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証券業界の近年の動向とは

本記事では2008年の世界金融危機以降の証券業界の推移をいわゆる五大証券(野村証券、大和証券、SMBC日興証券、みずほ証券、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)とネット証券(SBI証券、楽天証券、松井証券)に注目しながら説明し、最後に日本経済の状況を鑑みて今後の証券業界の展望について解説していく。

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目次

金融危機による業界再編とメガバンクグループの台頭

2008年の世界金融危機の影響による投資の冷え込み、資金不足による経営破綻によって、大手証券会社がメガバンクグループの傘下として完全子会社化、統合、合併される流れが加速した。例えば、三井住友フィナンシャルグループは2009年に日興証券を完全子会社化した。

三菱UFJフィナンシャルグループは2008年にモルガン・スタンレーへ約9000億の出資を決定し、2010年に三菱UFJモルガン・スタンレー証券を設立した。

また、世界金融危機がその主因ではないが、2009年にはみずほ証券と新光証券が合併を行った。

こうした流れを受けて、2010年以降メガバンクグループに属する証券会社が著しく台頭することとなり、まず初めに社債引き受け、次に銀行自らが組成した証券化商品の引き受け、最後に引き受け業務の中心である株式引き受けの順にその規模において二大証券(野村證券、大和証券)を逆転することとなった。

しかし、大和証券は1902年開業、野村證券は1925年開業と、二大証券は古く創業以来から積み上げてきた顧客口座数、顧客資産残高、国内店舗数等に置いてメガバンクグループ系列の証券会社よりも大きな規模を誇っており、売上高に置いては未だトップ2を維持している。

顧客本意のネット証券の台頭・加速

証券業界の近年の動向とは IFA転職コラム

証券会社はこれまで、顧客に金融商品を長期保有させず短期で売却させ、その資金で別の金融商品を買わせ、また短期で売却させることを繰り返して販売手数料を稼ぎ、収益をあげるビジネスモデルに立脚してきた。

しかし、投資のコツは長期・分散・積み立てと言われるように、金融商品を短期で売買し回転させることで顧客から販売手数料を稼ぐ仕組みは顧客本意であるとは言い難い。

こうした状況を鑑み、金融庁は金融機関に対して「顧客本意の業務運営」を目指すよう通達を行い、結果として証券会社は販売手数料重視のビジネスから顧客からの預かり残高を重視する経営方針に転換を迫られている。

「顧客本意の業務運営」において、特筆すべきはネット証券の台頭である。2021年度の売上高において6位がSBI証券、7位が楽天証券、10位が松井証券と、売上高ランキング上位10社のうちネット証券が3社ランクインを果たしている。

これは近年インターネット取引が浸透してきたことに加え、新型コロナウイルスの影響を受けて店頭開設ではなくオンライン上で個人口座開設を行う投資家が増えたこと、つみたてNISAやiDeCoの口座開設にあたり、手数料の比較的安いネット証券が選ばれやすいことが原因に挙げられる。

ネット証券は店舗を持たず対面販売を行わないため人員と賃料の削減を行うことができる。そのため、他社と比べて手数料を格安に抑えることができ、結果的に顧客に取ってコストパフォーマンスの高いサービスを提供できている。

実際、ネット証券の台頭によって苦戦を強いられた野村証券と大和証券は店舗の統廃合を発表しており、事業改革を迫られている。

現在、富裕層や老年の投資家は店舗で担当者のサポートを受けながら証券取引を行い、若年の投資家はインターネットから得た情報を取捨選択しながら自分の利益が最大化するような証券取引を目指す傾向にある。

時代が進むにつれて今後ネット証券は更に台頭していく可能性が高い。

また、投資家がその情報の正誤判定を行えるかは別にして、自らで情報を集めて投資を行うネット証券の仕組みは専門的な立場から販売手数料を稼ぐために短期で売買を繰り返すことを求めてくる従来の証券営業よりも結果的に顧客本意であると言える。

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日本経済と今後の証券業界

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日本は諸外国と比べて個人の資産に占める貯蓄の割合が高い。

日本経済が今後急成長する見込みは低いため、貯蓄から投資への転換を行い個人が資産形成に取り組むことは必須事項であるといえる。

資産形成の機運が高まる中、つみたてNISAやiDeCoを開始する個人投資家が増えてきている。

こうしたサービスは一定の少額を長期に渡って分散して積み立てるものである。売買手数料は政府によって無料と定められているため、証券会社は残高に応じた信託報酬を得るために沢山の顧客に口座を開設してもらい、預金を増やしていく必要がある。

この点で信託報酬を激安に設定できるネット証券は強みを持つ。

また、楽天のように自社の経済圏を持つ会社では、顧客は楽天証券での売上を楽天での買い物に転用したり、楽天ひかり(Wi-Fiサービス)や楽天でんき(個人•家庭向け電気サービス)といったシステムを利用することで生活費に転用したりすることができる。

こうした場合、楽天証券は必ずしも自社における売上の最大化のみを見込む必要がなく、楽天経済圏の中でお金が回るシステムを構築すればよいため、預金を集めるためにより手数料を安価に設定しやすくなるメリットがある。

また、日本経済においてここ20年間の格差は横ばいであり、1億総中流社会の様相を呈しつつある。

従来のように富裕層の顧客に対して対面で手厚いサポートを行う店舗型の証券は、時代が進むにつれてそうした顧客からの資金集めに苦労する可能性が示唆される。

インターネットの台頭により情報を集めやすくなり、簡単に口座開設を行え、他社との比較もできる現在では、投資に参入する人数は増加するが、取り扱う額としてはそこそこの金額をリスク分散させながら長期的に最も効率的と思われる形で積み立てる人が増えてくると思われる。

そうした場合、手数料競争に負けてしまった証券会社は規模を縮小せざるを得ないという形になってしまう可能性がある。

今後も自社内で経済圏を持つ大企業が預金を増やすために参戦してくれば、同様の流れが続くことが見込まれる。

メガバンクグループに属する証券会社は親会社が銀行持ち株会社であるために、同グループに属する銀行、銀行高度化等会社において、銀行法の改正を受けてITやコンサルティング、マーケティングといった様々な領域に参画できるようになった。

今後はそうした分野において収益を上げていくために、手数料をこれまで以上に下げて預金の確保を目標におき、集まった預金を下により収益性の高いビジネスに参入していくという形を取っていく必要があると思われる。

二大証券会社はそのビジネスの特性上、激安の手数料を設定することが難しい状況に置かれている。そのため、手数料で差別化を図るのではなく、長年証券業界を牽引してきた知見をもとに他の会社と比べて調査や分析の量と質に置いて差別化を図り、利回りの高い運用を目指していく必要がある。

ただし、手数料が低下していけばそうした専門的な調査に費用を捻出することが難しくなっていくのは事実である。

規模を縮小させることで効率的な運営を行いながら、採用人材においても営業スキル中心から専門的な知識や分析力を持った人材の採用に転換することで、社内においてエキスパートを増やしていきながら高い業績を上げ続けることが必要になってくると思われる。

参考文献

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この記事を書いた人

IFA転職を運営し、IFA専門転職支援サービスを展開。創業から100名以上のIFAへの転職を支援。また、アドバイザーナビ経由でのIFAになった方の転職者のコミュニティ「Club IFA」も運営しており、IFA業界の転職市場に精通している。

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