中に含めておいて損は無いといえるでしょう。
外国債券
外国債券は日本円の債券と比較して金利が高く、顧客に人気の金融商品の一つです。
劣後債などの格付けが低い債券や、長期債、永久債などの満期までの期間が長い債券はより高利回りが期待できます。そのため、IFAが得られる手数料率も比較的高く、2 – 8%が相場と言われています。
また、外国債券の手数料高い理由は、株式や投資信託などの金融商品の取引手数料と異なり、顧客に対して具体的な金額を明示する必要がないことです。
IFAの手数料は、顧客の購入額面から、実際に証券会社から提示される調達額面を引いた金額から計算されます。
つまり、手数料率を高く設定してしまうと、顧客の購入額面が高くなり、実質利回りが低下します。
一方、もともとの表面利率が高かったり、調達額面が低い場合は、手数料が高くても顧客の実質利回りはある程度維持できるというメリットがあります。
また、債券の満期までの期間が長くなると、手数料率を高く設定しても、顧客の実質利回りはそこまで低下しません。
債券の実質利回りの計算はここでは割愛しますが、興味がある方は実際の例で計算をしてみると理解が深まるでしょう。