IFAはマス層から富裕層まで幅広い顧客層を担当している。
中には資産5億円以上を持つ超富裕層を担当することもあるが、IFAが超富裕層を担当することには、実はいくつかの課題があるといわれている。
本記事では、超富裕層を担当するIFAの課題や対応時の注意点、IFAならではの強みについて解説していく。
IFAが担当する顧客の特徴
アドバイザーナビ株式会社では、現役IFA218名に対してアンケート調査を行っている。
まずは、その結果に基づいて現役IFAが担当している顧客の特徴について見ていこう。
顧客層
IFAと聞くと、富裕層をメインとしたビジネスである印象があるが、実際のところはどのような顧客層を抱えているのだろうか。
アンケート調査結果は下記の通りだ。
最も多いのは富裕層で、全体の26%を占める結果となった。
準富裕層以上の合計は59%となり、IFAのメインの顧客層であることが分かる。
しかし、マス層とアッパーマス層の合計も41%あることから、これから資産を形成していく層にもIFAのニーズがあることを示している。
その一方で、超富裕層は8%となっており、他の層に比べて極端に割合が少なくなっている。
超富裕層自体が少ないことも影響していると推測されるが、IFAが超富裕層を担当することに課題があることも想定される。この点については、本記事内でくわしく後述していこう。
新規顧客の金融資産に関する条件
続いて、IFAが新規顧客を受け入れるときの金融資産条件についてである。調査結果は下記の通りだ。
最も多いのは「500万円未満」と答えた人で、全体のおよそ半分を占める結果となった。
実質、新規顧客の受け入れに条件を定めていない人が多いといえるだろう。
一方で、「1億円以上」や「2億円以上」と答えた人も少数ながらいることから、富裕層だけをメインに受け入れているIFAも存在するようだ。
超富裕層の特徴とは
資産5億円以上の超富裕層を担当するためには、その特徴をよく理解しておく必要がある。
主な特徴として、下記の3点が挙げられる。
- 保有資産が複雑
- 価値観が異なる
- 抱える課題が多岐にわたる
それぞれくわしく解説していこう。
保有資産が複雑
顧客の保有資産は、主に株式や投資信託などが占めていることが一般的だ。
しかし、資産5億円以上の超富裕層となると、保有資産が現金や株式だけでなく不動産、オルタナティブ、経営する企業の自社株など複雑化する傾向にある。
また、金融機関との付き合いも多いため、資産がいくつもの金融機関に分かれているなど、本人もすべてを把握できていないケースもある。
IFAは担当者として顧客の保有資産をすべて把握する必要があるが、超富裕層のようにさまざまな資産を持っている場合、その全体像の把握に苦労することも珍しくない。
価値観が異なる
IFAは顧客の資産管理や資産運用をサポートする立場として、顧客と同じ価値観や方向性を共有する必要がある。
資産運用を行う目的などが共有できていなければ、顧客のニーズを満たすような提案が行えないためだ。
しかし、超富裕層ともなると、お金に対する考え方が大きく異なる可能性がある。
たとえば、超富裕層だからといって「相続税対策にニーズがあるだろう」と考えていると、実は顧客は「税金対策よりもさらに資産を増やしていきたい」と考えていることもある。
もしIFAと顧客の間に価値観のギャップがあると、提案したものがまったく受け入れてもらえないケースもあるため、何度も面談を重ねながら価値観を把握していくステップが必要だ。
抱える課題が多岐にわたる
IFAは顧客が抱えるお金の悩みを解決することが大きな使命だ。
しかし、超富裕層が抱える課題は多岐にわたることが多い。
例として、次のようなものが挙げられる。
- 相続税対策
- 資産の目減り
- 資産の管理・整理
- 遺言の作成
- 事業を引き継ぐタイミング
- 事業の後継者 など
ケースによっては、これまで対応したことがないような課題に直面することもあるだろう。
そうした課題解決に取り組むためには、IFAとして幅広い知識を身につけることが求められる。
IFAで超富裕層を担当することの課題
IFAで超富裕層を担当することには、主に次のような課題が挙げられる。
- 大手金融機関に比べてネームバリューがない
- ブローカレッジ業務以外のサービス機能が少ない
- チーム体制で対応しにくい
それぞれくわしく解説していこう。
課題①大手金融機関に比べてネームバリューがない
IFA業界はまだ新興業界であるため、大手金融機関に比べてネームバリューが小さいといえる。
大手金融機関の場合、社名を名乗るだけで自宅や事務所に通してもらえたり、提案を聞いてもらえたりするメリットがある。
しかし、IFA法人の場合はそうした看板がないため、超富裕層の顧客側にとってみると、「この法人に資産の管理を任せても大丈夫だろうか?」という不安につながることもある。
そのため、最初はなかなか話を聞いてもらえなかったり、資産の状況を教えてもらえなかったりすることも少なくない。
IFAが超富裕層を担当するためには、長い時間をかけて信頼関係を構築していく必要がある。
課題②ブローカレッジ業務以外のサービス機能が少ない
IFA法人は、ブローカレッジ業務以外のサービス機能が少ない特徴もある。
例えば銀行などの金融機関の場合、金融商品の提案だけでなく、法人の資金調達や貸金庫、経営者の交流会などさまざまなサービスが受けられる。
中には、富裕層限定のプライベートバンクサービスがあるところも少なくない。
一方、IFA法人は債券や株式、ファンドのブローカレッジ業務が主なサービスを占めているため、金融機関と比べると利用できるサービスが少ないように感じられてしまう。
しかし、提供しているサービス内容はIFA法人によって大きく異なる。
富裕層をメイン顧客としているIFA法人では、コンシェルジュのようなサービスを受けられるところもあるため、そうした強みを持つIFA法人であれば超富裕層を担当することも十分可能である。
