高ステータス・高年収のイメージから、銀行への転職を考える方は現在も少なくない。しかし、AIの導入や銀行員の削減のニュースなども流れる中で、銀行への転職をどうすべきか悩むケースも増えてきた。
当記事では銀行転職のポイントとして、平均年収や業務内容などの基礎知識、銀行転職を取り巻く環境、転職を成功させるためのコツについて解説する
銀行転職の基礎知識|業務内容について
銀行への転職を検討する判断材料として、業務内容や職種についてまとめた。銀行ではどのような待遇・業務フローで働くのかのイメージとして、参考にしてほしい。
銀行の平均年収
東京商工リサーチ(2022年9月)によると、国内の銀行員の平均年収は約608万円となっている。正社員の給与所得者の平均は約508万円となっており、転職すれば平均よりも高い年収が得られる可能性が上がる。
インセンティブ制度を導入している場合は、能力に応じて昇給・昇格も狙えるだろう。
- 参考:株式会社東京商工リサーチ「2022年3月期 2年連続トップ 三井住友銀行が826万9,000円 ~ 国内76銀行 「平均年間給与」調査 ~」
銀行の業務内容と職種
銀行の業務内容は、大きく分けて預金業務・融資業務・為替業務の3つである。
銀行の業務内容 | 概要 |
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預金業務 | ・個人や法人から現金を普通預金・定期預金・当座預金などで管理する業務 ・顧客から預かったお金の一部は融資業務へ回される |
融資業務 | ・預かったお金を原資とし、必要とする者へ住宅ローンや事業資金として貸し出す業務 ・融資先の選定、支払い能力や信用の審査、融資制度の紹介などを行う |
為替業務 | ・顧客に代わって振込・送金・代金支払いなどを行う業務 ・日本円が対象の内国為替業務、外貨が対象の外国為替業務がある |
企業の体制によるものの、大体は営業職・事務職・専門職(アドバイザー)のそれぞれに、3つの業務を振り分けて実行していく。
銀行の職種 | 概要 |
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営業職 | ・個人(リテール営業)や法人(法人営業)の顧客へ金融商品の提案や資産運用のアドバイスを実施 ・リテール営業は預金・保険・投資信託・住宅ローンの提案、法人営業は事業用の融資案内や資金繰りのアドバイス |
事務職 | ・窓口で顧客と直接対面し、預金・引き出し・公共料金支払いなどの業務を実施 ・後方事務であれば端末入力や書類確認などを行う |
専門職(アドバイザー) | ・融資先の企業の選定や審査など、リスク管理や経営に関する助言を実施 ・外務員登録をしている方であれば、金融商品仲介業に関する業務を行う |
銀行員からはやや外れるものの、銀行のシステムを作る銀行系システムエンジニア(金融系システムエンジニア)の仕事も存在する。
銀行の種類
実施する業務や規模に応じて、主にメガバンク・地方銀行・信用金庫・信託銀行・ネット銀行の5種類に分けられる。
銀行の種類 | 概要 |
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メガバンク | みずほフィナンシャルグループや三菱UFJフィナンシャルグループといった都市銀行を含め、全国展開している日本の最大手企業 |
地方銀行 | 都道府県ごとに本店を構えて、周辺地域の事業の発展・再生を目的に融資や相談業務を行う銀行 |
信用金庫(信用組合) | 地域の方々が利用者・会員として、お互いの地域の繁栄を図る相互扶助を目的にする共同組織 |
信託銀行 | 顧客から預かった資産(現金・不動産・有価証券など)を管理・運用する信託業務を行う銀行 |
ネット銀行 | 店舗を持たず、インターネット上の取引を主にしたサービスを実施する新しいタイプの銀行 |
銀行の業界動向|未経験での転職はできるのか
2023年以降の銀行への転職は、営業・事務・専門職のいずれにおいても、より高い専門性やITスキルが必要になる可能性がある。理由は次の通りだ。
- AIの導入で簡単なルーティン作業の代替が進んでいるから
- 業務のデジタル化の影響でITスキルを持つ人材が重宝されつつあるから
- バブル世代のベテランの退職での穴埋めが必要になるから
銀行員の全体数は減りつつあるものの、即戦力レベルの人材の需要は拡大している。一方で、金融業界未経験からの転職のハードルは高くなっている。
とはいえ、未経験歓迎求人がないわけではない。「地方銀行や信用金庫などの中小規模の銀行を狙う」「営業職や事務職などの職種経験をアピールする」などによって、未経験からの銀行転職も十分に狙えるだろう。
