証券アナリスト資格について調べていると、「意味ない」「転職に有利」「金融業界では取るべき」など、さまざまな意見が見つかります。
結論からいうと、証券アナリスト資格は、すべての人に必要な資格ではありません。独占業務がある資格ではなく、取得しただけで年収アップや転職成功が保証されるわけでもないためです。
一方で、運用、リサーチ、投資銀行、財務、IR、経営企画などの専門職を目指す人にとっては、金融・投資・企業分析の知識を体系的に学んだ証明になりやすく、キャリアの選択肢を広げる材料になります。
この記事では、証券アナリストが「意味ない」と言われる理由と、それでも取得する価値があるケースを、公式情報と転職市場での見られ方に基づいて解説します。
読み終える頃には、自分のキャリアにとって証券アナリスト資格を取るべきか、別のスキルを優先すべきか判断しやすくなるはずです。
証券アナリスト(CMA)とは|金融・投資の専門知識を証明する協会認定資格
証券アナリスト資格として一般的に知られているのは、日本証券アナリスト協会が認定する「日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)」です。
CMAは、同協会の定める講座を受講し、試験に合格し、一定の要件を満たすことで認定される資格です。金融・投資のプロフェッショナルに必要な投資価値の分析・評価、企業財務、経済、資本市場、金融商品、ファイナンス理論などを体系的に学べます。
学習分野は、主に以下の通りです。
- 証券分析とポートフォリオ・マネジメント
- 財務分析
- コーポレート・ファイナンス
- 市場と経済の分析
- 数量分析と確率・統計
- 職業倫理・行為基準
日本証券アナリスト協会の会員名簿では、2026年5月8日現在、個人会員は29,760名、検定会員は29,703名と公表されています。金融業界では一定の認知度がある資格といえるでしょう。
ただし、CMAの称号を使うには、単に試験に合格するだけでは足りません。検定会員として入会するには、第2次試験合格に加えて、証券分析業務の実務経験を3年以上有することなどの条件があります。
そのため、証券アナリスト資格を検討する際は、「試験に合格する価値」だけでなく、「自分の業務経験や今後のキャリアと結びつくか」まで確認することが大切です。
証券アナリストは意味ないと言われる3つの理由
証券アナリスト資格について「意味ない」と言われる背景には、感情的な批判だけでなく、現実的な理由もあります。
特に、次の3点は取得前に理解しておきたいポイントです。
理由1:独占業務がない
証券アナリスト資格が「意味ない」と言われる大きな理由は、独占業務がないことです。
独占業務とは、その資格を持つ人でなければ法律上行えない業務を指します。たとえば、弁護士の法律事務や、公認会計士の監査業務などが代表例です。
一方で、証券アナリストの仕事そのものは、CMAを持っていなければ一切できないというものではありません。厚生労働省の職業情報提供サイトでも、証券アナリストへの入職にあたって「特に資格は必要とされない」と説明されています。
つまり、企業分析、市場調査、ポートフォリオ分析、投資判断の補助といった業務は、資格がなくても担当できる可能性があります。
この点だけを見れば、「資格を取らなくても仕事はできるのだから、証券アナリスト資格は意味がないのではないか」と感じるのは自然です。
理由2:取得しても年収アップが保証されない
証券アナリスト資格を取得しても、すぐに年収が上がるとは限りません。
企業によっては、資格取得支援制度や受験料補助、合格祝金を用意している場合があります。たとえば、日本証券金融株式会社では、証券アナリスト(CMA)などの資格について受験料補助や一部資格の合格祝金を案内しています。
ただし、こうした制度は企業ごとの方針です。すべての会社で資格手当や合格一時金があるわけではありません。
また、転職市場でも「CMAを持っているから必ず高年収で採用される」という単純な仕組みではありません。実務経験、担当業務、成果、英語力、マネジメント経験、年齢、転職先のポジションなども大きく影響します。
そのため、資格だけで収入アップを期待している人にとっては、費用対効果が見えにくく、「意味ない」と感じやすいでしょう。
理由3:講座・試験・維持費用がかかる
証券アナリスト資格は、取得までに講座受講料と試験料がかかります。さらに、CMAとして検定会員に入会する場合は、入会金や年会費も必要です。
2026年度以降に受講・受験する場合の主な費用は以下の通りです。
| 項目 | 費用 |
|---|---|
| 第1次レベル講座 | 会員受講者:63,000円 一般受講者:69,000円 |
| 第1次試験 | 科目Ⅰ:7,400円 科目Ⅱ:3,700円 科目Ⅲ:3,700円 ※支払いごとに手数料200円 |
| 第2次レベル講座 | 66,000円 ※2026年度から適用 |
