年金や保険、住宅ローンなどに関する知識を習得できる「FP資格」には、1級〜3級までのレベルが存在している。一部の金融機関ではFP2級の取得を推奨しているケースもあり、銀行や証券会社に勤めている人はぜひ取得を目指したい資格だ。
しかし「FP2級と3級の違いとは」「2級まで取得する必要があるのか」といった疑問を持っている人もいるだろう。
この記事では、FP2級と3級の試験内容や難易度の違い、「FP2級の取得を目指すべきか」という点を解説していく。
FP試験を受験しようと考えている人は、ぜひ本記事を参考にして勉強をスタートしよう。
FP2級と3級の試験内容の違い
まず、FP2級と3級の試験内容の違いについてみていこう。
出題形式
FP2級と3級の試験は、以下のような出題形式で行われる。
出題形式 | 問題数 | 合格点 | |
---|---|---|---|
3級学科 | ○×、3答択一式(マークシート) | 60問 | 36点以上(60点満点) |
3級実技 | マークシート | 20問 | 60点以上(100点満点) |
2級学科 | 4答択一式(マークシート) | 60問 | 36点以上(60点満点) |
2級実技 | 記述式 | 40問 | 60点以上(100点満点) |
いずれの試験も6割以上の得点で合格になる点は共通しているが、問題数や出題形式に違いがある。3級の学科試験は○×問題や3答択一式で点数を取りやすい一方で、2級の学科試験は4答択一式で3級よりも点数が取りにくい。
実技試験も3級はマークシートだが、2級は記述式となるため、難易度が上昇すると言えるだろう。
試験科目
FP2級と3級では、試験科目にも以下のような違いがある。
科目 | 2級 | 3級 |
---|---|---|
ライフプランニングと資金計画 | ・ファイナンシャル・プランニングと倫理 ・ファイナンシャル・プランニングと関連法規 ・ライフプランニングの考え方・手法 ・社会保険 ・公的年金 ・企業年金・個人年金等 ・年金と税金 ・ライフプラン策定上の資金計画 ・中小法人の資金計画 ・ローンとカード ・ライフプランニングと資金計画の最新の動向 | ・ファイナンシャル・プランニングと倫理 ・ファイナンシャル・プランニングと関連法規 ・ライフプランニングの考え方・手法 ・社会保険 ・公的年金 ・企業年金・個人年金等 ・年金と税金 ・ライフプラン策定上の資金計画 ・ローンとカード ・ライフプランニングと資金計画の最新の動向 |
リスク管理 | ・リスクマネジメント ・保険制度全般 ・生命保険 ・損害保険 ・第三分野の保険 ・リスク管理と保険 ・リスク管理の最新の動向 | ・リスクマネジメント ・保険制度全般 ・生命保険 ・損害保険 ・第三分野の保険 ・リスク管理と保険 ・リスク管理の最新の動向 |
金融資産運用 | ・マーケット環境の理解 ・預貯金・金融類似商品等 ・投資信託 ・債券投資 ・株式投資 ・外貨建商品 ・保険商品 ・金融派生商品 ・ポートフォリオ運用 ・金融商品と税金 ・セーフティネット ・関連法規 ・金融資産運用の最新の動向 | ・マーケット環境の理解 ・預貯金・金融類似商品等 ・投資信託 ・債券投資 ・株式投資 ・外貨建商品 ・保険商品 ・金融派生商品 ・ポートフォリオ運用 ・金融商品と税金 ・セーフティネット ・関連法規 ・金融資産運用の最新の動向 |
タックスプランニング | ・わが国の税制 ・所得税の仕組み ・各種所得の内容 ・損益通算 ・所得控除 ・税額控除 ・所得税の申告と納付 ・個人住民税 ・個人事業税 ・法人税 ・法人住民税 ・法人事業税 ・消費税 ・会社、役員間及び会社間の税務 ・決算書と法人税申告書 ・諸外国の税制度 ・タックスプランニングの最新の動向 | ・わが国の税制 ・所得税の仕組み ・各種所得の内容 ・損益通算 ・所得控除 ・税額控除 ・所得税の申告と納付 ・個人住民税 ・個人事業税 ・タックスプランニングの最新の動向 |
不動産 | ・不動産の見方 ・不動産の取引 ・不動産に関する法令上の規制 ・不動産の取得・保有に係る税金 ・不動産の譲渡に係る税金 ・不動産の賃貸 ・不動産の有効活用 ・不動産の証券化 ・不動産の最新の動向 | ・不動産の見方 ・不動産の取引 ・不動産に関する法令上の規制 ・不動産の取得・保有に係る税金 ・不動産の譲渡に係る税金 ・不動産の賃貸 ・不動産の有効活用 ・不動産の証券化 ・不動産の最新の動向 |