銀行へ転職するメリット・デメリット
これから銀行への転職を検討する方に向けて、銀行へ転職するメリットを解説する。
銀行へ転職するメリット
銀行へ転職するメリットは、「年収が安定している傾向がある」「社会的な信頼度が高くなる」「将来のキャリアの幅が広がる」の3つが挙げられる。
年収が安定している傾向がある
前述の通り、銀行員の年収は平均するとやや高めの傾向にある。加えて、銀行は常に個人・法人問わず利用者が途切れないので継続的に事業を続けやすく、従業員の収入も安定している。
社会的な信頼度が高くなる
顧客の預金や法人の事業資金を扱う銀行は、一般的なイメージからくる社会的な信頼度が高い傾向にある。「銀行に勤めています」と話すだけで、相手からの信用を勝ち取りやすくなるだろう。
キャリアの幅が広がる
銀行員としてのキャリアを積むことで、将来的なキャリアの幅を広げられる。具体的にみていこう。
・金融関係のスキル・知識・リテラシーが身に付き、証券会社や保険会社への転職で有利になる
・資格取得支援制度を設けている銀行であれば、金融系・IT系スキル資格取得によってキャリアアップを目指せる
・業務を通じて多くの企業担当者や個人事業主を出会えるので、人脈・知見の拡大につながる
「元銀行員」の肩書と身に付けたスキルは、転職市場でも注目されやすい。また、そのまま銀行員としてのキャリアを積み重ねて年収アップを目指すのもよいだろう。
銀行へ転職するデメリット
銀行員は多忙だとイメージを持つ方も多いと思われるが、実際のところ銀行員の勤務時間や残業時間が多くなるかどうかは、勤務する銀行による。働き方改革によって、人事制度・管理体制が整備されたところもあるだろう。
しかし、銀行業務自体は多忙・負担となるケースは多い。理由は次のとおりである。
- 営業ノルマが課せられる可能性がある
- 他者のお金を管理・運用したり融資先を審査したりなどの精神的プレッシャーがある
- 休日や業務後に勉強時間を確保する必要がある
- 金融業界は顧客との癒着やその他の不正行為を防止する目的で、2~3年で異動・転勤になるケースが多い
- 銀行独自の文化に馴染めない
これらは、銀行を辞めたい・銀行から転職したい理由としてもよく挙げられる。
銀行へ転職するためのコツ
銀行への転職を成功させるには、自身のスキルを見直したり有利な資格を取得したりなどが考えられる。具体的にみていこう。
銀行員として必要なスキル・能力を知っておく
履歴書・職務経歴書や面接試験で採用担当者にアピールするには、「銀行側がどのようなスキル・能力を求めているか」を知ることが大切になる。業界未経験であっても、銀行業務に転用できるスキル・能力を洗い出し、相手へ伝えるようにしよう。
銀行員として必要なスキル・能力の例は次のとおりである。
- 顧客からニーズを汲み取るヒアリング能力
- アドバイスや提案に説得力を持たせるプレゼン能力・論理的思考力
- 顧客や行内での円滑なやり取りをするためのコミュニケーション能力
- 経営者へのアドバイスに必要な経営者目線の考え方
近年では、AIの導入やセキュリティ構築に対応できるITスキルもアピールポイントになる。自社や取引先の海外展開・新興国への販路拡大などをサポートできるよう、英語力を求められるケースも増えてきている。
資格を取得する
金融に関係する資格をあらかじめ取得することで、自身の金融知識や銀行で働く意欲などを具体的にアピールできる。具体的には次の資格が挙げられる。
銀行転職で有利な資格 | 概要 |
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ファイナンシャルプランニング技能士 | ライフプラン(資産計画や年金など)・保険・金融・税金・不動産・相続の6分野を学習する国家資格 |
証券外務員 | 金融商品の勧誘や販売をするために必要な資格 |
日商簿記検定 | 経理や会計など企業の経営に欠かせない知識や財務諸表の読み方などを学べる国家資格 |
銀行業務検定 | 銀行・保険・証券会社に勤める方の実務知識や技能応用力についての習得・向上を目的とした経済法令研究会の資格 |
銀行転職で理想のキャリアを歩もう
銀行員の削減やIA導入の影響も懸念される銀行だが、コロナ禍からの回復や新たな人材の需要などによって以前経験者採用の求人は出されている。社会的信用や将来的なキャリアの幅広さなどのメリットも多く、未経験からでも目指す価値はあるだろう。
当記事で解説した転職市場の背景を踏まえ、自身のキャリアプランと相談してみてほしい。