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信用金庫からの転職完全ガイド【2025年9月28日最新】評価されるスキルとキャリア選択肢とは?

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松岡 隼士

アドバイザーナビ株式会社 代表取締役

野村證券で富裕層向けの資産承継・M&A業務を経て、2019年にアドバイザーナビ株式会社を共同創業。IFA/金融人材に強みを持つ転職支援・コンサルを牽引。

この記事でわかること
  • 信用金庫からの転職で考えられる6つの主要なキャリアパスとその詳細
  • 転職市場で高く評価される信用金庫経験者の3つのコアスキルと、その具体的なアピール方法
  • 失敗しない企業選びのポイントと、自己分析から内定獲得までを網羅した具体的な転職活動の6ステップ

「毎月のノルマ達成が厳しい」「このまま信用金庫にいても、将来性はあるのだろうか」「給与がなかなか上がらず、年収が頭打ちになっている」。

信用金庫で働く中で、このような悩みを抱えることは決して珍しいことではない。地域経済を支えるという重要な役割に誇りを持ちつつも、自身のキャリアパスや働き方について深く考える瞬間は、多くの職員に訪れる。

実際に、日本の労働市場では転職者数が増加傾向にあり、2024年には平均で331万人が転職するなど、キャリアを見直す動きは活発化している [1]。これは、終身雇用という価値観が変化し、個人がより主体的にキャリアを形成する時代になったことの表れである。特に、国内企業の多くがDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する中で、その担い手となる人材不足は深刻化しており、新しいスキルを求める企業とキャリアアップを目指す個人の双方にとって、今は大きな変化の機会となっている [2]。

その中で、信用金庫で培った経験やスキルは、あなたが思う以上に多くの業界や職種で高く評価される可能性があるのだ。これまで地域の中小企業と深く向き合い、財務状況を分析し、ときには経営者の相談に乗ってきた経験は、形を変えれば他のフィールドでも必ず活きる普遍的なビジネススキルなのである。この記事でわかること


目次

信用金庫から転職する選択肢にはどんなものがあるか?

信用金庫からの転職には、これまでの経験を直接活かせる金融業界内でのキャリアチェンジから、全く異なる業界への挑戦まで、多様な選択肢が存在する。まずは、どのようなルートがあるのか、その全体像を俯瞰してみよう。以下に、主要な転職ルートの早見表を示す。これは、主に20代後半から30代前半のキャリアを想定したものであるが、各選択肢の特性を理解することで、あらゆる年代のキャリアプランニングの参考となるだろう。

信用金庫からの転職ルート早見表

職種向いている人必要スキル最低ライン年収レンジ(相場)残業傾向転勤有無成長度
金融業界内
(地銀/信託/ノンバンク)
金融の専門性を深めたい人融資・渉外経験3年以上500-750万円やや多め多い傾向
事業会社の管理部門
(経理/財務など)
安定した環境で専門性を活かしたい人財務分析経験、簿記3級相当の知識450-700万円少なめ少ない傾向
事業会社の営業
(無形商材/SaaSなど)
顧客との関係構築や提案に自信がある人法人営業経験、目標達成実績基本給450-700万円 OTEで900万円超も普通職種による
IT・デジタル
(情報システム/CSなど)
新しい技術や成長業界に興味がある人基本的なITリテラシー、学習意欲420-700万円普通少ない傾向
公務員・非営利団体地域貢献を続けたい、安定性を重視する人各試験の応募要件を満たす若手層目安:400-600万円少なめ自治体内異動あり
ベンチャー
(事業開発/IPO準備)
裁量権を持って事業成長に貢献したい人課題発見力、行動力、財務知識基本給500-800万円前後 +SOや賞与多め少ない傾向

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  • *注記(年収の見方):**本表の年収は参考値である。大手人材サービスデータ等の公開求人の提示額を参照し作成した [3]。地域・企業規模・残業時間・評価制度・インセンティブ等により大きく変動する。**OTE(On-Target Earnings)**は目標達成時の想定年収を示す。公務員の年収は、総務省の統計(令和5年)から平均年間給与を算出すると約660〜670万円水準となるが、本表では若手層の目安を記載している [8]。

