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退職時の有給休暇について(寄稿:弁護士 佐賀寛厚氏)

2021.03.17.Wed 未分類

 ご転職希望者の皆様からよく頂くご質問に関して、檜山・佐賀法律事務所の弁護士  佐賀寛厚氏にご解説頂きました。

 5回連載で予定をしておりまして、第3回は「退職時の有給休暇について」です。

(退職時の有休消化について)
—「退職を間近に控え、ようやく引継ぎを終えることができたのですが、有休がかなり残っていたので、退職日までの全労働日について有休消化したいと申し出たところ、会社が繁忙期であるため有休取得は認められないと言われたのですが、どうすれば良いでしょうか?このままだと、退職日までの間、事実上、有休を消化することができなくなるので困ります。」というご相談をよくいただきます。このように、従業員が、退職にあたって有休消化を申し出たのに対して、会社が有休消化を事実上拒否した場合に、従わなければならないでしょうか。

 上記のような会社の対応は違法となる可能性が高いです。

 そもそも、有休とは、労働日の労働義務が免除される日であるところ、従業員が指定した日が有休取得日となるのが原則です。もっとも、有休取得により、会社の事業の正常な運営を妨げる場合には、例外的に、会社は従業員の指定した日を変更することができることとされています(時季変更権といいます)。

 しかしながら、時季変更権は、従業員の請求した有休取得希望日を変更して、他の労働日に有休を取得するように求める権利ですので、従業員が他の労働日に有休を取得できることが前提になっています。

 したがって、退職日までの全労働日を有休消化する請求をしている場合、変更して有休を取得できる他の労働日は存在しないため、会社は時季変更権が行使できず、従業員の指定した日に有休を認めなければなりません(昭和49年1月11日基収5554号)。

 ご相談のケースでは、退職までの全労働日について、有休取得の請求を行っているため、他に変更すべき労働日が存在しないことから、会社は時季変更権を行使できないことになります。したがって、従業員としては、会社による有休消化の事実上の拒否に従う必要はなく、ご自身の希望通り有休取得ができる可能性が高いということになります。

(有休取得に関する申請要件について)
—先ほどの相談と少し似ているのですが、「現在、退職1か月前なのですが、退職日までの間、有休消化をしようと思い、上司に有休申請をしました。そうすると、上司から、会社の就業規則で「有休取得にあたっては1か月前までに申請し、上司の決裁を得なければならない。」と定められているため、1か月前までに申請していない有休申請は承認できない、と言われたのですが、どうすれば良いでしょうか?」とのご相談もありました。
 このような場合、就業規則の手続要件を満たしていないので、有休取得はできないのでしょうか。

 有休取得可能です。

 前提として、有休は、労働基準法で定められた継続勤務の期間及び出勤率の要件を満たした場合に、法律上当然に発生する権利です。有休取得にあたっては、会社に有休申請を行うことが多いですが、法律上は、一方的な請求行為であり、会社の承認は必要ありません。

 そうしたところ、有休の請求をいつまでに行う必要があるかについて法律上定めはないのですが、裁判例では、会社が時季変更権を行使する時間的余裕を確保するために合理的な範囲で期限を設けること自体は否定されていません。

 もっとも、就業規則において、前々日の勤務終了時点までに有休申請を行う必要がある旨規定されていた事案について、裁判所は、従業員から、前日にされた有休取得を認めました(東京地裁平成元年3月1日判決・労判535号12頁)。事案によっては、前々日までの申請制限を有効としたものもありますが、いずれにしても、申請期限を定めることについては、厳格に判断される傾向にあるため、ご相談のように、会社が有休の申請期限を1か月前とすることは違法と判断される可能性が非常に高いと思われます。

 したがって、ご相談のケースでは、上司が有休申請を承認しないと主張したとしても、有休取得が認められる可能性が高いと思われます(なお、会社として、時季変更権が行使できないことについては上記のとおりです。)。

(有休の買い上げについて)
—「会社に退職すると伝え、有休を消化したいと伝えたところ、会社が有休を買い上げたうえで賃金相当額を支払うので、有休取得を認めないと言われたのですが、どうすれば良いでしょうか?退職することを伝えてしまっており会社にいるのも気まずいので、できれば出勤したくありません。」とのご相談をいただくこともありますが、会社のこのような対応は適法なのでしょうか。

 違法です。行政解釈上、会社が、あらかじめ有休の買上げを予約し有休取得を認めないことは有休を取得する権利の保障の趣旨に反し許されないとされており(昭和30年11月30日基収4718号)、労働基準法第39条違反になります。

 一方で、従業員から、有休の買い上げを要望すること自体は違法でありませんので、先のご質問の例でいいますと、有休を取得しない代わりに、有休を買い上げてもらうよう申し出て会社が承諾した場合、有休の買い上げをしてもらうことは問題ありません。

 


佐賀 寛厚氏の経歴
京都大学・京都大学法科大学院卒業後、2008年弁護士登録し須藤・高井法律事務所入所。2014年きっかわ法律事務所入所。2020年檜山・佐賀法律事務所 開設。また、2014年〜2019年まで京都大学法科大学院の非常勤講師を務める。企業法務・労働事件を中心に幅広い業務を取り扱う。

 

 

 

 

檜山・佐賀法律事務所
HP: https://www.law-hs.jp/
東京オフィス:東京都千代田区有楽町1丁目10番1号 有楽町ビル10階
大阪オフィス:大阪市北区西天満2丁目6番8号 堂島ビルヂング6階


 

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