会計士が持つ専門性の高さは、様々な業界においてニーズがある。金融業界もそのひとつだ。企業資本の健全性を保つことが使命の会計士は、近年金融業界においてますますニーズが高まっている。
そこで本記事では、金融業界において会計士のニーズが高まっている背景や、会計士が金融業界で担う業務について解説していく。転職活動を成功させるポイントについても紹介するため、ぜひ転職活動を行う上での参考にしていただきたい。
金融業界における会計士のニーズとは?
近年、金融業界において会計士のニーズが高まっている。その背景を理解しておくことは、転職活動を進める上で大切なポイントだ。
まずは、金融業界において会計士が必要とされる背景と、会計士が担う具体的な業務内容について解説していこう。
金融業界で会計士が必要とされる背景
金融業界で会計士のニーズが高まっている背景として、自己資本比率規制の強化が挙げられる。2008年のリーマンショック以降、金融機関は自己資本を健全に保つことが求められるようになった。バーゼル規制はさらに煩雑化されることとなり、各金融機関はその対応に多大な人的資本を充てている。
普通株式や自己資本への規制に対応するために、社内に会計のプロフェッショナルとして会計士を置く金融機関も少なくない。会計士の持つ専門スキルは、金融機関のガバナンス強化に大いに役立つものである。
また、金融機関が手掛ける業務の広がりも会計士が必要とされる理由のひとつだ。近年、金融機関ではM&A支援などのアドバイザリー業務に力を入れている。中には専門部署を設立する金融機関もあり、高い専門知識を持つ人材が求められている。
M&A業務では、会計士の持つ企業価値評価スキルや財務分析スキルが必要不可欠だ。経営者の高齢化や後継者不足により、今後M&Aのニーズはさらに増していくことが予想される。それに伴い、金融業界における会計士のニーズも比例して増加していくだろう。
基本的にはバックオフィスでのニーズが多い
会計士として金融業界へ転職する場合、多くはバックオフィスへ配属されることとなる。具体的には次のような業務が考えられる。
財務部門 | ・財務戦略の立案 ・財務分析 ・決算関連業務 ・財務諸表の作成 |
リスク管理部門 | ・市場リスク、信用リスクの分析 ・バーゼル規制への対応 ・当局あての書類作成 |
与信管理部門 | ・与信先企業の財務分析 |
財務部門やリスク管理部門では、金融機関の資本管理に関わる業務を担う。監査法人で金融機関の監査に携わった経験があれば、これまで培った知識や経験をそのまま活かしやすい。財務戦略の立案を担うこともあるため、大きなやりがいを感じられる仕事だ。
また、銀行業界へ転職した場合は、与信先企業の財務分析を担うこともある。与信業務を取り扱う銀行は、与信先企業の経営状況悪化によって損失を被る信用リスクを抱えている。
そのため、「貸付額は適切か」、「与信審査のプロセスは適切か」ということを定期的に評価する必要がある。企業の財務分析に精通した会計士は、銀行の与信管理部門でもニーズが高いといえる。
ミドルオフィスでは顧客と直接かかわることもある
会計士はミドルオフィスへ配属される場合もある。具体的には次のような業務を担うことが想定される。
法人営業支援部門 | ・法人顧客の経営支援 ・海外事業戦略の支援 ・株式上場のサポート |
M&Aアドバイザリー業務部門 | ・買収先企業の財務分析 ・買収金額の交渉 ・契約書作成のサポート |
ミドルオフィスでは、営業店の担当者と共に顧客と直接面談しサポートを行う。前述の通り、金融業界ではM&A支援のニーズが高まっており、会計士としてのキャリアを活かしながら活躍できる可能性が高い。
バックオフィスとは違い、ミドルオフィスでは直接顧客と関わることから、「中小企業の支援を行いたい」、「直接顧客の役に立つ仕事がしたい」という人にはやりがいを感じられる仕事だ。
会計士から金融業界への転職を成功させるコツ
会計士として金融業界への転職を成功させるためには、次の4つのポイントが大切だ。
・長期のキャリアプランを描く ・金融業界へ転職したい理由を明確にする ・自分の望む働き方に合った金融機関を選ぶ ・転職エージェントを活用する |
それぞれ詳しく解説していこう。
長期のキャリアプランを描く
転職活動では、長期のキャリアプランを描くことが大切だ。特に専門人材として金融機関へ転職した場合、生え抜きの社員とは違ったキャリアコースを歩む可能性が高い。社内にキャリアのモデルになる人材がいないことも考えられるため、入社前にしっかりとビジョンを描いておく必要がある。
金融業界に転職したあとの会計士のキャリアとして、次のような例が挙げられる。
・金融機関でそのままキャリアを積む ・会計事務所を設立する ・金融業界内で転職する ・金融系コンサル業界へ転職する ・ベンチャー企業へ転職する |
10年後、20年後自分がどのようなキャリアを歩んでいきたいか、転職活動に取り組む前にしっかりと考えてみよう。
金融業界へ転職したい理由を明確にする
会計士は金融業界に限らず、様々な業界でキャリアを活かせる。金融業界へ転職する場合、「なぜ多くの選択肢の中から金融機関を選んだのか」という理由を明確にしておく必要がある。
「なんとなく高収入を狙えそうだから」、「会計士のキャリアを活かせそうだから」といった曖昧な理由で転職活動を進めてしまうと、結果としてキャリアアップが実現できない可能性もある。
転職活動に取り組む際は、「金融機関でやりたい仕事」「実現したいキャリア」「仕事に求めるやりがい」などをじっくりと考えてみよう。これらは転職活動を行ううえでの軸にもなるため、時間をかけて自分と向き合うことが大切だ。
自分の望む働き方に合った金融機関を選ぶ
金融業界には証券会社や銀行、保険会社など多くの業種がある。同じ金融業界ではあるものの、手掛ける業務や社風、働き方には違いがみられる。金融業界への転職では、自分が望む働き方にあった金融機関を選ぶことが大切だ。
例えば、「転職で年収アップを狙いたい」という人は、外資系の投資銀行やPEファンドなどが向いている。ただし、激務となることもあるため、相応の覚悟が必要な転職先である。
また、「安定した給与のもと、長期的にキャリアを積んでいきたい」という人はメガバンクや地方銀行などが向いているといえる。日系の大手銀行は福利厚生が整っているため、しっかりワークライフバランスを充実させられる魅力がある。
このように、金融業界といっても多種多様な働き方があるため、自分の望むキャリアと一致する金融機関を選ぶようにしよう。
転職エージェントを活用する
会計士から金融業界への転職では、転職エージェントを活用することもおすすめだ。会計士のような専門人材の求人は非公開で募集されることが多い。自分で求人サイトなどを見てもなかなか求人情報が見つけられないため、エージェントを活用して情報収集を行う必要がある。
また、転職エージェントではキャリアコンサルタントによって面接対策や書類添削を受けられるメリットもある。忙しい会計士の仕事と転職活動を並行して進めるためには、第三者のサポートを得ることも検討しよう。
会計士の強みを活かしてキャリアアップを狙おう
近年、金融業界では会計士のニーズが高まっている。会計士の持つ財務分析スキルや会計スキルは金融業界とも親和性が高く、異業種でありながらこれまでの知識と経験を活かすことが可能な業界だ。
金融業界への転職は、その後のキャリアの幅が広がるメリットもある。転職活動に取り組む際は、「金融機関での経験をどう活かすのか」といった長期のキャリアプランをしっかりと描いておこう。
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