銀行や証券会社などの金融業界では、商品知識、提案力、数字を扱う力、正確な事務処理能力など、他業界でも評価されやすいスキルを身につけられる。
一方で、転勤の可能性、営業目標のプレッシャー、顧客対応の負担、結婚・出産・育児・介護との両立などを理由に、働き方を見直したいと考える女性もいるだろう。
厚生労働省の令和6年雇用動向調査によると、女性の転職入職者が前職を辞めた理由は、「その他の個人的理由」を除くと「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が12.8%で最も多く、次いで「職場の人間関係が好ましくなかった」が11.7%となっている。金融業界に限定した調査ではないものの、転職では仕事内容だけでなく、労働時間や職場環境まで確認することが重要だ。
そこで本記事では、金融業界出身の女性が検討しやすい転職先と、転職時に気を付けたいポイントを解説する。金融機関での経験を活かしながら、自分に合う働き方を選ぶための参考にしてほしい。
金融業界で働く女性の転職先|経験を活かせる5つの選択肢
金融業界出身の女性には、業界内外にさまざまな転職先の選択肢がある。まずは、主な選択肢と向いている人、注意点を整理しておこう。
| 転職先 | 向いている人・注意点 |
|---|---|
| 他の金融機関 | 金融知識や資格を活かしやすい。 転勤範囲、営業目標、評価制度は会社ごとに確認が必要。 |
| ファイナンシャルプランナー | 家計相談やライフプラン支援に関わりたい人に向いている。 独立する場合は集客力も必要。 |
| IFA | 証券・資産運用の提案経験を活かしやすい。 業務委託型の場合は収入の変動や経費負担を確認する。 |
| 異業種の経理・財務関連職 | 数字を見る力や法人営業経験を活かしやすい。 経理実務や会計システムへの理解が求められることもある。 |
| 公務員 | 安定性や公共性を重視したい人の選択肢。 試験区分、年齢要件、募集時期の確認が必要。 |
ここからは、それぞれの転職先について詳しく紹介していく。
他の金融機関|経験・資格を活かしやすい
金融業界出身の女性は、業界内でキャリアチェンジを図る道がある。同業他社への転職であれば、これまで身につけた商品知識、営業経験、顧客対応力、資格を活かしやすい。
たとえば、銀行から証券会社、証券会社から保険会社、地域金融機関からネット証券・ネット銀行など、金融業界内で職種や会社を変える方法がある。営業職から本部企画、コンプライアンス、事務企画、カスタマーサポートなどへ移る選択肢も考えられる。
金融業界内の転職は、顧客説明、金融商品の基礎知識、コンプライアンス意識を評価されやすい点がメリットだ。一方で、会社が変わっても転勤や営業目標、繁忙期の忙しさが残る場合もある。
そのため、「金融の仕事は続けたいが、今の働き方は変えたい」という人は、業界を変える前に、同じ金融業界内で職種や会社を変える選択肢も検討してみよう。
ファイナンシャルプランナー|家計相談やライフプラン支援に関わる
金融業界からの女性の転職先として、ファイナンシャルプランナーも選択肢になる。
ファイナンシャルプランナーは、個人の相談を受けて、生活設計、貯蓄計画、投資対策、保障対策など、総合的な資産設計を支援する職種だ。金融機関で培った家計・保険・資産運用・ローンなどの知識を活かしやすい。
働き方は、保険代理店、金融機関、相談会社などに所属する方法と、独立して相談業を行う方法に分かれる。独立型の場合は、休業日や相談時間を自分で設計しやすいため、育児や介護と両立しながら働きたい人にとって魅力的に見えるだろう。
ただし、独立して働く場合は、相談料の設定、集客、継続相談の仕組みづくりも自分で行う必要がある。また、FP資格を持っているだけで金融商品の売買を仲介できるわけではないため、具体的な金融商品の販売や仲介まで行いたい場合は、保険募集人や金融商品仲介業など、扱う商品に応じた登録・資格も確認しよう。
「販売目標よりも、家計やライフプランに寄り添う相談をしたい」という人は、ファイナンシャルプランナーへの転職・独立を検討してみるとよい。
IFA|資産運用の提案経験を活かしやすい
証券会社や銀行で資産運用の提案をしてきた女性にとっては、IFAも選択肢のひとつとなる。
IFAとは「独立系ファイナンシャルアドバイザー」と呼ばれる職種で、金融商品仲介業者であるIFA法人などに所属し、顧客の資産形成に合う金融商品の提案や売買取引の支援を行う。
IFA法人は、証券会社などの金融商品取引業者と業務委託契約を結んでいる。IFAは所属先の提携証券会社を通じて商品提案を行うため、どの証券会社と提携しているか、どのような商品を扱えるかは所属先によって異なる。