各選択肢の簡潔な比較

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選択肢良い点悪い点
金融業界内経験の親和性が高く、即戦力として活躍しやすい。ノルマや転勤といった信用金庫と共通の課題が残る場合がある。
事業会社の管理部門ワークライフバランスを改善しやすく、定量的な成果が評価されやすい。会計やITに関する基礎知識の学習が必要となる。
事業会社の営業培った提案力や関係構築スキルを直接活かせる。KPI管理が厳格で、成果に対するプレッシャーが強い環境もある。
IT・デジタル業界の将来性が高く、未経験からの挑戦も可能である。継続的な学習が不可欠となる。
公務員・非営利団体ノルマや転勤の負荷が低く、安定して地域貢献を続けられる。給与テーブルが固定的で、大幅な年収アップは期待しにくい。
ベンチャー裁量権が大きく、事業とともに自身も急成長できる。事業の不確実性が高く、業務範囲が多岐にわたることも多い。

金融業界内(地銀/信託/ノンバンク)

信用金庫での経験と最も親和性が高いのが、同じ金融業界への転職だ。地方銀行や信託銀行、リース・クレジットカードなどのノンバンクが主な候補となる。最大のメリットは、これまでの知識やスキルがほぼそのまま通用するため、即戦力として評価されやすい点だ。一方で、信用金庫で抱えていた悩み、例えば営業ノルマの厳しさや年功序列の組織風土、転勤といった制度が、転職先でも同様に存在する可能性が高い。年収相場は、職種別平均(営業-銀行515万円、融資/契約審査544万円)などを参考にすると、500万円から750万円程度の範囲が目安となる [3]。

事業会社の管理部門(経理/財務/経営企画/与信)

事業会社、つまり一般的なメーカーや商社、サービス業などの企業で、お金の流れを管理するバックオフィス部門も有力な転職先だ。営業ノルマから解放され、ワークライフバランスを改善しやすい傾向にある。特に財務部門では、金融機関側の論理を理解していることが大きな強みとなる。

経験の橋渡し

信用金庫での経験事業会社での対応業務
与信審査・財務分析経理・財務・与信管理 (取引先の信用リスク評価、自社の財務健全性分析)
渉外・融資提案財務・経営企画 (金融機関との資金調達交渉、事業計画の策定と予算管理)

年収相場は、dodaの最新集計では、企画/管理系の平均は566万円、その内訳として財務(606万円)や経理(533万円)などがあり(職種や企業規模で変動)、これを参考に450万円から700万円程度が一般的である [3]。

事業会社の営業(無形商材/SaaS/不動産)

顧客との関係構築や提案力に自信があるなら、事業会社の営業職はポテンシャルを最大限に活かせるフィールドだ。成果がインセンティブとして給与に直結する企業も多く、実力次第で信用金庫時代を大きく上回る年収を得ることも可能だ。一方で、KPI(重要業績評価指標)による管理が非常に厳格な場合がある。

KPIの翻訳

信用金庫での指標事業会社での対応指標
融資実行件数・預金残高新規契約獲得数・受注額
融資利回り・手数料収入売上総利益(粗利)・利益率
担当顧客の継続的な取引顧客継続率・LTV(顧客生涯価値)

IT・デジタル(情報システム/CS/フィンテック)

IT人材は構造的な不足が見込まれており、高位シナリオでは2030年に最大約79万人不足すると試算されている(2019年時点)[4]。国の最新調査(令和6年)によれば、企業のテレワーク導入率は情報通信業が最も高水準であり [5]、また個人側の調査でも雇用型テレワーカーの割合が24.6%となっている [6]。プログラミングスキルが必須ではない「非コード職」(カスタマーサクセス、情報システムなど)も多く存在する。年収相場は、ITエンジニアの技術系平均(462万円)や、近縁職種であるシステム開発/運用(489万円)、IT戦略/システム企画(606万円)などを参考に、420万円から700万円が目安となる [3]。

公務員・非営利

安定性や、営利にとらわれない形での地域貢献を追求したい場合、公務員や非営利団体への転職が選択肢となる。年齢要件は自治体・試験区分で異なり、近年は上限の緩和・撤廃や経験者枠(〜59歳等)も広がっている。国家一般職で「教養区分」が新設されるなど制度変更もあるため、人事院や各自治体の最新の受験案内を必ず確認することが重要である [7]。

ベンチャー(事業開発/IPO準備)

急成長する環境で、自身の裁量を最大限に発揮したいという志向があるなら、ベンチャー企業は刺激的な挑戦の場となる。事業の不確実性が高く、自ら課題を見つけて解決していく主体性が強く求められる。年収はレンジの幅が非常に大きく、基本給500万円から800万円前後に加え、ストックオプションや賞与で大きく変動する。