課題③チーム体制で対応しにくい
IFA法人は、チーム体制で対応しにくいという課題もある。
銀行などの金融機関の場合、不動産や融資、事業承継など複数の専門部署があり、顧客のニーズに応じてチーム体制を組んで対応する。
その道のスペシャリストが帯同して対応するため、担当者としても安心して対応を進められる。
一方、IFAの場合は基本的に仕事を自己完結することが求められる。
金融機関のように豊富な人材が社内にいるわけではないので、チームを組んで対応することは難しいといえる。
そのため、超富裕層のような難易度の高い課題を抱える顧客はIFAでは対応しきれないこともある。
しかし、IFA法人によっては税理士や会計士などの士業と連携を行っているところもあり、外部の機関とチームを組んで対応を進めることが可能だ。
IFAが超富裕層を対応する強み
IFAが超富裕層を担当することにはいくつかの課題がある一方、次のような強みもある。
- 転勤によって担当者が変わらない
- 営業ノルマに付き合わなくてよい
- 士業との連携がある
それぞれくわしく解説していこう。
強み①転勤によって担当者が変わらない
IFAは会社都合による転勤がないため、1人のIFAが担当し続けられるメリットがある。
証券会社や銀行などの場合は、およそ3年周期で担当者が変わるため、顧客にとっては「なかなか信頼関係を築けない」と感じることも少なくない。
特に超富裕層ともなれば、「自分の資産背景をよく理解している人に相談したい」と感じるだろう。
その点、IFAは生涯担当制がとられているため、ずっと同じ担当者に相談し続けられる。
長期にわたって信頼関係を構築していけるのは、金融機関にはない強みである。
強み②営業ノルマに付き合わなくてよい
IFAは営業ノルマが課されないことが大きな特徴だ。
そのため、超富裕層に対してもしつこく営業するようなことがない。
一方、金融機関の場合は半期ごとに営業ノルマを課されるため、「毎回ノルマに付き合わされる」ということもあるだろう。
超富裕層ともなれば、金融機関側もつい頼ってお願いしてしまうこともあるかもしれない。
しかし、IFAは顧客の意向に沿ったものだけを提案するため、ノルマ営業に付き合う必要はない。
「無駄なものを提案されない」というのは、顧客にとって大きな魅力である。
強み③士業との連携がある
先ほど、「IFA法人はブローカレッジ業務以外のサービス内容が少ない」という課題を紹介したが、中には税理士や会計士などの士業と連携があるIFA法人もある。
IFAでは対応できない点は外部の連携機関を紹介できるので、顧客の抱える課題をプロによって解決してもらうことができる。
もちろん超富裕層であれば会計士や税理士とのつながりは多いだろうが、士業にはそれぞれ得意分野がある。
「相続税に強い税理士」などピンポイントで課題解決のサポートができるのは、IFAならではの強みといえる。
IFAで超富裕層を対応するために必要なこと
IFAで超富裕層を担当するためには、次のようなポイントを心がけたい。
- 自社株担保ローンやヘッジファンド等を提供できる証券会社を使う
- 自社の提携業者を充実させる
- 自社内にポートフォリオマネージャー等を雇用する
それぞれくわしく解説していこう。
証券担保ローンやヘッジファンド等を提供できる証券会社を使う
超富裕層は多様な金融資産を保有していることから、IFAに求める提案内容もハードルが高い傾向がある。
株式や債券といった通常の金融商品では満足してもらえない可能性があるため、証券担保ローンやヘッジファンドなどさまざまな商品を取り扱う証券会社を利用することがおすすめだ。
より多くの選択肢を持つことは、顧客の選択肢の多さにも直結する。
より顧客のニーズを幅広く満たすためには、豊富なラインナップがある証券会社と提携するようにしよう。
自社の提携業者を充実させる
前述の通り、会計士や税理士など士業との連携はIFA法人の大きな強みである。
その強みをさらに高めるためには、外部機関との連携を充実させることがおすすめだ。
特に、自ら事業を営む超富裕層は時間に余裕がないことも多いため、資産に関する相談がワンストップで行えるのは大きな魅力となる。
IFA法人の中には、士業以外にも不動産会社やM&A、コンサルティング会社などと提携しているところがある。
超富裕層の顧客がどのような課題を持っているかを想定したうえで、提携業者を増やすことが重要だ。
自社内にポートフォリオマネージャー等を雇用する
資産が複雑化する超富裕層をしっかりとサポートするためには、社内にポートフォリオマネージャーを雇用することもひとつの方法だ。
ポートフォリオマネージャーは、顧客の資産をよりよい配分で保有できるようにリスクなどを算出したうえでポートフォリオを提案してくれる。
IFAは基本的に仕事を自己完結することが求められるが、超富裕層のポートフォリオとなると「プロの意見を聞いて提案したい」と感じることも少なくない。
顧客への提案内容のレベルをより高めるためには、社内に専門人材を置くことを検討してみよう。
IFAでも超富裕層を担当することは可能
IFAで超富裕層を担当することには、「法人としてのネームバリューがない」「チーム体制で対応しにくい」といった課題がある。
しかし、士業との連携を深めることによって、それらの課題を解決することが可能だ。
その他にも「転勤によって担当者が変わらない」といったメリットもあるため、IFAならではの強みを活かして、ぜひ超富裕層の顧客獲得を目指してみよう。
IFAには様々な働き方があり、自身に合ったIFA法人を選択することが重要だ。しかし、全国には約650社ものIFA法人があり、情報を取ることや比較することが難しい。
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