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銀行業界の現状分析と今後の展望について

長引く低金利政策の下、銀行業界は厳しい環境が続いている。これまでの預貸中心のビジネスモデルでは収益が上げられないため、どの銀行もしのぎを削って新しいビジネスモデルの構築に取り組んでいる。低金利政策の出口が見えない中、銀行業界の成長性を握るカギとは一体何だろうか。

本記事では、銀行業界を取り巻く現状と今後の展望について解説していく。

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目次

各大手銀行の直近決算(2022年3月期)の状況

銀行業界の現状を抑える上で、まずは各大手銀行の直近決算について見てみよう。ここでは、三井住友銀行や三菱UFJ銀行などのメガバンクと、地方銀行の代表格である横浜銀行を例に、2022年3月期通期決算の概況を解説していく。

三井住友銀行(三井住友フィナンシャルグループ)

三井住友フィナンシャルグループの2022年3月期通期決算は、経常利益が1,040,621百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が706,631百万円となっている。

前年同期の経常利益は711,018百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は512,812百万円であるため、大きく収益を伸ばした結果となった。

引用:株式会社三井住友フィナンシャルグループ「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

三菱UFJ銀行(三菱UFJフィナンシャルグループ)

三菱UFJフィナンシャルグループの2022年3月期通期決算は、経常利益が1,537,649百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が1,130,840百万円となっている。

前年同期の経常利益は1,053,610百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は777,018百万円であるため、三菱UFJフィナンシャルグループもコロナ禍で大きく収益を伸ばしている結果となった。

引用:株式会社三菱UFJフィナンシャルグループ「2022年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結)」

横浜銀行(コンコルディア・フィナンシャルグループ)

横浜銀行を擁するコンコルディア・フィナンシャルグループの2022年3月期通期決算は、経常利益が82,257百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が53,881百万円となっている。

前年同期の経常利益は41,405百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は25,326百万円であるため、メガバンクに限らず地方銀行も大きく収益を伸ばしていることが分かる。

コロナ禍で銀行業界の決算状況がこれほどまでに良好である要因には、政府による企業支援策の恩恵があるだろう。コロナ支援策のひとつである実質無利息無担保の融資によって企業の倒産件数が減少しているため、与信費用が抑えられていることが大きな要因となっている。

また、株高を受けて資産運用による収益が増加したことも要因のひとつだろう。

引用:株式会社コンコルディア・フィナンシャルグループ「2022 年3月期 決算短信〔日本基準〕(連結) 」

銀行業界の動向

直近では好決算が続いている銀行業界であるが、その環境は楽観視できるものではない。コロナ禍による特殊要因を除くと、銀行業界は依然として厳しいものであることには違いない。銀行業界の動向を考える上で、以下の3つのポイントが重要になる。

  • 長引く低金利政策による本業での収益減
  • ネットバンクの台頭
  • 地方銀行の再編

それぞれ詳しく見ていこう。

長引く低金利政策による本業での収益減

銀行の本業は「預金」「為替」「融資」の3つであり、「顧客から預かったお金をもとに融資を行い、その利鞘で収益を上げる」という預貸中心のビジネスモデルであった

しかし、低金利政策の導入により貸出金利が低下し、これまでのようなビジネスモデルで収益を上げることが難しくなったのである。

2016年以降はさらにマイナス金利政策も導入され、「日銀に預金を預けるとお金が減る」という状況だ。もちろんこれは銀行の貸出金を増加させるための狙いがあるが、とはいえ積極的に銀行から借り入れて設備投資を行うほど好景気な顧客ばかりではない。

つまり、銀行は本業で稼ぐことが難しいことばかりか、余った預金の行き場にも困る状況である。

ネットバンクの台頭

銀行業界を考える上で、ネットバンクの台頭は見逃せないポイントである。店舗を持たないネットバンクは手数料の安さやコンビニATMで入出金できる利便性が魅力だ。

ネットバンク大手の楽天銀行は、2022年5月末現在で約1,260万もの口座が開設されている。10年前の2012年5月末では約402万口座であったため、この10年でおよそ850万も口座数が急増していることとなる。

キャッシュレス化の波を受けて、銀行業界におけるネットバンクの存在感は今後もますます大きくなっていくだろう。そうした環境下でメガバンクや地方銀行は、ビジネスモデルの転換が大きく迫られているといえる。

地方銀行の再編

低金利政策による収益悪化に加えて、人口流出の問題も抱える地方銀行では、経営統合が進んでいる。前菅総理政権下では、「銀行再編」が看板政策のひとつとなるほどであり、実際にその後、「みちのく銀行と青森銀行」や「福井銀行と福邦銀行」など、多くの地方銀行で合併合意や子会社化の動向がみられた。

都市部への人口流出が進む地方において、地方銀行同士が金利競争を行うのはたしかに不毛な環境ではある。少ないパイを取り合うくらいであれば、経営統合によって経営基盤の強化を目指した方が健全だろう。

今後もこうした地銀再編の波が続くことは必至であり、地方銀行の抱える大きな課題だといえる。

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銀行業界の今後の展望

銀行業界の動向を抑えた上で、ここからは今後の展望について考えてみよう。

DXへの対応

キャッシュレス化が進む中で、銀行業界は大きな変革を迎えている。現金が不要となれば、いずれ銀行店舗やATMが不要となる日もそう遠くはないかもしれない。

中国では「デジタル人民元」の実証実験が進んでいるように、日本でも法定通貨が「現物としての紙幣」から「デジタル資産」へと変わることもあり得ない話ではないだろう。

銀行業界の成長期待は、こうしたDXによる需要の変化を正確に掴むことにかかっている。デジタル化への流れに乗れず、新たな金融社会に適応できない銀行は自然と淘汰されていくといえるだろう。

新たな収益源の確保

低金利政策による収益悪化とネットバンクの台頭が進む銀行業界では、新たなビジネスモデルの構築も大きな課題だ。低金利政策の出口が見えない中で、従来の預貸中心のビジネスモデルに執着していては企業としての成長も見込めない。

こうした状況から、近年多くの銀行では、不動産の活用提案や人材紹介、クラウドファンディングの立ち上げ支援、M&Aの仲介など新たな事業に乗り出している。多種多様な顧客との取引がある強みを活かせば、新たなビジネスモデルによって収益源を確保することも難しくはないだろう。

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この記事を書いた人

IFA転職を運営し、IFA専門転職支援サービスを展開。創業から100名以上のIFAへの転職を支援。また、アドバイザーナビ経由でのIFAになった方の転職者のコミュニティ「Club IFA」も運営しており、IFA業界の転職市場に精通している。

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