信用金庫経験者の強み 「評価される3つのスキル」

転職活動において最も重要なのは、自身の経験を客観的に評価し、それが転職先でどのように貢献できるかを言語化することだ。信用金庫で培ったスキルの中から、特に市場価値の高い「専門スキル」「対人スキル」「推進力」の3つについて、具体的なアピール方法を解説する。

専門スキル(融資審査・財務分析・与信管理)

これは信用金庫職員の最も強力な武器であり、多くの企業が求めるスキルだ。単に「財務分析ができます」と伝えるのではなく、そのスキルをどのように活用し、どのような成果を出したかを具体的に示すことが重要である。

  • 成果の見せ方テンプレート
    • 案件背景(Situation):どのような業種で、どのような経営課題を抱えた企業を担当したか。
    • 判断根拠(Task & Action):決算書のどの指標に着目したか。それに加え、どのような定性情報を判断材料としたか。
    • 結果(Result):融資実行後、企業の業績はどう変化したか。具体的な数値で示す。
    • 学びと再現性:この経験から何を学び、転職先でどのように活かせるかを語る。

対人スキル(法人折衝・顧客関係構築)

BtoBのビジネスにおいて、顧客との信頼関係はすべての土台となる。この抽象的なスキルを、再現性のある行動として示すことが鍵となる。

  • 関係構築のプロセス化
    • 初期接点:どのようにして新規の経営者とのアポイントを獲得したか。
    • 信頼形成:どのようにして事業のパートナーとしての信頼を勝ち得たか。
    • 再提案・長期関係維持:一度築いた関係をどのように維持・発展させたか。

推進力(DX/業務改善)

大きなプロジェクトでなくても、日々の業務の中で「もっとこうすれば効率的になるのではないか」と考え、実行した経験は、立派な推進力のアピール材料となる。

業務改善のBefore/After(例)

改善項目改善前(Before)改善後(After)改善効果(数値)
稟議書の電子化紙で回覧、承認に平均3営業日ワークフローシステムを導入承認リードタイムを66%短縮
顧客情報の管理各担当者が個別ファイルで管理共有データベースを導入照会時間を90%短縮
定例報告資料の作成手作業でデータを集計・加工マクロを導入し自動化資料作成時間を87%短縮

信用金庫からの転職の失敗を防ぐ 企業選び3つのポイント

転職は大きな決断であり、入社後のミスマッチは避けたいものだ。ここでは、後悔しない企業選びのための3つの重要なポイントを解説する。

業界×職種の組み合わせで可能性を探る

まずは、自身の市場価値を客観的に把握し、現実的な選択肢を見つけることが重要だ。年齢によって企業から期待される役割は変化するため、キャリアのステージに応じた戦略が必要となる。

年齢×職種×難易度マップ(一般例)

年代挑戦しやすい(◎)経験・学習次第(○)専門性が問われる(△)
20代後半事業会社営業、IT非コード職、ベンチャー事業会社管理部門、金融業界内M&A・コンサル、IT専門職
30代前半金融業界内、事業会社営業事業会社管理部門、IT非コード職M&A・コンサル、マネジメント職
30代後半金融業界内(専門職)、事業会社管理部門事業会社営業(即戦力)、公務員未経験IT職、ベンチャー(幹部候補)
40代以降事業会社管理部門(マネジメント)、公的機関金融業界内(管理職)、専門コンサル未経験分野へのポテンシャル採用
  • *注記:**本マップは一般例であり、求人要件と自身のスキル差の可視化が最優先である。

自身のスキルと求人要件の差を把握する

気になる求人を見つけたら、その企業の「求める人物像」と自分を客観的に照らし合わせる作業が不可欠だ。

求人要件とのマッチ度分析

| 求人要件の例

(事業会社の財務職)分類差分を埋めるためのアクション
金融機関での法人営業経験3年以上できる職務経歴書で実績を具体的に記述
財務三表の読解力できる融資審査での分析事例を準備
簿記2級程度の会計知識学べばできる14日学習計画で基礎を習得
資金調達の実務経験学べばできる融資提案の経験を資金調達の視点で整理
英語力(TOEIC 700点以上)できない長期的な学習目標とする

将来性で比較する(年収・成長機会・転勤)

