金融市場に関する高い専門知識や営業スキルが身につく証券会社での経験は、転職活動において有利に働くことがある。
どのようなスキルが自分の強みとなるのかしっかりと把握しておくことで、効率的に転職活動を進められるだろう。
本記事では、証券会社が転職活動で有利といわれる理由についてと年代別の転職におすすめの業界解説していく。転職活動を成功させるための秘訣についても解説するため、ぜひ参考にして頂きたい。
証券会社からの転職が有利といわれる理由とは
古くから「3年証券会社で働けばどの業界でも活躍できる」と言われている通り、実際に厳しいノルマ営業をこなしてきた証券会社での経験は、転職活動で高い評価を受けることがある。
ここからは、証券会社からの転職が有利だといわれる理由について解説していこう。
基本的なビジネスマナーが身についている
証券会社リテール出身者は、電話応対や名刺交換、ビジネスメールなど基本的なビジネスマナーが身についている人が多い。
コロナ前は新入社員には飛び込み訪問が慣習としてあり、現在も証券会社によるもののコールセンターでの大量の顧客対応やビジネスマナー研修が行われている。
また富裕層顧客は50-70代経営者も多く、そういった顧客対応に必要なマナーはいわゆる礼儀作法の慣習が重要視されづらくなっている今だからこそ身につきづらいビジネスマナーは貴重なスキルとなる。
顧客から質の高い応対を求められる金融業界では、入社時に必ずビジネスマナーの研修が行われる。お辞儀の角度やビジネス敬語での応対など細かい指導を受けた人も多いだろう。
社会人としての基本がしっかりと身についていると、企業サイドとしては「基本的なことを教える手間が省ける」とポジティブな印象を抱きやすい。一度身についたビジネスマナーは、他の業界でも十分武器となるのである。
ストレス耐性がある
一般的に証券会社というと、「ノルマのプレッシャーが大きい」「上下関係が厳しい」「残業や休日出勤が多い」といったハードワークのイメージが強い。
実際に証券会社で働き続けるためには、体力的にも精神的にも相当の覚悟が必要である。そうした環境でストレスを乗り越えながら経験を積んできた人であれば、企業側から「新しい環境でも一生懸命頑張ってくれるだろう」という印象を持たれやすい。
特にコロナ以降は証券会社でも上記のような風潮はかなり薄まり、定時出社定時退社の会社も増えているためストレス耐性があるイメージは薄まりつつある。
ストレス耐性がある、というイメージはまだ残っているため転職活動にとって多少有利なこともまだあるものの実際に証券会社でどのようなスタンスで業務に取り組んでいたかが面接で問われるようになっている。
ただし、新卒入社から数年で転職活動を行う場合は注意が必要だ。「自分に合わない環境だと判断したら、また転職してしまうのではないか」という不安を与えてしまうためである。
この場合は、デメリットをカバーできるアピールポイントを探すなどの対策が求められる。
富裕層営業の経験がある
証券会社の顧客は50-70代の経営者や医者等の富裕層も多い。企業のトップである経営者への営業経験と成功体験が多くある証券会社リテール出身者はその経験が評価されることがある。
一般的な企業では、証券会社や銀行などの金融機関独特の富裕層営業を経験することはできない。
そのため、新卒から証券会社での富裕層営業の経験が多くあるのは強みになることが多く、強いアピールポイントになる。
また、富裕層営業では日本の伝統的な富裕層に合わせた礼儀作法や知識が求められるため、このような基本動作ができない人が増えているからこそ貴重なスキルとして見られることも多い。
証券会社に入ってすぐやめることを検討する証券リテール出身者も多いが、富裕層には資産運用以外にも多くの悩みがあることが多く、事業承継や相続対策の経験や富裕層が抱える独特な価値観を知ってから転職活動をおこなうことも一つ検討事項となる。
その際は自身の年齢と知識見識との兼ね合いでの検討が必要となる。
新規開拓営業の実績がある
営業職への転職を検討する場合は、証券会社での新規開拓営業の経験が大いに役立つ。証券会社への入社後に、まず新規口座開設の獲得をノルマとして与えられた人もいるだろう。全くの初対面の顧客を相手に営業活動を行うのは、多くの人ができることではない。
断られてもめげずに営業を続けた経験は、他業界の営業職であっても有利に働く可能性が高い。
「営業マンには価値がないのでは」と悩む人も多いと思うが、外から見ていると綺麗に見えるベンチャーや成長産業では、イメージとは反して特に業績への意識が大企業と比較するとより強い。
