FP資格の最高ランクに位置付けられる「CFP」は、金融・税制・保険・相続・不動産など、さまざまな学習分野の知識の習得を求められる。受験する際には各科目の難易度を把握した上で、科目ごとに適切な対策方法を練ることが重要だ。
この記事では、CFP試験の基本的な内容や科目別の難易度、合格に向けた勉強方法を解説していく。
CFP試験の合格を目指している人は、ぜひ本記事を参考に勉強を進めていこう。
CFP試験の概要
CFPとは、世界25の国と地域で導入(2022年3月現在)されているFP資格のことである。日本では「日本FP協会」が認定しており、FP資格の最高ランクに位置付けられている。
CFP資格は、海外の数多くの国でも評価されているため、国際的に活躍できる人材として認められる。取得すれば海外顧客からの信頼も得られるため、金融機関でキャリアアップを目指している人はぜひ取得しておきたい資格だ。
CFP取得までの流れ
CFP認定を受けるためには、まずAFP認定者である必要がある。AFPとは、CFPと同様に日本FP協会が認定している資格のことだ。
AFP認定を受けるためには、AFP認定研修(基本課程)を修了した後、2級FP技能検定に合格し、AFP資格の登録手続きを受けることが基本のルートとなる。
しかし2年以上のFP実務経験があれば、2級FP技能検定に合格してからAFP認定研修(技能士課程)を受講することでも、AFP認定を受けられる。AFP認定を受けたら、以下のCFP資格審査試験6科目を受験する。
- 金融資産運用設計
- 不動産運用設計
- ライフプランニング・リタイアメントプランニング
- リスクと保険
- タックスプランニング
- 相続・事業承継設計
上記の資格試験は一括で6科目を受験することもできるが、1科目ずつ受験することも可能だ。一度合格した科目は有効であるため、少しずつ試験の合格を目指していくのも良いだろう。
CFP資格審査試験の全科目に合格したら、次にCFPエントリー研修を受講・修了しよう。通算で3年以上のFP実務経験があれば、登録申請をしてCFP認定を受けられる。
出題形式
CFP資格審査試験は、4択から正答を選ぶ方式である。各科目50問出題され、1問2点の100点満点となっている。
合格点が定められているわけではなく、受験者の得点によって合格ラインが変動する形式だ。
CFP試験の日程と時間割
CFP資格審査試験は、6月と11月の年2回行われる。それぞれ2週にわたって試験が行われ、以下のようなタイムスケジュールで実施される。
試験1日目
試験時間 | 試験科目 |
---|---|
9:30〜11:30 | 金融資産運用設計 |
12:30〜14:30 | 不動産運用設計 |
15:30〜17:30 | ライフプランニング・リタイアメントプランニング |
試験2日目
試験時間 | 試験科目 |
---|---|
9:30〜11:30 | リスクと保険 |
12:30〜14:30 | タックスプランニング |
15:30〜17:30 | 相続・事業承継設計 |
上記の試験日程を参考にし、自身が受験する際のスケジュールを検討しよう。
CFPの科目別難易度
次に、CFPの各科目の難易度について確認していこう。
科目ごとの難易度を把握していると対策が練りやすくなるため、しっかりと確認しておくことが大切だ。2021年度に行われた2回のCFP試験の合格率を確認していく。
2021年度第1回CFP資格審査試験
課目名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格ライン |
---|---|---|---|---|
金融資産運用設計 | 4,305名 | 1,501名 | 34.9% | 28/50問 |
不動産運用設計 | 2,918名 | 1,033名 | 35.4% | 32/50問 |
ライフプランニング・リタイアメントプランニング | 3,138名 | 1,136名 | 36.2% | 31/50問 |
リスクと保険 | 3,900名 | 1,494名 | 38.3% | 32/50問 |
タックスプランニング | 3,380名 | 1,253名 | 37.1% | 33/50問 |
相続・事業承継設計 | 3,277名 | 1,188名 | 36.3% | 32/50問 |
2021年度第1回試験で全科目を同時に受験した人は274名で、27名(合格率9.9%)が合格した。
2021年度第2回CFP資格審査試験
課目名 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 合格ライン |
---|---|---|---|---|
金融資産運用設計 | 3,752名 | 1,389名 | 37.0% | 27/50問 |
不動産運用設計 | 3,028名 | 1,073名 | 35.4% | 32/50問 |
ライフプランニング・リタイアメントプランニング | 3,056名 | 1,169名 | 38.3% | 32/50問 |
リスクと保険 | 3,673名 | 1,506名 | 41.0% | 33/50問 |
タックスプランニング | 3,118名 | 1,169名 | 37.5% | 27/50問 |
相続・事業承継設計 | 3,221名 | 1,127名 | 35.0% | 29/50問 |
2021年度第2回試験で全科目を同時に受験した人は221名で、22名(合格率10.0%)が合格した。