内定を複数獲得した場合、あるいは応募先を絞り込む際には、目先の条件だけでなく、長期的な視点で企業を比較検討することが重要だ。

応募先比較表(例)

比較項目A社(大手事業会社)B社(ベンチャー企業)
年収安定しているが、昇給率は緩やか現状は低いが、成果次第で大幅アップの可能性
成長機会研修制度が充実、専門性を深められる裁量が大きく、未経験の業務にも挑戦できる
スキル蓄積特定分野の専門スキル幅広い業務スキル、経営に近い視点
ワークライフバランス安定、残業は少ない傾向不安定、時期によっては激務になることも
転勤の有無全国転勤の可能性あり原則なし

信用金庫から転職する際の進め方 6つのステップ

転職活動は何から手をつければよいか分からず、不安に思うことも多いだろう。ここでは、自己分析から内定獲得まで、初心者が迷わないように具体的な6つのステップに分けて、それぞれの目的やポイントを詳しく解説する。

ステップ目的
STEP1 自己分析とキャリアの棚卸し自身の強みと転職の軸を明確にすること。
STEP2 企業研究と求人の見極め自身の可能性を広げ、応募する企業の解像度を上げること。
STEP3 職務経歴書の作成と応募採用担当者に「この人に会ってみたい」と思わせること。
STEP4 面接対策と選考プロセス職務経歴書の内容を補足し、人柄やポテンシャルを伝えること。
STEP5 内定獲得と条件交渉入社後のミスマッチを防ぎ、納得できる条件で転職を成功させること。
STEP6 転職エージェントの賢い使い方転職市場のプロを味方につけ、活動を効率的に進めること。

STEP1 自己分析とキャリアの棚卸し

  • 目的:自身の経験を整理し、ポータブルスキル(持ち運び可能なスキル)を特定し、転職の軸を明確にすること。これが全ての活動の土台となる。
  • やること
    1. キャリアの書き出し:入庫から現在まで、時系列で所属部署、役職、業務内容を書き出す。
    2. 実績の深掘り:最も成果を上げたと感じる融資案件や業務改善事例を3件選び、それぞれの背景、課題、自身の行動、結果を具体的に記述する(STARメソッド)。
    3. 強みと価値観の言語化:書き出した経験から、自身の強み(例:財務分析力、関係構築力)は何か、仕事で何を大切にしたいか(Will-Can-Must)を言語化する。
  • ワンポイント:自分一人で考えると視野が狭まりがちである。信頼できる同僚や上司にフィードバックを求めたり、自己分析ツール(例:ストレングスファインダー)を活用したりするのも有効な手段である。
  • 確認事項:最終的に、これまでの経験と強みをまとめた400字程度の職務要約を作成する。これが職務経歴書の骨子であり、面接での自己紹介のベースとなる。

STEP2 企業研究と求人の見極め

  • 目的:自身の可能性を広げ、応募先候補の解像度を上げること。これにより、入社後のミスマッチを防ぐ。
  • やること
    1. 幅広く情報収集:転職サイトに登録し、最初は視野を狭めずに「3業界×3職種」のように複数の軸で求人を検索してみる。
    2. 求人の比較検討:気になる求人を10件ほど保存し、仕事内容や応募要件の共通項、相違点を抽出する。
    3. 一次情報の確認:企業の公式サイト、プレスリリース、IR情報(上場企業の場合)に目を通し、事業の現状と今後の方向性を把握する。
  • ワンポイント:採用ブログや社員インタビューは、企業のカルチャーや働く人の雰囲気を知るための貴重な情報源である。情報の更新日を確認し、古い情報に惑わされないように注意する。
  • 確認事項:応募候補を3〜5社に絞り込み、それぞれの企業比較表(事業内容、求めるスキル、働き方、企業文化など)を1枚作成する。

STEP3 職務経歴書の作成と応募

  • 目的:採用担当者に「この人に会ってみたい」と思わせること。自身の経験とスキルが、応募先でどう貢献できるかを論理的に伝えるための重要なプレゼンテーション資料である。
  • やること
    1. 職務要約:STEP1で作成した400字の要約を冒頭に配置し、職務経歴のダイジェストとして読ませる。
    2. 職務経歴:担当業務ごとに、具体的な業務内容と実績を記述する。実績は可能な限り数値化する(例:担当先の融資残高を前年比110%に伸長)。
    3. 実績の構造化:実績の記述にはSTARメソッド(Situation:状況、Task:課題、Action:行動、Result:結果)を用いると、論理的で分かりやすくなる。
  • ワンポイント:提出する企業ごとに内容をカスタマイズすることが不可欠である。「使い回し」の経歴書はすぐに見抜かれる。異業種の場合は、信用金庫での実績を相手に伝わる言葉に翻訳する(KPI翻訳)意識が重要である。
  • 確認事項:完成後、必ず第三者(特に転職エージェントのキャリアアドバイザー)に添削を依頼する。客観的な視点から、分かりにくい表現やアピール不足の点を指摘してもらえる。