| 第2次試験 | 17,500円 ※別途手数料200円 |
| 個人会員入会金 | 10,000円 |
| 個人会員年会費 | 18,000円 ※満65歳以上は12,000円 |
一般受講者として第1次レベル講座から始め、第1次試験3科目、第2次レベル講座、第2次試験まで一度で進む場合、講座・試験料だけでも16万円台になります。さらに検定会員として入会する場合は、入会金と年会費も加わります。
また、2025年CMA第1次秋試験では、3科目の単純合計で受験者総数4,725名、合格者総数2,492名、合格者の比率は52.7%でした。2025年CMA第2次試験は、受験者数2,522名、合格者1,121名、合格率44.4%です。
合格率だけを見ると極端に低い試験ではありませんが、講座の受講、試験対策、費用負担が必要です。今後のキャリアと結びつかないまま取得すると、「思ったほど役に立たなかった」と感じる可能性があります。
それでも証券アナリスト資格に意味があるケース
ここまで見ると、証券アナリスト資格は「取っても意味がない」と感じるかもしれません。
しかし、資格の価値はキャリアプランによって大きく変わります。特に、金融専門職や企業分析に関わる仕事を目指す人にとっては、CMAの学習内容や資格称号が評価材料になることがあります。
専門部署への異動・転職で知識の証明になる
証券アナリスト資格が活きやすいのは、金融・投資・企業分析に関わる専門性の高い部署です。
たとえば、以下のような職種・部署では、CMAで学ぶ内容と実務の関連性が高くなります。
- リサーチアナリスト
- ファンドマネージャー
- ストラテジスト
- クレジットアナリスト
- 投資銀行部門
- 事業会社のIR担当
- 事業会社の財務・経営企画
- M&A・コーポレートファイナンス関連職
厚生労働省の職業情報提供サイトでも、証券アナリストの勤務先として、証券会社や銀行などの金融機関に加え、年金基金のような組織、一般事業会社の財務・IR部門で働く人も増えていると説明されています。
求人や社内公募では、証券アナリスト資格が必須ではなくても、歓迎要件や評価材料になることがあります。特に、同じような職歴の候補者が複数いる場合、資格があることで「財務分析や証券分析の基礎を体系的に学んでいる」と伝わりやすくなるでしょう。
資格だけで選考が決まるわけではありませんが、専門職への異動・転職を目指す人にとっては、機会損失を減らす材料になります。
実務で使う分析知識を体系的に学べる
証券アナリスト資格の価値は、資格名そのものだけではありません。学習過程で、金融専門職に必要な知識を体系的に整理できる点にもあります。
金融機関で働いていると、日々の業務で商品知識や市況感は身につきます。一方で、企業価値評価、ポートフォリオ理論、コーポレート・ファイナンス、数量分析、職業倫理まで体系的に学ぶ機会は限られます。
CMAの学習範囲は、単なる試験対策にとどまりません。財務諸表を読み、企業の収益性や安全性を分析し、市場環境やリスクを踏まえて投資判断を考える力につながります。
そのため、金融商品の販売経験はあるものの、より専門的な分析・運用・企画領域へ進みたい人にとっては、知識の土台を作る手段として意味があります。
学習意欲や継続力のシグナルになる
証券アナリスト資格は、金融知識だけでなく、学習意欲や継続力のシグナルにもなります。
CMAを取得するには、第1次レベル講座、第1次試験、第2次レベル講座、第2次試験を段階的に進める必要があります。さらに、検定会員としてCMA称号を使用するには、実務経験要件も満たす必要があります。
多忙な金融機関勤務の中で学習を継続し、試験に合格した事実は、採用企業や社内の評価者に対して「専門性を高めるために継続して努力できる人」という印象を与えやすいでしょう。
もちろん、資格だけで実務能力が証明されるわけではありません。面接や社内評価では、資格で学んだ知識をどのように業務に活かしたか、今後どの職種で活かしたいかまで説明できることが重要です。
証券アナリスト資格を取得すべき人・優先度が低い人
証券アナリスト資格は、全員が取るべき資格ではありません。大切なのは、自分のキャリアプランと資格の学習内容が合っているかを見極めることです。
判断に迷う場合は、以下の表を参考にしてください。
| 判断 | 該当する人 |
|---|---|
| 取得を検討したい人 | 運用会社、リサーチ、投資銀行、IR、財務、経営企画、M&A関連職を目指している人 |
| 取得を検討したい人 | 金融機関で営業経験があり、分析・企画・運用寄りのキャリアへ移りたい人 |
| 取得を検討したい人 | 社内公募や求人票で「証券アナリスト」「CMA」が要件・歓迎条件になっている人 |
| 取得を検討したい人 | IFAやウェルスマネジメント領域で、顧客への提案力を高めたい人 |
| 優先度が低い人 | 金融専門職を目指しておらず、現職でも資格評価がほとんどない人 |