相続・事業承継 | ・贈与と法律 ・贈与と税金 ・相続と法律 ・相続と税金 ・相続財産の評価(不動産以外) ・相続財産の評価(不動産) ・不動産の相続対策 ・相続と保険の活用 ・事業承継対策 ・事業と経営 ・相続・事業承継の最新の動向 | ・贈与と法律 ・贈与と税金 ・相続と法律 ・相続と税金 ・相続財産の評価(不動産以外) ・相続財産の評価(不動産) ・不動産の相続対策 ・相続と保険の活用 ・相続・事業承継の最新の動向 |
ほとんどの部分で内容が被っているものの、2級の方が3級よりも試験科目が多いと分かる。
2級を目指す場合には、幅広い科目について学習を深めていこう。
受験資格
FP2級と3級は、受験資格にも違いがある。FP3級は「FP業務に従事している者または従事しようとしている者」に受験資格が与えられる。
しかし特別提出する書類などもないため、誰でも受験することが可能だ。
一方のFP2級は、以下のいずれかの受験資格に該当しなければならない。
受験資格 | 必要書類 |
---|---|
FP3級技能検定に合格 | 3級合格証書の合格番号を記入 |
FP業務に関する2年以上の実務経験 | 実務経験年数を記入 |
日本FP協会認定のAFP認定研修を修了 | AFP認定研修の修了証書の写しを添付 |
金融渉外技能審査3級に合格 | 合格した等級・コース名と受験した年月を記入 |
FP2級は誰でも受験できるわけではなく、一定の受験資格が必要になることを頭に入れておこう。
FP2級と3級の難易度の違い
FP2級と3級の難易度による違いを把握するために、過去3回分の試験の合格率をチェックしてみよう。
2級 | 3級 | |
---|---|---|
2022年1月学科試験 | 41.51% | 87.01% |
2022年1月実技試験 | 56.33% | 90.75% |
2021年9月学科試験 | 50.56% | 84.69% |
2021年9月実技試験 | 60.26% | 80.50% |
2021年5月学科試験 | 55.61% | 83.25% |
2021年5月実技試験 | 66.67% | 76.65% |
このように比較してみると、2級と3級の合格率には開きがある。3級は8割近い合格率となっているが、2級は5割前後の合格率となっている。3級と比べると2級の難易度が高いと言えるだろう。
また、それぞれの取得に必要と言われる勉強時間も比較してみよう。3級の合格にはおよそ100〜150時間ほどの勉強が必要と言われている。
一方で2級の合格には150〜300時間前後の勉強時間が必要とされており、3級の2倍近い勉強量が必要だ。
受験の際には、あらかじめ難易度と必要な勉強時間を把握して、学習スケジュールを逆算していこう。
FP2級の取得は目指すべきか
ここまでFP2級と3級の違いについて見てきた。そんな中で気になるのは、「2級の取得を目指すべきか」という点だろう。もし金融機関に勤めているのであれば、FP2級まで取得を目指すことをおすすめする。
なぜなら、FP3級だけでは入門的な知識しか習得できず、業務に活かすための知識を身に付けるには最低でも2級レベルが必要となるためだ。自分の仕事に直結した知識を身に付けるためにも、FP2級の取得を目指すべきであると言えるだろう。
また、一部の金融機関では昇進の条件にFP2級の取得を設けているケースもある。キャリアアップを目指すのであれば、FP2級を目指して知識を身に付けていこう。
一方で、「FPの知識を家計に活かしたい」という程度であれば、3級の学習範囲でも十分身に付けられる。税金や保険、住宅ローンなどの基本的な知識は3級でも学べるため、2級まで取得する必要はないだろう。ただし、2級を取得することで副業や転職に活かすことができたり、より深い知識を学習できたりというメリットがある。難易度や勉強時間とFP2級のメリットを天秤にかけ、取得する理由があるかを考えることが大切だ。
まとめ
FP2級と3級では、出題形式や試験科目、受験資格という点で内容が異なっている。合格率や難易度にも違いがあるため、受験前に確認しておくことが重要だ。難易度や必要な勉強時間を踏まえて、2級と3級のどちらの取得を目指すべきかしっかりと検討しよう。