STEP4 面接対策と選考プロセス

  • 目的:書類だけでは伝わらない人柄やコミュニケーション能力、論理的思考力を示すと共に、企業との相互理解を深めること。
  • やること
    1. 想定問答集の作成:「志望動機」「自己PR」「転職理由」「強み・弱み」といった頻出質問に対し、約20問の回答を準備し、声に出して話す練習をする。
    2. 退職理由の準備:ネガティブな表現は避け、「現職への感謝」と「新たな環境で挑戦したいこと」をセットで語れるように、前向きなストーリーに再構築する。
    3. 逆質問の準備:企業の事業内容や組織について深く調べた上で、5つ以上の質の高い質問を用意しておく。
  • ワンポイント:全ての回答は「結論ファースト」を心がける。最初に結論を述べ、次にその理由や具体例を話すことで、簡潔かつ論理的に意図が伝わる。1分程度で話す練習が効果的である。
  • 確認事項:転職エージェントなどが提供する模擬面接を最低1回は実施し、本番の緊張感に慣れると共に、話し方や表情について客観的なフィードバックを受ける。

STEP5 内定獲得と条件交渉

  • 目的:最終的な労働条件を確認し、双方が納得できる形で入社合意をすること。入社後の「こんなはずではなかった」を防ぐための最終関門である。
  • やること
    1. 労働条件通知書の確認:内定が出たら、必ず書面で労働条件を提示してもらう。給与(基本給、賞与、手当の内訳)、勤務地、業務内容、休日などを隅々まで確認する。
    2. 希望条件の整理:交渉に臨む前に、自分の中で譲れない最低ライン(Must)と、できれば実現したい希望ライン(Want)を具体的に数値化しておく。
  • ワンポイント:年収などの条件交渉は、感情的にならず、客観的な根拠(現在の年収、市場相場、他社の提示額など)に基づいて冷静に行う。転職エージェントを介して進めるのが一般的で、直接言いにくいこともスムーズに伝えてもらえる。
  • 確認事項:最終的に合意した内容は、必ず書面で再度提示してもらい、保管しておく。口約束は後のトラブルの原因となる。

STEP6 転職エージェントの賢い使い方

  • 目的:非公開求人へのアクセスや、客観的なキャリアアドバイス、選考対策サポートを得て、情報戦である転職活動を有利に進めること。
  • やること
    1. 複数登録:幅広い業界を扱う「総合型」と、金融やITなど特定の分野に強みを持つ「特化型」のエージェントに2〜3社登録し、それぞれのサービスの質や担当者との相性を見極める。
    2. 主体的なコミュニケーション:担当のキャリアアドバイザーに受け身にならず、自身の経歴や希望、考えを主体的に伝える。良い求人を待つだけでなく、気になる企業の内部情報(組織風土、離職率など)を積極的に質問する。
  • ワンポイント:キャリアアドバイザーはあくまで「パートナー」であり、最終的な意思決定は自身で行う。一人の意見を鵜呑みにせず、複数の情報源から得た情報を統合して判断することが重要である。
  • 確認事項:アドバイザーとの面談後は、紹介された求人や得られた情報をメモに残し、自身の考えを整理する時間を作る。

信用金庫から転職前に知るべき注意点とリスク対策

新しい環境への期待が膨らむ一方で、転職には必ずリスクが伴う。ここでは、事前に知っておくべき注意点と、それらに対する具体的な対策を提示する。

成果主義とKPIマネジメントへの理解

事業会社では、数値化されたKPIの達成度が評価の大部分を占める。KPIの種類とその背景にあるビジネスモデルを理解しておくことが不可欠だ。

異業種・異職種への転職では、どうしても専門知識が不足する。基礎知識をインプットすることを推奨する。

・主要SaaS企業のサービス概要とビジネスモデルを3社以上説明できるようにする
・志望企業のサービスを使い、架空の顧客への提案ストーリーを1本作る
・業界ニュースを追い、最新動向や競合情報をインプットする

