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三菱UFJモルガン・スタンレー証券の決算報告書を読み解く

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、三菱UFJフィナンシャルグループ(8306)傘下の証券会社だ。野村證券系列であった国際証券、三菱UFJフィナンシャルグループの前身である東京三菱銀行、UFJ銀行それぞれの系列証券会社、米モルガン・スタンレー日本法人の投資銀行部門などが合併して発足した。

直近では2020年にグループ内の三菱UFJモルガン・スタンレーPB証券を合併し、現在の三菱UFJモルガン・スタンレー証券の形になった。出資比率は三菱UFJフィナンシャルグループの証券持株会社である三菱UFJ証券ホールディングスが60%、米モルガン・スタンレーが40%となっている。

また三菱UFJフィナンシャルグループ内のモルガン・スタンレーMUFG証券はかつての米モルガン・スタンレー日本法人の投資銀行部門を除いた他部門を継承するホールセール業務専業の証券会社であり、出資比率は三菱UFJ証券ホールディングスが49%、米モルガン・スタンレーが51%となっている。

さらに米モルガン・スタンレー自体も三菱UFJフィナンシャルグループの持分法適用会社となっており、同グループによる出資比率は21.5%となっている。

三菱UFJ Jフィナンシャルグループの証券事業は米モルガン・スタンレーと緊密な関係にあり、グループ各社の資本構成も複雑である点が特徴である。

本稿では、日本国内における三菱UFJフィナンシャルグループの証券業務における中核事業会社である三菱UFJモルガン・スタンレー証券について解説していく。

目次

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の分析(2022年3月末時点)

  • 役職員数: 5,630名
  • 資産合計:18兆9,840億円
  • 純資産:6,086億円
  • リスク相当額合計:1,535億円
  • 固定化されていない自己資本:4,868億円
  • 自己資本規制比率(連結):317.1%

【図表1】2022年3月期決算

純営業収益(億円)前年同期比経常利益(億円)前年同期比
トレーディング損益1,165-8.2%
受入手数料1,41520.7%
合計2,5815.7%52324.8%
出典:三菱UFJ証券ホールディングス2022年3月期決算説明資料をもとに作成

部門別の収益内訳が開示されていないため、収益構造の詳細は不明である。証券持株会社である三菱UFJ証券ホールディングスが開示している決算説明資料から推測すると収益のおおよそ半分が国内営業部門によるものと推測される。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券単体での財務基盤についても問題はなさそうだ。

親会社の三菱UFJフィナンシャルグループ全体で見ても金融危機時においても金融機関が業務を継続するために必要な、損失吸収力の高い自己資本(普通株式や名部留保など)を分子として、これをリスク・アセットで割った連結総自己資本規制比率は16.31%となっており、国際基準とされる最低自己資本比率4%を大幅に上回っている。

なお世界の大手金融機関の連結普通株式等Tier1比率は15%前後が一般的である。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券のリテール・事業法人部門の分析(2022年3月期)

一般的に世間でイメージされる証券会社の業務だ。主に日本国内の個人富裕層や法人の資産運用に関わるビジネスを行っている。

基礎データ

国内の三菱UFJモルガン・スタンレー証券拠点数:45本支店、12営業所 

国内の顧客資産残高:42.9兆円

【図表2】預かり資産残高の推移

出典:三菱UFJ証券ホールディングス2022年3月期決算説明資料をもとに作成

預かり資産の変動は株式関連資産の時価変動による影響が大きいと思われている。当社は口座数、新規口座開設件数、資金導入額、オンライントレード比率、営業部門内における収益の内訳といったデータを開示していないため、経営動向の詳細は不明である。

営業店舗については対面営業を行う5大証券の中で最小となっている。全国47都道府県のうち、営業拠点があるのは半分程度です。現在も支店の統廃合やバックオフィス機能を持たず営業機能に特化した営業所への転換を進めるなど営業拠点網は縮小傾向だ。

同じメガバンク系列のSMBC日興証券やみずほ証券がグループ内の銀行との共同店舗化などを進めてコスト削減を図りつつも営業拠点網を維持しようとしている姿勢とは対照的だ。三菱UFJモルガン・スタンレー証券は不採算店舗からは無理をせずに撤退という方針のようである。

インターネット戦略についても積極的な姿勢は見せていないようである。同じグループ内にインターネット専業のauカブコム証券[KDDI(9433)との合弁会社]があるため、三菱UFJモルガン・スタンレー証券単体では対面営業に注力するという方針なのかもしれない。

実際にウェルスマネジメントビジネスの高度化を掲げており、総資産ベースのポートフォリオ提案、ウェルスマネジメントビジネスに相応しい処遇体系・長期担当制の本格導入、プロ向け商品(オルタナティブ等)を富裕層向けに小口化といった施策を行っている。

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の投資銀行部門の分析

主に企業や政府の発行する株式・債券の発行・引受、M&Aアドバイザリーなどを行っている部門だ。

プロダクト別の収益内訳は開示されていないが、債券の引受業務とM&Aアドバイザリー業務に強みがあるようだ。

証券会社ごとのホールセール部門における実績をまとめた2021年度のリーグテーブルでは日本国内における債券(国内債+外債)債総合1位(シェア17.1%)、日本企業が関連する国内外エクイティ総合5位(シェア13.2%)、日本企業が関連するM&Aアドバイザリー(取引金額ベース)1位となっている。

投資銀行部門の案件については資本関係のある米モルガン・スタンレーが関わる案件も多いようだ。

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この記事を書いた人

IFA転職を運営し、IFA専門転職支援サービスを展開。創業から100名以上のIFAへの転職を支援。また、アドバイザーナビ経由でのIFAになった方の転職者のコミュニティ「Club IFA」も運営しており、IFA業界の転職市場に精通している。

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