業務委託型のIFAであれば、出社頻度や営業スタイルを自分で調整しやすい場合がある。転勤に左右されにくく、既存顧客と長期的な関係を築きやすい点も特徴だ。
一方で、会社員のような固定給ではなく、成果報酬型に近い報酬体系になるケースも多い。営業ノルマから解放されるように見えても、自分で顧客基盤を作り、収入を安定させる必要がある点には注意したい。
IFAに興味がある人は、報酬率だけでなく、固定費、システム利用料、事務サポート、コンプライアンス体制、顧客の引き継ぎ可否まで確認しよう。
異業種の経理・財務関連職|数字に強い経験を事業会社で活かす
異業種へ転職する場合は、経理、財務、経営企画、IR、内部監査、コンプライアンスなどで金融機関での経験を活かせる可能性がある。
特に、法人営業、融資審査、与信管理、証券営業、資産運用提案の経験がある人は、財務諸表を読む力、資金繰りを考える力、企業の収益性や安全性を分析する力をアピールしやすい。
経理職では、入出金管理、月次決算、試算表作成、財務諸表作成、予算管理資料の作成などを担当することがある。金融機関で数字を扱ってきた経験は強みになるが、事業会社の経理実務や会計システムの経験が求められる求人もあるため、応募前に必要スキルを確認しておきたい。
スタートアップやベンチャー企業では、資金調達、金融機関対応、予実管理、管理部門づくりを担う人材を求めていることもある。金融機関で法人顧客を担当してきた人は、財務担当や経営企画としての転職も検討しやすいだろう。
公務員|安定性を重視するなら試験区分を確認する
金融機関からの転職先として、公務員も選択肢になる。
公務員は、民間企業とは業務内容や評価制度が大きく異なる。一方で、正確な事務処理、法令やルールに沿った業務、住民や事業者との丁寧なコミュニケーションが求められる点は、金融機関での経験と共通する部分もある。
国家公務員には、総合職、一般職、専門職のほか、社会人試験や経験者採用試験など複数の試験区分がある。地方公務員も自治体ごとに社会人経験者採用を行っている場合があるため、希望する自治体や職種の募集要項を早めに確認しよう。
公務員を目指す場合は、試験対策に時間がかかる。年齢要件、受験資格、試験日程、面接内容、採用後の配属や異動範囲を確認したうえで、現在の仕事と並行して準備できるかを考えることが大切だ。
金融業界出身女性が転職で気を付けたいポイント
女性が金融業界から転職する際には、仕事内容だけでなく、働き方、収入、ライフイベントとの両立まで含めて確認する必要がある。
ここでは、転職活動で気を付けたいポイントを解説する。
長期のキャリアプランを描く
転職活動に取り組む際は、長期のキャリアプランを描いておくことが大切だ。
「今の会社が嫌だから」「ノルマから離れたいから」といった理由だけで転職先を選ぶと、転職後に同じ悩みを抱える可能性がある。まずは、自分が何を変えたいのかを整理しよう。
たとえば、次のような観点で考えると、転職先を選びやすくなる。
- 金融知識を活かし続けたいのか、異業種に挑戦したいのか
- 営業職を続けたいのか、事務・企画・管理部門へ移りたいのか
- 固定給の安定性を重視するのか、成果報酬で収入アップを目指すのか
- 転勤の有無、勤務時間、リモートワーク、時短勤務をどの程度重視するのか
- 結婚、出産、育児、介護などのライフイベントとどう両立したいのか
キャリアプランは、最初から完璧に決める必要はない。ただし、「転職で何を叶えたいのか」が曖昧なままだと、求人票の年収や知名度だけで判断しやすくなる。転職先を比較する前に、優先順位を明確にしておこう。
より多くの情報を収集する
転職活動では、求人票だけで判断せず、できるだけ多くの情報を集めることが重要だ。
特に女性の場合、産休・育休、時短勤務、介護との両立、転勤範囲、残業時間、管理職登用、評価制度などは、入社後の働きやすさに大きく関わる。
厚生労働省の育児休業制度特設サイトでは、2024年度調査における女性の育児休業取得率は86.6%と示されている。しかし、実際に制度を使いやすいかどうかは企業ごとに異なる。求人票に「育休制度あり」と書かれていても、取得実績や復職後の働き方まで確認することが大切だ。
企業情報を調べる際は、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」も活用できる。2025年12月末時点で全国39,615社がデータを公表しており、女性の採用割合、女性管理職比率、平均残業時間、育児休業取得率、男女間賃金差異、えるぼし認定の取得状況などを確認できる。
また、面接では次のような点を確認しておくとよい。
- 配属予定部署の残業時間や繁忙期
- 転勤や異動の範囲
- 産休・育休からの復職実績
- 時短勤務やリモートワークの利用実績
- 営業目標や評価制度の内容