このように合格率や合格ラインを並べてみると、各科目で差があることが分かる。
2021年度に行われた2回の試験における合格ラインの平均は、以下の通りだ。
金融資産運用設計 | 27.5/50問 |
不動産運用設計 | 32/50問 |
ライフプランニング・リタイアメントプランニング | 31.5/50問 |
リスクと保険 | 32.5/50問 |
タックスプランニング | 30/50問 |
相続・事業承継設計 | 30.5/50問 |
「金融資産運用設計」は、平均28問正解することで合格できたと言える。ほかの科目に比べると合格ラインが低いため合格しやすいように見えるが、裏を返せば受験者がそれだけ点数を取れていないということだ。
金融資産運用設計は、比較的難易度が高いと言うことができるだろう。
一方で「不動産運用設計」や「リスクと保険」は合格ラインが高めになっている。点数は取りやすいものの、ほかの受験者もしっかりと得点してくる科目である。気を抜かずに高得点を狙いに行きたい科目だ。
受験の際には、こうした過去のデータから難易度や合格ラインを把握しておくことが重要となる。
各科目の難易度を頭に入れた上で、対策方法を練っていこう。
CFP合格に向けた勉強方法
CFP資格審査試験は6科目同時に受験することもできるが、1科目ずつの受験も可能だ。6科目同時受験での合格率は10%前後とあまり高くないため、各分野の内容に自信がない場合は複数回に分けて受験するのも良いだろう。
また、先ほど解説した各科目の難易度はあくまで一般的なものであるため、受験者本人の得意分野によっては、当てはまらないケースもある。
例えば、証券会社に勤務している人は「金融資産運用設計」、不動産会社に勤務している人は「不動産運用設計」が解きやすい。自身の得意分野も踏まえて勉強を進めていこう。
金融資産運用設計の対策
金融資産運用設計では、各国の経済指標や金融政策、金融商品の内容や損益の計算などが学習分野となる。
また、時事問題やNISA・iDeCoなどの税制優遇制度などについても出題される。学習を進める際には、過去問を繰り返し解くことで金融知識を身に付け、計算問題に慣れていくことが重要だ。
また、各国の金融政策やマーケット状況などに注目しておくことも大切となる。特に、国内の税制や法律の改正などの時事問題は、過去問を解いていても対策できない部分であるため、しっかりとチェックしておこう。
不動産運用設計の対策
不動産運用設計では、不動産の売買・賃貸借に関する税制や法令等の基本的な知識が出題範囲となる。実際のコンサルティングの場面に応じて、個別の課題に取り組める応用力も求められる。不動産運用設計は計算問題の出題が多く、解答に時間がかかりやすいという点が課題となる。そのため、過去問や問題集を繰り返し解いて、スピーディーに計算できるように対策しておくことが重要だ。
また、公的地価の動向や不動産に関する税制改正など、時事的な問題にも対応できるように新聞記事などをしっかりとチェックしておこう。
ライフプランニング・リタイアメントプランニングの対策
ライフプランニング・リタイアメントプランニングでは、相談者のライフプランに応じた適切なアドバイスをするために必要な知識が求められる。キャッシュフロー表の作成や社会保険、ローンなどの幅広い知識が必要となるため、しっかりと対策することが重要だ。ライフプランニング・リタイアメントプランニングは、それぞれの問題の難易度は高くないものの、出題範囲が広いことが特徴である。しっかりと学習時間を確保して、出題範囲をカバーできるように準備しておこう。
また、キャッシュフロー表や係数で計算する問題などは過去問でも頻出の範囲となっている。過去問と問題集を解くことで問題に慣れていこう。
リスクと保険の対策
リスクと保険では、生命保険・損害保険それぞれの商品の内容や制度、法人契約の仕訳などが出題範囲となる。
また、必要保障額の算出や統計データなどの問題も出題され、実務的なコンサルティングスキルが問われる。リスクと保険は出題の傾向がある程度決まっており、対策をしやすい科目でもある。テキストをしっかりと読み込んだ上で過去問を解き、着実に得点を積み重ねていけるように対策していこう。
タックスプランニングの対策
タックスプランニングでは、法人税や所得税、地方税などの税金に関する総合的な知識が求められる。税務手続きや法人・個人の税金の仕組みなどの知識が求められる。タックスプランニングは計算問題が多いため、とにかく問題を解いて慣れることが重要だ。
また、ほかの科目とも関連性が高い学習分野であることも特徴である。先にほかの科目を勉強してからタックスプランニングの勉強をすると、理解が進みやすくなるだろう。
相続・事業承継設計の対策
相続・事業承継設計では、相続税・贈与税の仕組みや計算、相続財産の評価などが出題範囲となる。実務を踏まえて「どういった相続税対策が有利になるのか」といったポイントを押さえておくことが重要だ。比較的出題範囲が狭いことが特徴であるため、過去問を繰り返し解くことで点数が取りやすい科目と言える。
計算問題に慣れつつ、法改正を頭に入れることで対策していこう。
合格するための対策を練ろう
CFP試験は「金融資産運用設計」「不動産運用設計」「ライフプランニング・リタイアメントプランニング」「タックスプランニング」「リスクと保険」「相続・事業承継設計」という6科目で出題される。
過去のデータを分析し、難易度・合格ラインを把握することが重要だ。各科目の難易度を踏まえて、しっかりと対策方法を練っていこう。