本シリーズはIFA法人の代表の方に弊社転職希望者からよくご質問をいただく内容をインタビュー形式でお伺いし、まとめました。今回はAimit株式会社の代表取締役の田中大輔様です。
新卒では三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社され、その後直接IFA法人であるAimit株式会社の設立と金融商品仲介業の免許を取得されました。その代表である田中社長にIFA転職希望者の方からよく上がる質問などをもとに、IFA業界のビジョンや考え方についてお伺いいたしました。
田中様のキャリアを教えてください。
大学を卒業後、三菱UFJモルガン・スタンレー証券に入社しました。入社後は、リテール営業店にて個人・法人の富裕層向けに新規開拓を中心に行っていました。当時の特殊な開拓先としては地方公共団体の新規開拓と債券を中心とした運用提案です。
その後、2020年に弊社を設立して現在はIFA法人の代表とIFAプレイヤーとして働いています。
地方公共団体のお客様を開拓していたとのことですが詳しく教えていただけますか?
そもそもなぜ地方公共団体をターゲットに新規開拓を行っていたかというと、大きく2点あります。
一つ目は、運用する金額や資金性が当時評価項目にあった資産純増と合致していたからです。日頃からいかに効率を高めて新規開拓・資産純増を行うことができるかと考えていましたが、地方公共団体は大きい金額での運用も可能で、資金性はリスクが低い商品を長期で保有することを目的としているので、事業会社向けの株式や投資信託の運用とは毛色が異なり資産純増という面では有効だと考えていました。
二つ目は、地方公共団体はフラットな視点で提案を聞いていただけるという点です。事業会社の場合、オーナーの好き嫌いで金融機関を選択したり、付き合いがある銀行系の証券会社と付き合うといった意向があります。一方、自治体の場合はいい意味でドライで、フラットに良い条件の商品を選択するという特性から「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」だから付き合わないということがありませんでした。そのため、効率的に新規開拓・資産純増をすることができました。
提案内容や方法としては、債券を中心とした資産運用をご提案していました。自治体の運用には一定の規制がありリスク性の高い資産は運用できません。したがって、国債や地方債などをご提案していました。
ご活躍されていたかと思いますが、なぜIFA法人を設立しようと考えたのですか?
弊社を設立した経緯として、きっかけはやはり証券会社特有のノルマや募集物をはじめとする会社都合の商品提案に違和感を感じたことです。「本当にお客様のためになる提案ができているのか」と自問自答する日々が続く中で、IFAであればお客様のためだけに金融アドバイスができると考え、はじめはIFA法人への所属を検討していました。
ある時、先輩でIFAになっている方のお話をお伺いする機会がありました。IFAは証券会社から独立しているため、顧客に寄り添った提案が可能だとイメージしていましたが先輩方の話を聞く限り、証券会社の延長で収益を稼ぐことを中心とした提案をしていることに驚きました。当然、業務委託型のIFAであれば収益が給与に直結するため「自律」と「自制」が重要ですが、現実は収益が中心の会話で証券会社と変わりませんでした。
そこで、私はどこかのIFA法人に所属をするのではなく「お客様一人ひとりのお悩みに寄り添った適切なご提案」をコンセプトにAimit株式会社を設立いたしました。
証券会社から直接IFA法人の設立は珍しいかと思いますが、どんな想いだったのでしょうか?
おっしゃる通り、一般的にはまずどこかのIFA法人に所属をしながら法人の設立と金融商品仲介業の登録を進めていきます。しかし、IFAに転身するのであればはじめから個人の集合体としてのIFA法人ではなくチームとしてのIFA法人を目指し、業界に一石を投じたいと思い設立することに決めました。
正社員型のIFA法人を除いて、基本的にIFAは提案内容について全て個人の裁量に任されています。IFA個人とお客様の関係に依存してしまうため業界全体を分析したときに属人性が強く、法人またはIFA業界がよくなっていくイメージができませんでした。
そこで、私がIFA法人を設立して同じ想いを持ったアドバイザーが集まることで、個人事業主的なIFAではなくチームとしてのIFAでお客様のために働くことができる環境を作りたい、さらにIFAとしての可能性を広げていきたいという想いで法人を設立しました。
御社のターゲットとしている顧客層を教えてください。
弊社のメインターゲットは法人とそのオーナーです。三菱時代から法人向けの金融商品の提案やサービス提供を行っていたので、証券会社時代から大きく変わっていることはありません。当時から付き合っていただいている方も数名いらっしゃるので、長い方だと6〜7年のお付き合いになります。
御社所属IFAの人数・バックグランド・特徴、その他お預かり資産や口座数を教えてください。
弊社に所属しているメンバーは7名で、全員業務委託型の形態を取っています。平均年齢は29歳なので、フレッシュな若いメンバーが多いです。口座数の中央値は約20〜30口座程度で、お預かり資産の中央値は10〜15億円くらいです。
御社の強みや特徴、他社との差別化について教えてください。
IFA法人としてのハード面で他社と差別化を図るのは難しいと思いますが、弊社でも提携会社を取り揃え、提案できる金融商品を多様化しております。例えば、エアーズシー証券さんとの提携があるためヘッジファンドの取扱いが可能です。また、事業承継に係る不動産や税理士との連携など資産運用以外のソリューションのご相談が可能です。
一方弊社の強みや特徴はソフト面にあり、メンバーや会社の雰囲気は先程お伝えしたように若いメンバーが多いので「柔軟な思考で、常に向上心を持って、お客様のためになる知識を習得していく」想いを持っています。かつての証券会社のようにプロダクトプッシュ的な営業ではなく、一人ひとりのお客様に最善の提案をしていけるように常に金融アドバイザーとしての究極を求めて活動しています。
法人のお客様を担当しているメンバーが多いので、税制大綱が発表された際は情報の共有をしながらお客様にとって有益な情報が何かを考え、社内での事例についても共有をするようにしています。確かに年齢が若い分未熟なところはありますが、逆に未熟であることを認識して若さを武器に常にインプットをして「お客様の幸せの追求」ができるように運営しています。
田中様にとって、もしくは御社にとっての「お客様の幸せの追求」とはなんですか?