- 女性管理職や中途入社者の活躍状況
転職後の収入についても慎重に確認したい。令和6年の雇用動向調査では、転職入職者のうち前職より賃金が増加した割合は40.5%、減少した割合は29.4%だった。転職で年収アップを目指せるケースもあるが、年齢、職種、雇用形態、業界によって結果は異なるため、基本給、賞与、インセンティブ、固定残業代、福利厚生まで比較しよう。
金融機関で得た強みを自覚する
転職活動では、これまでに得た経験やスキル、自分の強みを相手に伝える必要がある。転職活動を始める前に、まずは金融機関での経験を棚卸ししよう。
金融機関での経験は、異業種では伝わりにくいことがある。そのため、業界外の採用担当者にもわかる言葉に置き換えることが大切だ。
| 金融機関での経験 | 転職活動での伝え方 |
|---|---|
| 個人営業 | 顧客の課題をヒアリングし、ライフプランやニーズに合わせて提案した経験 |
| 法人営業 | 財務諸表や資金繰りを確認し、経営課題に合わせて提案した経験 |
| 窓口・事務 | 正確性が求められる事務処理、顧客対応、法令・社内ルールに沿った業務経験 |
| 証券・資産運用提案 | リスク説明、マーケット情報の理解、顧客のリスク許容度に応じた提案経験 |
| 融資・審査 | 企業の信用力や返済能力を分析し、定量・定性の両面から判断した経験 |
「金融機関での経験を通じて、どのようなスキルを身につけたのか」を自覚できれば、「自分のスキルを活かせる仕事は何か」も明確になりやすい。
自分のスキルを棚卸しする際は、金融業界以外でも通用する「共通言語」に変換することが成功の鍵だ。具体的な「専門用語の言い換え例」や、面接で評価される実績の伝え方(STAR法)については、金融機関からの転職について全体像を解説しているこちらの記事で詳しく解説しているため参考にしてほしい。

エージェントを活用する
転職活動では、エージェントを活用することも選択肢になる。
転職エージェントは、自分の希望条件に合う求人を紹介してくれるだけでなく、職務経歴書の整理、面接対策、年収交渉、キャリアプランの相談などをサポートしてくれる場合がある。
特に、金融業界から異業種へ転職する場合は、自分の経験をどのように伝えれば評価されるのか迷いやすい。キャリアアドバイザーに相談することで、強みの言語化や応募先の選定がしやすくなるだろう。
ただし、エージェントによって得意な領域は異なる。銀行・証券・保険など金融業界内の転職に強いエージェントもあれば、IFA転職、管理部門、異業種転職、ハイクラス転職に強いエージェントもある。
「金融業界内で職種を変えたい」「IFAとして独立性の高い働き方を目指したい」「異業種の経理・財務へ移りたい」など、目的に合わせて相談先を選ぶことが大切だ。
金融機関での経験を次のキャリアの強みにしよう
金融機関出身の女性の転職先には、業界内外にさまざまな選択肢がある。
金融知識や資格を活かしたいなら、他の金融機関やIFA、ファイナンシャルプランナーが候補になる。数字を見る力や法人対応の経験を活かしたいなら、異業種の経理・財務・経営企画なども検討できる。安定性や公共性を重視したい場合は、公務員という選択肢もある。
一方で、転職先を選ぶ際は、仕事内容だけでなく、転勤の有無、営業目標、残業時間、育児・介護との両立制度、収入の安定性まで確認することが大切だ。
「金融機関では専門スキルが身につかない」と感じている人でも、実際には顧客対応力、提案力、正確な事務処理能力、数字を読み解く力、コンプライアンス意識など、多くの強みを持っている。まずはこれまでの経験を棚卸しし、自分の強みを次のキャリアでどう活かせるか考えてみよう。
本サイト「IFA転職」では、金融業界での転職活動をサポートしております。金融機関からの転職をお考えの女性は、どうぞお気軽に下記フォームよりご相談ください。

出典
厚生労働省「令和6年雇用動向調査結果の概況」(公開日:2025年8月26日)
厚生労働省 job tag「ファイナンシャル・プランナー」
厚生労働省 job tag「独立系ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」
厚生労働省 job tag「経理事務」
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厚生労働省 Webマガジン「自分らしい働き方を見つける ―女性の活躍推進企業データベースを活用しよう」(公開日:2026年3月2日)
厚生労働省「育児・介護休業法について」
厚生労働省「育児休業制度特設サイト」

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