| 優先度が低い人 | 短期間で転職したい人。試験対策より職務経歴書や面接対策を優先すべき場合がある |
| 優先度が低い人 | 会計実務、税務、IT、英語など、応募先で別スキルの優先度が高い人 |
たとえば、資産運用会社のアナリストやファンドマネージャー、投資銀行部門、事業会社のIR・経営企画を目指すなら、証券アナリスト資格は有力な武器になります。
一方で、金融機関のリテール営業を続けるだけであれば、CMAよりも外務員資格、FP、保険、相続、不動産、法人開拓など、実務に直結するスキルの方が優先される場合もあります。
また、異業種の経理や会計職を目指すなら、証券アナリストよりも簿記や会計実務の経験が評価されやすいこともあります。
資格取得を目的化せず、「どの職種に進みたいのか」「その職種でCMAがどの程度評価されるのか」を先に確認しましょう。
証券アナリスト資格を取る前に確認したい3つのこと
証券アナリスト資格を取得するか迷っている場合は、受講を申し込む前に次の3点を確認しておくと失敗しにくくなります。
1. 目指す求人や社内公募で評価されるか
まず確認すべきなのは、目指す職種の求人票や社内公募で、証券アナリスト資格がどのように扱われているかです。
必須要件に入っている場合は、取得や少なくとも第1次試験合格を目指す価値が高いでしょう。歓迎要件に入っている場合も、同じような経験を持つ候補者との差別化につながる可能性があります。
一方で、目指す求人にCMAの記載がほとんどなく、別のスキルが重視されている場合は、優先順位を見直した方がよいかもしれません。
2. 費用と学習時間を回収できるキャリアか
証券アナリスト資格は、費用も時間もかかります。
講座・試験料に加えて、検定会員として入会する場合は入会金や年会費も必要です。さらに、社会人として働きながら学習時間を確保する必要があります。
そのため、取得後に活かしたい職種や業務が明確でない場合は、先にキャリアの方向性を整理しましょう。「資格を取れば何か変わるはず」と考えて始めると、学習途中で目的を見失いやすくなります。
3. 資格以外に優先すべき経験がないか
転職や社内異動では、資格よりも実務経験が重視されることがあります。
たとえば、IRを目指すなら決算説明資料の作成経験や投資家対応、経営企画を目指すなら予算管理や中期経営計画の策定経験、投資銀行を目指すならM&Aやファイナンス関連の実務経験が評価されやすいでしょう。
資格学習は有効ですが、実務経験を積む機会を逃してまで優先すべきとは限りません。現在の職場で近い業務に関われるなら、資格学習と並行して実務経験を作ることも検討しましょう。
証券アナリストの価値はキャリアプランで決まる
証券アナリスト資格は、単純に「意味がある」「意味ない」と断言できる資格ではありません。
独占業務はなく、資格を取得しただけで年収アップが保証されるわけではありません。講座・試験料もかかるため、キャリアと結びつかないまま取得すると、費用対効果が低いと感じる可能性があります。
一方で、運用、リサーチ、投資銀行、IR、財務、経営企画、M&Aなどの専門職を目指す人にとっては、金融・投資・企業分析の知識を体系的に学んだ証明になります。求人や社内公募で評価材料になる場合もあり、キャリアの選択肢を広げるための武器になり得ます。
取得すべきか迷う場合は、次のように考えるとよいでしょう。
- 金融専門職やIR・財務・経営企画を目指すなら、取得を前向きに検討する
- 現職や希望求人でCMAが評価されるなら、学習を始める価値がある
- 短期転職や異業種転職が目的なら、資格より職務経歴書・面接対策・実務経験を優先する場合もある
もし、ご自身のキャリアプランと照らし合わせて、この資格が有効な武器になるのか、あるいは別の経験やスキルを磨くべきなのか判断したい場合は、一度専門家と話してみるのも一つの方法です。
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出典
日本証券アナリスト協会「CMAとは」
日本証券アナリスト協会「CMA第1次レベル講座を知る・申込む(講座の概要)」
日本証券アナリスト協会「CMA1次試験に備える・申込む(直近の試験および申込み)」
日本証券アナリスト協会「CMA2次レベル講座を知る・申込む(制度内容、受講料)」
日本証券アナリスト協会「CMA2次試験に備える・申込む(直近の試験および申込み)」(公開日:2026年3月13日)
日本証券アナリスト協会「CMA1次レベル試験データ」(公開日:2025年11月13日)
日本証券アナリスト協会「CMA2次レベル試験データ」(公開日:2025年8月20日)
日本証券アナリスト協会「協会概要:会員名簿」
日本証券アナリスト協会「個人会員の入会手続き」
厚生労働省 job tag「証券アナリスト」
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