IFA法人大手のアイ・パートナーズフィナンシャル。IFAへの転職を検討する際、多くの人が目にする企業ではないだろうか。
そこで本記事では、アイ・パートナーズフィナンシャルの報酬体系やサポート体制について紹介していく。
アイ・パートナーズフィナンシャルの概要
アイ・パートナーズフィナンシャルは、平成18年に設立された金融商品仲介業者だ。2022年3月末時点で在籍しているIFAは212名となっており、横浜の本社を含め全国21ヶ所にオフィスを構えている。
ここでは、アイ・パートナーズフィナンシャルの「2022年3月期決算説明資料」をもとに収益モデルや預り資産額について解説していこう。
アイ・パートナーズフィナンシャルの収益モデル
アイ・パートナーズフィナンシャルの「2022年3月期決算説明資料」によると、2022年3月期通期の売上高は以下の通りだ。
売上高(単位:百万円) | 3,806 |
金融商品仲介業 | 3,434 |
システム使用料 | 244 |
保険代理店その他 | 127 |
アイ・パートナーズフィナンシャルの2022年3月期通期の売上高は約38億円、その内の約90%が金融商品仲介業、つまり取引手数料による収益となっている。
その他所属するIFAが支払うシステム使用料やグループ会社との連携業務による収益も上げているが、売上のほとんどを取引手数料でまかなっている状況だ。これはアイ・パートナーズフィナンシャルに限らず、IFA法人の多くで見られる収益構造といえるだろう。
また、取引手数料による収益の大半を所属IFAへ還元するため、売上高に対する営業利益率が低いことも特徴である。アイ・パートナーズフィナンシャルの2022年3月期通期の営業利益は1億1,600万円であるため、3.05%の営業利益率となる。
アイ・パートナーズフィナンシャルの預り資産額
アイ・パートナーズフィナンシャルの預り資産額(AUM)は、2022年3月末現在で2,421億円である。年度末の目標額を2,400億円に設定していたため、+ 21億円で目標を達成したこととなる。
下のグラフはアイ・パートナーズフィナンシャルの預り資産残高の推移を示したものだ。
預り資産額の推移は所属IFAの人数や市況に影響を受けるものの、およそ右肩上がりで増加しているといえる。また、預り資産の内訳についても、株式、債券、投資信託とバランスよく分散されている印象だ。
アイ・パートナーズフィナンシャルのサポート体制
アイ・パートナーズフィナンシャルでは、所属IFAに対して以下のようなサポート体制を設けている。
- 電話サポート、代理発注
- Zoomテレビ会議システム
- 社内イントラ、タイムリーな情報提供・コンプライアンス、営業支援
- インフラ設備、オフィス提供
- グループでの対応、各士業との連携
これまで在籍していた金融機関ではマーケットレポートが配られたり、社内セミナーが頻繁に開かれたりと、情報収集の手段に困ることはなかっただろう。委託契約のIFAとして働く場合、「マーケット情報を自分できちんと集められるだろうか」と不安に感じるかもしれない。
しかし、アイ・パートナーズフィナンシャルでは、Zoom会議や社内イントラによって研修・情報提供が行われているため、これまで同様に営業活動に役立つ情報を得ることが可能だ。Zoom会議では月に1〜2回、商品情報や市場見通しに関するオンラインセミナーが開催されている。
さらにアイ・パートナーズフィナンシャルでは、グループ会社「AIPコンサルタンツ」との連携も活発である。AIPコンサルタンツは相続・贈与対策業務を手掛けており、税理士などの士業とも連携しているため、顧客のライフステージに合わせた提案・営業で有効活用できるだろう。
なお、特筆すべきはコンプライアンス管理体制の整備・強化に注力している点である。IFA法人の中には、内部管理責任者自身も顧客を担当し営業活動を行っているケースも少なくないが、アイ・パートナーズフィナンシャルは内部管理業務専任の内部管理責任者10名の体制であり、今後さらに業務管理部門は拡大する予定であると聞いている。
IFAとして長期的に安心して活動しようと思うのであれば、コンプライアンス管理体制は、IFA法人を選択する際の最重要ポイントのひとつであろう。
またコンプライアンス管理の部署とは別に、所属するIFAからの事務問合せや、IFAが不在時の電話対応、顧客先で受注した注文の代理発注等に対応するIFA事務局という組織がある。このIFA事務局のスタッフや内部管理責任者に、日常的にIFAが何でも質問できる環境があるのは、当法人の強みであると言える。
アイ・パートナーズフィナンシャルの報酬体系
IFAの報酬体系については、所属するIFA法人によって大きく異なる。具体的にはバック率の水準や在籍料、システム使用料の有無などだ。
アイ・パートナーズフィナンシャルでは、委託型IFAの報酬体系の報酬を公開していない。しかし、「2022年3月期決算説明資料」に記載されている数字から考察することは可能である。バック率およびシステム利用料についてそれぞれ解説していこう。
バック率
アイ・パートナーズフィナンシャルの「2022年3月期決算説明資料」によると、2022年3月期の金融商品仲介業による収益は34億3,400万円、売上原価は28億9,600万円となっている。
これを単純に割ると、84.33%となる。ただし、売上原価の中にはIFAへの報酬還元以外の要素も考慮されることから、それを差し引いて考えると、バック率はおよそ7割程度と推測されるだろう。
システム使用料
アイ・パートナーズフィナンシャルでは、所属IFAからシステム使用料を毎月徴収している。このシステム使用料についても公表されていないが、2022年3月末時点でのIFAが212人でシステム使用料による収益が2億4,400万円であるため、以下の通りシステム使用料が推測される。
年間システム使用料2億4,400万円÷212人=1,150,943円
月間システム使用料1,150,943円÷12ヶ月=95,912円
上記計算から、アイ・パートナーズフィナンシャルでは、およそ月10万円のシステム使用料を徴収していることが分かる。
報酬の目安
ここまでのバック率・システム使用料を踏まえて、委託型IFAの報酬を推測してみよう。
アイ・パートナーズフィナンシャルに所属するIFAの1人あたりの月間取引手数料は184万円である。
バック率を仮に70%とすると、184万円×70%=128万8,000円。そこからシステム使用料が10万円差し引かれるため、118万8,000円が1ヶ月の報酬となる。
委託型IFAは営業活動にかかる経費を自ら負担する必要があるため、118万円全てが純粋な収益となるわけではないが、それを考慮しても魅力的な報酬水準といえるのではないだろうか。
まとめ
本記事では、アイ・パートナーズフィナンシャルの決算資料をもとに収益モデルや報酬体系について紹介してきた。IFAへの転職を検討する際、IFA法人のサポート、コンプライアンス管理体制や報酬体系は非常に重要なポイントとなる。ぜひ複数社を比較して所属先を検討しよう。
ただし今回掲載したバック率やシステム使用料については、あくまで決算資料から推測したものであるため、実際の契約内容とは異なる可能性がある点に注意願いたい。