証券アナリスト(CMA)とは、金融・投資のプロフェッショナル資格であり、その資格取得を通じて金融市場や金融商品の仕組み、ファイナンス理論など幅広い知識を得られるものである。証券アナリストは金融機関に限らず、企業の財務部門やIR部門、コンサル業界など幅広い業界で役に立つ資格だ。
そこで本記事では、証券アナリストの試験概要や取得によるメリットについて解説していく。
証券アナリストとは
証券アナリストとは、「金融・投資のプロフェッショナルたりうる人材」に対して与えられる資格であり、日本証券アナリスト協会によって運営・管理されている。
証券アナリストの取得にあたって受講が必須となっている「CMA講座」では、投資対象の分析・評価スキルや企業財務の知識、ファイナンス理論など、金融に関わる幅広い知識を取得することが可能だ。
2022年5月26日現在では、約2万8,000人の登録者がいる。
証券アナリストを取得するメリット
証券アナリストは金融業界に限らず、多様な業界で取得されている資格であるが、取得によってどのようなメリットがあるのだろうか。以下で詳しく見ていこう。
実務的に役立つ金融の専門知識を得られる
証券アナリストでは、資格取得の学習を通じて企業の財務分析や投資対象の分析・評価など実践的なスキルを学ぶ。これらの知識は資格取得のためだけでなく、その後の実務でも役に立つものである。
そのため、金融業界はもちろんのこと、企業の財務部門・IR部門、公認会計士など、さまざまな分野でキャリアアップにつながる資格といえる。
幅広い業界で活用できる
銀行や保険会社、証券会社などの金融業界の他にも、事業会社や調査研究所などに所属している人もおり、証券アナリストは幅広い業界で活用されていることが分かる。証券アナリストは金融に関する深い専門知識が身につけられることから、自社の財務分析や事業戦略など中枢部門での業務にも大いに役立つだろう。
金融業界においても、証券アナリストとして働く以外にファンドマネージャーやストラテジスト、エコノミストなど、さまざまな道で活かすことができる。
顧客からの信頼感が高まる
証券アナリストを取得することによって、名刺に「日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)」と記載することが可能となる。証券アナリストはFP技能士と同様に知名度の高い資格であるため、顧客からの信頼感にもつながるといえる。
もちろん資格は肩書きのひとつに過ぎないが、「資格取得にあたって、相応の努力を行った」という証にもなり、前向きに自己研鑽を行っているという点では、顧客からの高評価につながることは間違いないだろう。
プライベートバンカー(PB)資格の受験料が割引になる
証券アナリストを取得すると、プライベートバンカー資格の受験料の割引が受けられる。プライベートバンカー資格とは、準富裕層・富裕層に対して資産保全・承継などの金融サービスを提供するプロフェッショナルに対して与えられる資格である。
プライベートバンカー資格には、「プライマリーPB」と「シニアPB」の2種類があるが、証券アナリスト資格保有者はプライマリーPB受験料の割引およびシニアPB受験資格が付与される。
プライマリーPBの受験では、3単位の取得が必須となっており、1単位につき8,400円(税込)の受験料が必要となる。証券アナリスト資格保有者は1割引での受験料で申し込みができるため、証券アナリスト合格後は是非プライベートバンカー資格の取得も目指したいところだ。
「国際公認投資アナリスト(CIIA)を目指せる
証券アナリスト資格を取得すると、「国際公認投資アナリスト(CIIA)」の受験資格も付与される。国際公認投資アナリスト(CIIA)とは、国際的に認められた証券アナリスト資格であり、アジアや欧州、南米など世界各国で採用されているものだ。
日本での国際公認投資アナリストの受験については、証券アナリスト資格保有者のみが認められている。国際公認投資アナリストになると、フランスやドイツ、香港などのACIIA(Association of Certified International Investment Analysts)協会に入れるようになったり、英国金融行為監督機構(FCA)や香港証券及期貨事務監察委員会(SFC)などが実施する試験が一部免除されたりと、さまざまなメリットが受けられる。
国際公認投資アナリストの試験は日本語でも実施されているため、証券アナリスト合格後はプライベートバンカー資格と併せて受験を検討したい資格だ。
証券アナリストの試験概要
証券アナリスト資格を取得するためには、「CMA第1次レベル講座」と「CMA第2次レベル講座」の受講・試験合格をクリアする必要がある。それぞれの講座の内容を確認していこう。
CMA第1次レベル講座
講座概要