数字を作らなくても経営体制を維持できる大企業とは異なり、業績の拡大なしには経営を維持できないという実情がある。そのため、与えられたミッションを与えられた水準以上にやりきる能力は非常に評価されるようになっている。
取得難易度の高い資格を保有している
証券会社で取得した資格も有利に働くポイントだ。特に取得難易度の高いCFPや1級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券アナリスト、中小企業診断士などは高く評価されやすいといえる。
それらの知識が直接活かせる業界に転職する場合はもちろんだが、全くの他業界の場合であっても難易度の高い資格を有していることは有利に働く可能性がある。
それは、「資格取得に向けて相応の努力ができる」という証明になるためだ。特に、証券会社のような激務をこなしながら資格の取得に成功している人は前向きな印象を与えられるだろう。
注意が必要なのは、評価されるのは資格の数ではないということである。
評価される基準の資格として、第一段階は日商簿記2級、宅地建物取引士、その次の難易度のものとしてCFP、証券アナリスト等が求められる。
営業成果が出ている人が上記資格を取得していると「営業だけでなく知識も重要視している」と評価されることが多く、営業成果が出ていなくても取得していると「自分にできる自己研鑽はおこなっている」と評価を受けることができるので極めて重要であると言える。
年齢別の証券会社からの転職におすすめの業界と求められるスキル
証券会社で得た知識や経験を活かす転職先として、20代・30代・40代に分けて次のような職種が挙げられる。
新卒から20代後半
新卒から20代後半は「学歴」「職歴」「特筆した営業成績」「資格」が見られる。これにより下記のような転職先候補が挙げられる。
外資コンサル
高学歴や職歴、英語力が求められる業界である。主に高学歴で大手証券に入った20代後半までの証券リテール出身者が、自身の付加価値を高めるため転職することが多い。
M&A仲介
M&A仲介では、主に特筆した営業成績が求められる。上位5%以内、等で区切っている会社もあり、その成果を出したプロセスや思考回路が見られる。
証券リテールで成果を出しているメンバーが、もっと稼ぎたい、社会的意義のあるM&Aに携わりたい、成長産業で働きたいという目的を持って転職するケースが多い。
金融業界
証券リテールから、同業他社へいくケースは「金融は好きだが証券リテールの文化に馴染めない」というケースや単純に同業で大きな会社にいくようなケースがある。
証券リテール業務は好きだが自身が所属する会社の先行きが不安だ、という声も多く最近ではそういった20代の証券リテール出身者が信託銀行や銀行業界へ転身するケースも急増している。
IFA業界
IFA業界も最近急増している。証券業務は好きだが会社の先行きが不安だという意見の人が多い。
米国でそうであったように、投資銀行部門とリテールの両立は投資家にとって利益相反が生まれる可能性から、投資銀行部門を持たず顧客に寄り添うことのできるIFAが台頭している。
証券会社の中でも優秀な20代の人の転職事例も目立つ業界である。
ベンチャー企業
伝統的な日本の産業である証券リテール勤務者はベンチャー企業への転職をするケースも少なくない。ベンチャー企業への転職は、公開情報が少ないことから難しく、情報収集をかなり気をつけて行う必要がある。
30代
30代は20代とは異なり「営業経験や成績」「資格」が主に見られるようになる。また、転職希望者サイドでも単純なキャリアアップを望んで、というよりはライフステージの変化により職場環境を変えたいという悩みも増えてくる。
30代になると転職先としては突発的な業種転換やキャリアアップは困難になってくる一方、自身の築いた専門性があると強い武器になる。
なお、20代の選択肢に上がるようなM&A仲介や外資系コンサルは大半の場合において選択肢から消えることになる。
同業他社
証券リテールから同業他社への転職は多い。
この場合は、接点を持つ顧客層を変えることにより自身の成長に繋げたいというケースや、結婚や住宅購入等の仕事以外の事情により転勤がない形態への転職希望や年収を上げたい、残業を無くしたいという目的が多い。同業での転職は主に営業成績や知識見識が書類審査や面接で見られることになる。
IFA
証券リテールからIFAに転職する多くのケースは、顧客本意のビジネスを体現したい、というケースや転勤が受け入れられない等のワークライフバランスを整えたいというケースが見られる。
