転職マーケットでは会計士は「最強」との呼び声も高い。会計士はなぜ転職しやすい職業なのか、不思議に思ったことはないだろうか?
今回は、会計士が比較的転職しやすい理由として、公認会計士試験数の減少、会計基準の国際化、M&Aの増加などを紹介する。また、会計士が転職前提のキャリア形成をしている点にも触れる。なぜ、会計士が転職しやすいのかをご理解いただけるはずだ。
転職しやすいとはいえども、転職エージェントを利用することをおすすめする。とくにおすすめしたいタイプの人についても詳しく紹介する。この記事を読んで、自信をもってキャリアチェンジに臨んでいただけたら嬉しい。
会計士が転職しやすい理由
公認会計士試験合格者が減っているから
公認会計士試験の合格者数が減少している。資格の希少性が高まっているから、年収が下がることは考えにくい。
金融庁の記録によると、2022年の公認会計士試験合格者は、2008年の受験者4,041人と比較して3分の1に過ぎない。このような事情で公認会計士の希少性は高くなっている。そのため、年収も下がりにくいだろう。
年別合格者推移
2006年 | 3,108人 |
2007年 | 4,041人 |
2008年 | 3,625人 |
2009年 | 2,229人 |
2010年 | 2,041人 |
2011年 | 1,511人 |
2012年 | 1,347人 |
2013年 | 1,178人 |
2014年 | 1,102人 |
2015年 | 1,051人 |
2016年 | 1,108人 |
2017年 | 1,231人 |
2018年 | 1,305人 |
2019年 | 1,337人 |
2020年 | 1,335人 |
2021年 | 1,360人 |
2022年 | 1,456人 |
国際財務報告基準(IFRS)適用企業が増加し、公認会計士のニーズが高まっているから
企業活動のグローバル化に伴い、国際財務報告基準(IFRS)に対応する企業も増えている。その結果、公認会計士へのニーズが高まっている。
IFRS対応移行期には、公認会計士のニーズが一層高まる。
したがって、企業の経理部門からの求人は、今後も活況を呈すると予想される。IFRSの知識・経験に加え、語学力があれば、さらに有利な条件でのキャリアチェンジが期待できる。
M&A実施件数の増加も、公認会計士のニーズに拍車をかけているから
最近、中小企業にもM&A(マージャー・アンド・アクイジション)の波が押し寄せてきている。その背景には、後継者不足等の理由がある。
M&Aにおいて、公認会計士は、財務デューデリジェンスや企業価値算定において中心的な役割を担う。財務デューデリジェンスでは、簿記の財務諸表の正確性を評価する。と同時にオフバランス化された負債がないことを確認する。
また、企業価値算定においては、買収価格が重要な検討要素となる。売り手側は売却額が低すぎると取り返しのつかない損失につながる。一方購入額が高すぎると投資金額が回収できなくなるため、M&Aは失敗に終わってしまう。
このような理由から、公認会計士が担う企業価値の算出は大変重要なのだ。
M&A実施増加に関連し、投資家に購入資金を貸す銀行から公認会計士の採用ニーズがが高まっている。同様に、投資銀行業務においても、公認会計士のニーズが高まっている。
会計士は転職しやすい ~会計士が転職を志向する背景~
年収が上がるから
まず、公認会計士の年収を知っておこう。厚生労働省のデータから算出すると、税理士を含む公認会計士の年収は600万円と推定される。この値には公認会計士と比べると年収が低い傾向がみられる税理士が含まれている。仮に公認会計士だけのデータがあれば、600万円を超える給与水準になるはずだ。
公認会計士は、金融、商業、税務、会計、監査など様々な分野で働ける。企業側の採用ニーズが強く、自分の選んだ分野でより多くの経験を積める。さらに、M&Aや投資銀行業務などでは通常、給与に加えてボーナスやその他のインセンティブが提供される。やる気とスキルのある公認会計士は、さらなる報酬を手にできる。
年収が上がる可能性が高いので、転職を嗜好するインセンティブが働く。
- 出典:厚生労働省「令和3年賃金構造基本統計調査」(2022年12月アクセス)
業務の幅を広げられるから
多彩な職務に就くことで、経済的な報酬だけでなく、転職によってキャリア充実の満足感も得られる。公認会計士のスタートは監査であることが多い。もちろん、監査の道を極めることもできるし、他の業務を経験することもできる。
公認会計士の年収やキャリアパスについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧いただきたい。
30代は求職案件も豊富だから
とくに30代は求職案件が多い。案件が多いから転職も容易だ。下の表はジャスネットキャリアに掲載されている年代別の成功事例掲載数をまとめたものだ。30代は、20代の約3倍、40代の約4倍もの成功事例が報告されている。
年代別 公認会計士の転職成功事例掲載数
20代 | 19例 |
30代 | 49例 |
40代以上 | 12例 |
30代で転職する公認会計士が多い理由は以下3点が考えられる。
- 監査の経験を十分に積んだタイミングのため
- 経験ある若年層として転職市場価値が高く、高収入が狙えるため
- 家庭との両立などライフステージの変わり目のため
公認会計士の30代の転職事情については、こちらの記事をご覧いただきたい。
転職エージェントを使って効率的に転職活動をしよう
転職しやすい公認会計士ではあるものの、転職エージェントを利用することをおすすめする。それは、通常の業務では監査法人以外(とくに事業会社)の情報が入りにくいこと、募集の背景や、離職率などの情報が個人では入手しにくいからだ。
以下、とくにエージェント利用をおすすめしたい公認会計士のタイプと利用の注意点をあげる。
転職エージェントの利用が向いている公認会計士のタイプ
ワークライフバランスの実現をしたい方
仕事とプライベートの調和を優先する人は、エージェントを活用すべきだ。エージェントは柔軟な労働時間で運営している企業を知っているからだ。また働きやすい職場のようで実は、異常に高い離職率の会社の情報を掴んでいたりすることもある。
さらにエージェントは、企業の仲介をしてくれる。面接で出しにくい話題も、エージェントが交渉してくれる。だから、面接の席では自己PRや志望動機に注力して臨める。
ワークライフバランスを重視する転職をしたい方は、転職エージェントを利用することをおすすめする。
未経験業務にチャレンジしたい方
未経験業務に挑戦したい人は、その分野に精通したエージェントを利用するのがよい。
例えば、富裕層向けの資産運用領域に参入したいのであれば、その領域に特化した人材紹介サービスを探し、コンタクトを取ることだ。事業承継、プライベートカンパニーの立ち上げ、美術品やワインへの投資など、富裕層の資産運用メニューは多彩だ。
従前、公認会計士が資産運用に携わることはほとんどなかった。しかし、近時は高度な運用ニーズに応えるように公認会計士が富裕層向けの資産運用領域に進出し始めている。
当社アドバイザーナビは、IFAに特化した転職エージェントだ。IFAとは独立金融アドバイザーのこと。公認会計士の方でIFAに興味をお持ちの方は、ページ下部「無料キャリア相談お申込みフォーム」をご利用いただきたい。
富裕層向けの資産運用領域に限らず、未経験業務に挑戦したい人は業界動向や企業の特徴、研修体制の有無など業界のノウハウの蓄積が厚い特化型の転職エージェントを利用することをおすすめする。