CMA第1次レベル講座では、以下の6つの学習分野について学ぶ。
学習分野 | 試験科目 |
---|---|
証券分析とポートフォリオ・マネジメント | Ⅰ |
財務分析 | Ⅱ |
コーポレート・ファイナンス | |
市場と経済の分析 | Ⅲ |
数量分析と確率・統計 | |
職業倫理・行為基準 |
講座はテキストによる自習形式となり、過去の試験問題をウェブ上で受験できるデジタル学習ツールも提供される。第1次レベル講座の受講期間は、毎年6月から翌年1月までの8ヶ月となり、講座テキストが6月、7月、9月、11月の計4回送付される流れだ。
試験概要
第1次レベル講座での学習内容を踏まえて第1次試験が実施される。試験は1科目ずつ受験することも、3科目まとめて受験することも可能だ。第1次試験の試験概要は、以下の通りである。
実施時期 | 試験時間(配点) | 出題形式 |
---|---|---|
春:4月下旬 秋:9月下旬または10月上旬 | 科目Ⅰ:170分(170点) 科目Ⅱ:100分(100点) 科目Ⅲ:90分(90点) 合計360分(360点) | すべて正解が1つの客観問題 (計算問題、穴埋め問題を含む選択肢形式〈マークシート〉) |
なお、第1次試験の受験期間は、講座受講後から原則3年間となっているため注意が必要である。自身の受験可能最終年などについては日本証券アナリスト協会ホームページ内のマイページにて確認可能となっている。
CMA第2次レベル講座
CMA第1次レベル試験の合格後は、CMA第2次レベル講座を受講する流れとなる。第1次レベル試験の合格後3年以内に第2次レベル講座の受講を始めない場合は、受講資格を失効してしまうため、計画的に受講を始める必要がある。
講座概要
CMA第2次レベル講座では、以下の学習内容について学ぶ。
- 証券分析とポートフォリオ
- マネジメント
- 財務分析
- コーポレート
- ファイナンス
- 市場と経済の分析
- 数量分析と確率・統計
- 職業倫理
- 行為基準
第1次レベル講座で学んだ基礎知識をもとに、第2次レベル講座ではより実践的なスキルを学ぶカリキュラムとなっている。第2次レベル講座も1次講座同様に、テキストでの自主学習形式だ。第2次レベル講座の受講期間は、毎年8月から翌年3月までの8ヶ月となり、8月、10月、12月、2月の計4回テキストが送付される流れである。
試験概要
第2次レベル試験では、全ての学習内容を対象とした総合試験となる。試験概要は以下の通りだ。
実施時期 | 試験時間(配点) | 出題形式 |
---|---|---|
6月上旬 | 総合試験:360分(360点) (試験時間は午前・午後とも各180分) | 計算問題を含む記述式応用問題。 採点に際しては、回答に至る過程も考慮。 |
なお、第2次レベル試験も1次試験と同様に、講座受講終了から原則3年以内に受験する必要がある。自身の受験可能最終年などについては日本証券アナリスト協会ホームページ内のマイページにて確認可能となっている。
証券アナリストの取得費用
証券アナリストの資格取得にかかる費用は以下の通りである。
講座受講料(税込) | 試験受験料 | |
---|---|---|
第1次レベル | 会員受講者:54,000円 一般受講者:60,000円 | 科目Ⅰ:6,400円 科目Ⅱ:3,300円 科目Ⅲ:3,300円 |
第2次レベル | 57,000円 | 15,000円 |
自身が所属する法人が日本証券アナリスト協会の法人会員・法人賛助会員となっている場合は、第1次レベルの講座受講料で割引が受けられる。なお、受験料の納入について、期限後の支払いは一切受け付けてもらえないため、受験申込後はすみやかに支払い手続きを行おう。
証券アナリストの登録方法
第2次レベル試験の合格後は、検定会員申込手続きを行う。検定会員の申し込み要件は以下の通りである。
- 証券アナリスト第2次レベル試験合格者
- 証券分析業務の実務経験を3年以上(合格前も含めた通算の期間)有する者または証券分析に関する学識経験者で証券分析能力を充分に備えた者
第2次レベル試験合格の他に、3年以上の実務経験が必要となる点に注意が必要だ。ただし、ここでいう「実務経験」とは金融機関での業務に限らず、「事業会社における財務管理・分析・企画業務」や「経済、産業、金融に関する調査・分析業務」なども含まれる。
上記2点の要件を満たした人は、「検定会員申込書」を記入のうえ日本証券アナリスト協会宛て送付しよう。その後入会承認後に入会通知と請求書が送付されるため、支払い手続きを行えば、証券アナリストの登録手続きが完了だ。
なお、個人会員の入会費用・年会費は以下のとおりである。
個人会員入会費 | 10,000円 |
個人会員年会費 | 18,000円(満65歳以上の方は12,000円) |