スタートアップ転職の不確実性と見極め方

スタートアップに転職する場合、事業の不確実性というリスクを理解しておく必要がある。入社を決める前に、企業の健全性を自分なりに評価する「デューデリジェンス」を行うことが不可欠だ。

スタートアップのデューデリジェンス・チェックリスト

観点チェック項目
財務□ 直近の資金調達はいつ、いくらか?
□ 現在の資金で、あと何ヶ月事業を継続できるか?(ランウェイ)
事業□ 主要KPI(MRR、顧客数など)は、右肩上がりに成長しているか?
□ 解約率はどのくらいか?
□ 経営陣は、関連分野での成功体験や専門性を持っているか?
□ 面接で会った社員は、事業の未来を信じて、いきいきと働いているか?

よくある質問(FAQ)

Q1. 未経験でもITに転職できるか?

A. はい、可能性はあります。IT業界は深刻な人材不足に直面しており、特に20代の若手層に対してはポテンシャルを重視した採用が活発だからです。30代以降は、金融知識を活かせるフィンテック企業や、顧客折衝能力が求められる非コード職が現実的な選択肢となります。

Q2. 年収はどのくらい上がるか?

A. 一概には言えませんが、最新の調査では転職者の約6割が年収アップを実現しています [10]。ただし、年収は業界、職種、個人のスキルによって大きく左右されるため、現実的な期待値を設定することが重要です。

Q3. 転勤なしの選択はあるか?

A. はい、可能性は十分にあります。事業会社の本社部門や多くのIT企業、そして地方公務員(採用された自治体内での異動はあり)は、全国規模の転勤の可能性が低い傾向にあります。


まとめと次に行動すること

信用金庫からの転職は、大きな決断であり、不安も伴うだろう。しかし、あなたが地域社会と向き合う中で培ってきた財務分析能力、顧客との深い関係構築力、そして地道な業務改善を推進する力は、業界や職種が変わっても必ず通用する強力な武器である。

成功の鍵は、自身の強みを数値と具体例で語れるようにし、現実的なキャリアの選択肢を見極め、戦略的に転職活動を進めることだ。この記事を読んで、少しでも未来への希望が見えたなら、次は行動に移す番である。

まずは、今日から始められる以下の3つのアクションに着手してみよう。

  1. これまでのキャリアを振り返り、400字の職務要約を作成してみる。
  2. 転職サイトに登録し、興味のある業界の求人を最低3件保存してみる。
  3. 不足している知識を補うための「14日学習計画」を立て、初日の学習を開始する。

最初の一歩を踏み出す勇気が、あなたのキャリアを新しいステージへと導く。あなたなら、きっとできる。



出典一覧

[1]総務省統計局. 「労働力調査(詳細集計)2024年平均結果の要約」.

[2] 情報処理推進機構(IPA). 「DX動向2025」.
https://www.ipa.go.jp/digital/chousa/dx-trend/tbl5kb0000001mn2-att/dx-trend-2025.pdf

[3] パーソルキャリア株式会社. doda. 「平均年収ランキング(職種・職業別)【最新版】」.
https://doda.jp/guide/heikin/syokusyu

[4] 経済産業省. 「IT人材需給に関する調査 報告書」(2019年4月).
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf

[5] 総務省 e-Stat. 「令和6年 通信利用動向調査(企業編)」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files

[6] 国土交通省. 「令和6年度 テレワーク人口実態調査 -調査結果-」.
https://www.mlit.go.jp/toshi/kankyo/content/001879091.pdf

[7]人事院. 「一般職試験大卒程度『教養区分』の創設について」.

[8] 総務省 e-Stat. 「令和5年 地方公務員給与の実態」.
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files

[9] ChartMogul. “SaaS Metrics: What’s a good monthly churn rate?”.
https://chartmogul.com/blog/saas-metrics-for-founders

[10] パーソルキャリア株式会社. doda. 「2024年度版 決定年収レポート:転職者の約6割が年収アップ」.
https://www.persol-career.co.jp/newsroom/news/research/2025/20250512_1824

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この記事を書いた人

IFA転職を運営し、IFA専門転職支援サービスを展開。創業から100名以上のIFAへの転職を支援。また、アドバイザーナビ経由でのIFAになった方の転職者のコミュニティ「Club IFA」も運営しており、IFA業界の転職市場に精通している。

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