IFAといっても全国に600社以上あると言われ、規模や雇用形態も様々あり自分に合った働き方を体現するにはどこに所属するべきか、というのが非常にハードルの高い業界でもある。
ベンチャー企業
30代になると、ベンチャー企業で求められるケースがかなり少なくなる。求められたとしても現職の年収と比較するとかなり低くなる等何かしらを捨てる転職になることが多い。
ある程度の責任のあるポジションで成果を出す気概が求められる。
40代以降
40代以降になると年収や働き方等、現状の証券会社よりも良いところを探すのが極めて難しくなる。
そのため、さらなるキャリアアップのためというよりは何か条件を下げてでも解消したい問題がある場合の転職活動となることが多い。
同業他社
30代と比較してもキャリアアップよりも個人的な問題の解決のための転職活動となることが大半である。同職種で転勤のない仕事を探す人が増えている。その場合、マネージャーとしての実績よりも過去の営業成績が重要視される。
IFA
IFAも上記の通り様々な雇用形態があるものの、40代になると顧客とのリレーションが必要になるケースが増える。
30代半ばの優秀なリテール出身者と比較した時に、勝てる分野を探すのが難しくなる。今までの経験を活かした顧客との長期にわたるリレーションシップ等はかなりの強みとして評価される。
ベンチャー
ごく一部において、ベンチャー企業の重要なポジションでの転職もある。その前提として特筆したスキルと業績のどちらも兼ね備えていることが求められるケースが多い。
ベンチャー企業の場合はそもそも公開情報が少ないことや、入社後のトラブルも多い業界であるので注意が必要である。
証券会社からの転職活動を成功させるための3つの秘訣
証券会社からの転職活動を成功させるためには、次の3つの秘訣がある。
- 自身の現状認識をしっかりと行う
- 転職する可能性のある選択肢を知る
- 転職エージェントを活用する
それぞれ詳しく解説していこう。
自身の現状認識をしっかりと行う
転職活動を行うと決めたら、まずはしっかりと自身の現状認識を行おう。自分の立ち位置や意向をハッキリとさせておくことで、転職活動を行う上での軸が形成されるメリットがある。
具体的には、次のようなポイントを明確にしておくことがおすすめだ
- 転職活動を行う目的
- なぜ今の会社を辞めたいのか
- 長期でのキャリアプラン
- 転職先に最も求める点は何か
- 自身の会社での立ち位置(営業成績の絶対値相対値、保有資格、その他の強み)
証券会社のリテールで勤めながら、明確にやりたいことが見つかっての転職活動なら問題がないものの、明確にやりたいことがない中で今の職場への不満解消が目的となる転職活動は注意が必要である。
この場合の次の職場でやりたい職種業種は誤った分析であることも多いので、やりたいことよりも「解消したいこと」を軸に具体的に転職活動を進めるのがおすすめである(例:転勤なし、残業なし、等)
転職する可能性のある選択肢を知る
上記が整理できれば、次は情報収集。
自身が体現したいキャリアの中で、現実的なものがどの程度あるのかを知る作業となる。
ここでの注意点は、転職媒体に登録した際に様々なエージェントや企業からくるメッセージを見て「自分には市場価値がある」と勘違いしてしまうことだ。
メッセージはある程度ランダムに送られていることが多く、メッセージ送信段階でそこまで詳細のプロフィールは見られていない。
そのため求められている段階ではなく、実際にメッセージがきたエージェントや企業と会話してみることが第一歩だと言えるだろう。
転職エージェントを活用する
転職エージェントを活用することは、転職活動において重要なことの一つであると言える。
転職エージェントに要望を伝え、そのフィードバックがポジティブなのかネガティブなのかを参考にした上で複数の転職エージェントにキャリアの相談をしてみるのが第一歩となる。
証券会社からの転職をサポート
本記事では、証券会社からの転職が有利といわれる理由について解説してきた。時には「つぶしがきかない」といわれることもある金融業界であるが、高い接客スキルやビジネスマナー、営業経験は転職活動においても有利に働く。証券会社での経験は、自分でも気が付かないような点が高く評価されることもあるため、自信を持って転職活動を始めよう。
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