弊社は「人生をより豊かに」をミッションとして掲げています。ここで言う「より豊か」に関してはお客様によって十人十色で悩んでいることや相談したいことは様々です。例えば、経営者であれば、法人税、事業承継、資産運用、本業ビジネス、引退後の生活など多岐に渡ります。弊社ではその方にとっての「人生がより豊か」になるために必要なことは何かをお客様との対話を通して見つけ出し、実現していきます。
ポイントは、あくまで金融商品仲介業者として、資産運用や金融ソリューションを軸としたサポートを行うことです。中には、周辺ビジネスを行うことで結果的に資産運用ニーズが出てくると伺うことがありますが、前提として弊社では金融を通してお客様の「人生をより豊かに」できるように追求しています。
もちろん、プロダクトプッシュ的な提案にならないようにしっかりとお客様との会話を重ねます。その中で意識していることは、お客様も想像していなかった夢や将来像、自己実現を見つけ出すことです。
私たちはまだまだ若輩者ですが、常にチャレンジをしています。年を重ねると保守的な考えになってしまう方々を多く見てきましたが、そこで私たちの若さや新しい価値観と触れることでお客様が潜在的に考えていた夢や想像もしていなかった「豊かな人生」を発見していただくことも幸せの追求だと思っています。
現在のIFA業界をどのように見ていらっしゃいますか?
今後、IFAは単なる金融商品仲介業者ではなくなると考えています。言い換えると「多様性」が出てくるでしょう。例えば、高等教育課程において金融教育が必修化されていますが、IFAがその授業の担い手になってもいいと思いますし、大きく言えば日本全体における金融リテラシーの向上に貢献していくことも可能です。証券会社に属していないからこそ、自由度は高く、単に金融商品の販売を行うだけに留まる必要はないと思います。
政府が推進している「貯蓄から投資」にどんな形であれIFAが関わっていけると国民にとってもIFA業界にとっても良いと思います。
まだ未熟な業界で氷山の一角というイメージが強いかもしれませんが、今後IFAにも多様性が出て来れば社会的に重要な役割を担うことになると考えています。
現在のIFA業界の課題はなんだと思いますか?その課題をどのように解決していけばいいと思いますか?
私が考えるIFA業界の課題は認知度が低いことです。資産運用を中心として、ライフプランの作成や老後資金の確保など、IFAに相談したいと思える程の認知度が必要です。それを解決するためには、まず担当しているお客様に満足していただくこと、お客様が「IFAに相談してよかったな」と思っていただくことが重要だと思います。
お客様に満足していただければ、ご紹介をいただくこともありますし、業界全体への印象も良くなり、既存の金融機関ではなくIFAにファーストコールがかかる世界を作ることができると思います。
また、弊社も同様ですが担当するターゲットがある程度の資産家の方で富裕層中心になっていますが、若い世代の資産形成層向けのターゲティングができるようになれば認知度は高まっていくと考えています。収益性を考えると富裕層の方向けにビジネスを行う方が良いですが、社会的意義を考えると日本の将来を担っていく若年層への資産運用知識の共有や提案が必要だと考えております。
資産形成層向けのビジネスも必要とのことですが、御社で取り組んでいることはありますか?
直近、弊社でも20〜40代の資産形成層向けのビジネスを構築しております。短期的な収益は考えず、つみたてNISAやiDeCoを活用した資産運用をアドバイスして20年、30年プランの長期視点でご提案しています。
弊社に所属しているメンバーも若いので、若い世代に寄り添った相談相手として長くお付き合いいただける関係性を構築したいと思っています。
これからIFAを目指している方にメッセージはありますか?
証券会社と比較すると、給与面やお客様との関係性に不安を感じることが多くあると思います。少なからずマーケットに左右される部分はあるので、コロナ禍のマーケットでは厳しいIFAもいたと聞いています。ただ、その状況下でもお客様を第一で考えて動くことができる方はIFAにチャレンジしてほしいと思います。金融機関に勤めていては築くことができなかったお客様との深い関係を構築することができます。
私は金融アドバイザーの終着地点がIFAだと思います。IFAを極めればお客様に喜んでいただけることは当然、金融業界のイメージを変えることも可能です。もし、お客様との関係性をより深く構築したいと思っている方はIFAにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
【会社紹介】
Aimit株式会社
大阪府大阪市北区梅田1-1-3 大阪駅前第3ビル 2203-2
代表取締役 田中 大輔
金融商品仲介業 近畿財務局長(金仲)第429号