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退職時の確定拠出年金 手続きしないと発生する3つのデメリットと解決策

ボーナス支給の時期がやってきた。支給額を見て退職や転職を考える人は多い。退職・転職の際に、つい後まわしになるのが、現在加入している企業型確定拠出年金(以下企業型DC)の移換手続きだ。

今回はまず、企業型DCの加入者が退職時に手続きしないとどのような事態が起こるのかを説明する。続いて退職後の退職後のはたらき方や転職先別の移換先を紹介する。

本稿を読むことで、退職時における企業型DC年金の手続き実施の重要性と退職後のはたらき方に対応した移換先がわかるようになる。 

目次

手続きをしないことで発生するデメリット

企業型DCは、退職日翌日の翌月から6か月以内に手続きをしないと、国民年金基金連合会に自動的移換される。国民年金基金連合会は、国民年金基金制度と、個人型確定拠出年金制度に係る事業を行っている厚生労働省が所管する法人である。

国民年金基金連合会に自動移換された場合は次の3つのデメリットが想定される。

1:手数料が自分の資産から差し引かれる

自動移換時に手数料が4,348円、さらに自動移換された日の属する月の4ヵ月後からは毎月52円の管理手数料が、企業型DCで運用してきた自分の資産から差し引かれる。

2:運用がされず、積立も出来ないため資産を増やせない

国民年金基金連合会への自動移換は、企業型DCでの運用資産をいったん現金化した状態で実行される。だから自動移換後は現金になっていて、運用ができていない。また手続きが済んでいないため、追加の積立もされない。運用ができず、積立もできない為、移換中の状態では、将来の受取金額を増やせない。

3:受取開始が遅れる可能性がある、移換中の状態では受け取れない

自動移換中の状態では受取ができる年齢になっても受け取れない。くわえて、自動移換中は確定拠出年金の加入期間にカウントされないため受給スタート時期が遅くなる場合がある。

このように、退職時に企業型DCの移換手続きをしないことは、明らかなデメリットがあるため避けるべきである。

ここからは、解決策として退職後の働き方別の移管先を紹介する。

退職後も引続き会社員になるケース

転職に伴う退職の場合は、転職先の年金制度によって3種類の移管先がある。また、転職先の年金制度に加入せず自分で個人型確定拠出年金(「 会社員にならないケースなどはiDeCoに移換」の項目で詳しく解説)する方法もある。以下に転職先の年金制度を利用する場合の移換先を紹介する。手続きは転職先の担当者を通して行う。

転職先も企業型DC制度を導入しているケース

転職先の企業型DCへの移換が可能だ。注意点としては、転職先企業が採用しているプランに入るため、今までと同様の運用商品(○○銀行5年定期、△△ファンドなど)での運用は継続できない可能性があること。手続きは転職先の担当者を通して行う。

転職先が確定給付型企業年金制度を採用しているケース

転職先の確定給付企業年金制度(以下DB)に加入する。DBの規約で、確定拠出年金からの移換受け入れが可能な場合は企業型DCの資産を移換できる。DBとは、給付額が約束された企業年金制度。老後の安定的な収益源になる可能性が高い一方で、DCとは異なり自身の運用手腕により給付金額を増やすことはできない。

年金制度がない企業に転職するケース

企業型DC、企業型DBなど年金制度がない企業に転職する場合は、通算企業年金基金に移換する。通算企業年金基金とは厚生労働大臣の認可により設立された法人「企業年金連合会」が運営する年金基金。企業型DCから通算企業年金に移換すると、企業年金連合会が予定利率で運用してくれる。原則65歳以降、生涯にわたり年金の受給が可能になるものの、移換後は新たな積立ができない点には注意が必要だ。

会社員にならないケースなどはiDeCoに移換

自営・独立、就労しないなど会社員にならない場合や、転職先の年金制度を利用しない場合は、個人型確定拠出年金(以下iDeCo)に移換する。また転職先の企業型DCが個人額確定供出年金との併用を認めている規約の場合は、企業型DCとiDeCoを併用できる。下記にiDeCoの主な特徴3点を挙げる。 

1:積立のお金は自分で払う

会社が積立てるお金を払う企業型DCとは異なり、iDeCoで積立てるお金は自分で支払わなければならない。一方で、企業型DCは1か月あたり最高5.5万円積立できるのに対し、iDeCoは、職業によっては1か月あたり最高6.8万円を積立られる。多くの金額を積立できるので、運用成果によっては将来の受取金額を大きくすることも可能である。

2:自分で選んだ金融機関に申し込める

iDeCoはさまざまな金融機関で申し込むことが可能。銀行はもちろん、信用金庫、証券会社、生命保険会社など受け付けている業態も多種多様だ。詳細はイデコ公式サイト内「運用管理期間一覧」で確認できる。

金融機関によって、選べる運用商品が異なるので、運用したい商品がラインナップされている金融機関を選ぶこともできる。

3:各種手数料も自分で負担することになる

企業型DCでは企業が負担していた各種手数料をiDeCoでは自分で負担することになる。具体的には移換時に手数料2,829円が必要になり、毎月の掛金から国民年金基金連合会、信託銀行へ合計171円が差し引かれる。これとは別に、金融機関によっては別途運営管理手数料が毎月必要な場合もある。iDeCoを申し込む金融機関選びの際には、手数料にも注目することをお勧めする。

まとめ

この記事では、退職時に企業型DCの移換手続きせずに国民年金基金連合会に自動移換されてしまうことのリスクを説明した。手数料が差し引かれることに加えて、現金化されていて運用されないので資産が減る一方であること。そのままでは受給できないこと、受給スタート時期が遅れる可能性があることが具体的なデメリットだ。

 次に、企業型DCの移管先をケース別に紹介した。転職先の企業にも企業型DCがある場合は、転職先の企業型DCに移換をする。転職先がDBを採用している場合は、DBに加入することになる。転職前に運用してきた企業型DCがDBへ移換できるか否かは加入するDBの規約による。

 年金制度がない会社に転職する場合は、通算企業年金基金に移換する。他には、金融機関を通じてiDeCoに移換する選択肢がある。iDeCoは年金制度がない企業に転職する場合だけでなく、自営業や就労しないケースでも利用は可能だ。手数料や商品ラインナップを比べながら納得できる金融機関の選択をしたい。

「年金はよくわからない」「まだまだ先のことだから後回し」とすることなく、新しい生活のスタートに合わせてしっかり移換の手続きをしょう。

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この記事を書いた人

IFA転職を運営し、IFA専門転職支援サービスを展開。創業から100名以上のIFAへの転職を支援。また、アドバイザーナビ経由でのIFAになった方の転職者のコミュニティ「Club IFA」も運営しており、IFA業界の転職市場に精通している。

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