インタビュー
「リテール営業は本当に面白い」と言う、株式会社TA代表取締役の粳田活大氏。リテール営業にそこまで夢中になれる原動力は何なのか。なぜ天職のような仕事を辞めてまでIFAになったのか。じっくり話を伺いました。
まず粳田社長のキャリアから教えて下さい。
粳田2003年に野村證券に入社して以降、全国の支店を異動しながら、個人営業に携わっておりました。事業法人や金融法人を対象にした営業の経験はなく、新入社員として入社した当時から課長になるまで、15年間リテール営業一筋で過ごしてきました。
なぜ金融商品仲介業を立ち上げようと思ったのですか。
粳田証券会社に所属し、支店営業を続けていく、というキャリアはあったのですが、当時の同僚社員と意気投合し、金融商品仲介業者として独立する道を模索するようになりました。 米国にならい、日本においても、資産運用業界の変革・進化のために、金融商品仲介業(IFA)の存在意義が拡大していくイメージを強く持てたからです。
リテール営業の魅力とは何ですか。
粳田長期的な観点からお客様の目的や夢を達成するお手伝いができることですね。ゴールを設定し、それを達成できた時、お客様の人生が変わってきます。そこにほんの少しでも関われるということに喜びを感じます。
社名の由来を教えて下さい。
粳田TAはトラステッド・アドバイザーズの略です。信頼されるアドバイザーになろうという決意表明のようなものとして、極力シンプルな名前にこだわり、この社名にしました。
事業内容と特徴について教えて下さい。
粳田15年間、証券営業を続けてきたわけですが、そのなかでなかなか改善されなかったのがお客様との利益相反の問題でした。私たちアドバイザーの手数料は、当然お客様から頂くものです。売買の都度手数料をいただく制度においては、お客様の運用成果と業者の利益が一致する仕組みにはなりません。 この問題をどうすれば解決できるのかが、私にとって大きなテーマでした。私たちは報酬体系をコミッションベースでいただく従来のサービスと並行し、フィーベースでいただく新しい運用サービスを導入・推奨しております。2018年に楽天証券がIFA向けに導入した「管理口座コース」によって、お客様の資産残高が増えれば私たちの報酬が増え、逆にお客様の資産残高が減れば私たちの報酬も減ることになるので、お客様との利益相反が大分解消されると考えております。
御社に所属しているIFAの人数、および雇用関係について教えて下さい。
粳田役員が3名、所属IFAが7名の計10名体制です。その多くが証券会社のキャリア10年をこえるメンバーです。正社員のIFAは今のところ雇用しておらず、IFAは全員業務委託契約になっています。
金融商品仲介業を始める前に持っていたイメージと、実務を始めてみてギャップはありましたか。
粳田当初、金融商品仲介業には、歩合外務員的な人が多いのかなという印象を持っていたのですが、最近は理念を持って、リテール資産運用業界の変革、改善を考えている方が多数いることが分かりました。日本の運用ビジネスや、ひいてはそれを活用して資産形成をする人たちを取り囲む環境も大きく変わっていくはずだという確信が得られました。 またお客様に提案する際、大手の証券会社だと自社のリサーチ部門などから豊富な情報が用意されていました。一方でIFAとして独立するとそのバックアップが無くなり、自分で情報を集めに行くことになります。自身で能動的に、かつ中立的に情報を取りに行くことで、幅広い提案をしているアドバイザーが多くいることに驚きました。証券会社の枠から解放されることにより、自分で工夫をし、それがアドバイザーの付加価値につながっているのだと思います。 一方、デメリットは実務的なことですが、お客様の利用証券会社が複数に渡る際、証券会社全体を統合したポートフォリオ管理のシステムがまだ普及していない点だと思います。ここは少しずつでも改善を望むところです。
IFAに対して求める人物像はどうでしょうか。
粳田これから10年後、あるいは5年後にアドバイザーの価値がどこにあるのかを常に模索し続けられる人です。 有価証券売買業ではありませんし、運用の知見だけで食べていけるほど甘くはないでしょう。そもそもアドバイザーという仕事は、お客様に対して資産運用アドバイスを続けていくうちに、お客様がどんどん賢くなったら、究極的にはそのお客様はアドバイザーを必要としなくなります。それこそ自分で直接インターネット証券会社に注文を出した方が、コストも安くなります。そういう自己矛盾を抱えているのです。 常にお客様から信頼され、必要とされるアドバイザーであり続けるためには、さまざまな能力が必要になります。そこを突き詰めて考えられる人が時代の変化についていけますし、そういう人物を私たちは求めています。
今後の金融アドバイザー業界はどうなると見ていますか。
粳田IFA先進国である米国は、20年近い時間をかけてこのビジネスが大きくなっていきました。日本のIFAビジネスもまさにその走りの段階にあり、これからの拡大余地は非常に大きいと見ています。だからこそサービス提供サイドの各業者が利益相反をなくす工夫をし、襟を正し、この流れを確かなものにしていくことが大事だと思います。
ありがとうございました。