「4月に入社したけれど、仕事が大変そうだ。」「このままこの会社で働いていて、年収はちゃんと上がるのだろうか?」このような不安を持っている証券会社の20代若手社員は多いが、実は証券会社の年収は他の業種より年収は高く、30代になれば大幅に収入は上がっている。
この記事は、各種転職サイトや実際に働いている社員によるクチコミ情報サイトの最新データを分析している。客観的なデータを把握することで、年収への不安を取り除くことができるかもしれない。
さらに本稿では年収を軸に、今後のキャリア戦略のヒントを提示していく。
証券会社の主な3つの仕事
証券会社には主に「リテール」「投資銀行」「リサーチ」の3つの部門がある。3つの部門すべてを手がける大手証券会社もあるし、特定の部門のみ行う中堅、小規模証券会社もある。後述するが、同じ証券会社内であっても担当部門によって年収も異なる。このセクションでは、それぞれの主な業務内容と求められる適性を紹介する。
リテール部門
個人のお客様に対し、資産形成のアドバイスをする業務。証券会社の仕事として最も多数の人が担当している。アドバイスをするため、経済や紹介する知識はもちろん、コミュニケーション能力なども必要とされる。
投資銀行部門
法人のお客様の資金調達(株式や債券の売り出しなど)を担う業務。リテール同様先方担当者とコミュニケーションが大切になる。決算書の読みこなし、財務・会計の知識が必要になる。他社や過去の事例を知っていることも大きな武器になる。
リサーチ部門
投資判断に役立つ情報をレポートにまとめる業務。省庁が発効する白書や統計データを取りあつかったり、海外調査データ、海外ニュースなどに触れることが多い。正確で、わかりやすい表現と、素材発掘からレポートにまとめるまでのスピード感が求められる。
証券会社の平均年収
平均年収は総じて高い
転職サイト各社のランキングによれば、証券会社の年収は他の会社と比較すると高い。国税庁の調査によれば20代、30代の平均年収は277万〜518万円であることから、証券会社の年収は同年代と比較して同程度から340万円程度高いことになる。
平均年収 | 順位 | ランキング名称 | 調査会社 |
---|---|---|---|
623万 | 11位 | 【全110業種】業種別 モデル年収平均ランキング【2021年版】 | マイナビ |
558万 | 4位 | 平均年収ランキング(平均年収/生涯賃金)【最新版】 | DUDA |
513万 | 3位 | 業種別平均年収ランキング【2020年版】 | マイナビエージェント |
なぜ証券会社の年収は高いのだろか。その理由の1つに、インセンティブ制度が挙げられる。
例えばリテール部門や投資銀行部門などに所属する営業担当は、実績に応じたインセンティブが給与や賞与に反映されるのが一般的だ。頑張っただけ収入が増えるしくみが整っている。
また通常のインセンティブ制度に加え、社長賞、月間賞、新規開拓賞など各種社内キャンペーンも随時行われており、結果に応じて金一封がふるまわれる。インセンティブ制度と各種社内キャンペーンの賞金が証券会社の年収を押し上げている一つの要因である。
しかし、近年証券会社の評価制度は変わってきているため、今後の評価制度は今までとは変わってくる可能性がある。
データから見る 証券会社の平均年収
このセクションではさらに詳しく証券会社の年収を調査する。
男女別・世代別の年収比較
「業種別平均年収ランキング【2020年版】マイナビエージェント」を見てみると、証券会社の平均年収は513万円となっている。その中でも男女年代別では、20代男性の平均年収は419万円、30代男性の平均年収は738万円なのに対して、20代女性の平均年収は406万円、30代女性の平均年収は513万円となっている。
出典:業種別平均年収ランキング【2020年版】マイナビエージェント
年代別に見ると20代から30代になると年収は237万円(+ 57%)と大きく上昇している。また男女別にみると20代は男女差が年間13万円であるのに対し、30代になると年225万円に差額が拡大している。
なぜ、30代になると男女の年収差が大きくなるのだろうか。
理由は2つ考えられる。
1つは入社間もない数年は給与水準そのものが低い点だ。数パーセントの個人差があった場合でも、基本給が低い為、金額にすると少額に差に留まることが考えられる。
2つ目は、性別によって担当職務の偏りがあることだ。たとえば営業サポートなどのアシスタント業務は女性が担当しているケースが多い。これらの業務は前述したインセンティブや各種社内キャンペーンの対象外になるため、年収に差がでてくると推察される。
会社別・職種別の年収比較
国内最大級の社員・元社員のクチコミ、年収データを有する転職情報サイトopenworkの主に20代、30代の証券会社に勤めるビジネスパーソンによる自己申告が元になっているデータを見てみると、大和証券を除き、他の証券会社の投資銀行業務部門の平均年収は1,000万円を超えていることがわかる。
まず、会社別に年収を比較する。年収は、独立系証券会社、銀行系証券会社、中堅証券会社の順に低くなっており、野村証券の「営業」「総合職」の業種に着目すると、他社とは100万の位の値が一つ大きいということが見られる。「営業」も「総合職」も該当者が多いことから、野村証券で働いている人は全体的に年収が高いことが分かる。
次に、職種に着目しよう。先ほどの情報によると「投資銀行」の年収が相対的に高く、一方で、中堅証券会社における「投資銀行」の年収データはなかった。
中堅証券会社における「投資銀行」の年収データがない理由は、中堅証券会社での投資銀行業務は小規模かつ少人数、又は業務そのものを手掛けていないからだと思われる。
「高い年収であること」を優先したキャリアプランをたてる場合は、独立系大手・銀行系証券会社の「投資銀行」業務を目指すのが有効な選択肢の一つだ。
すでに独立系大手・銀行系証券会社に勤務しているのであれば、「投資銀行」に異動希望を出してみてはいかがだろうか。
自分の目指す働き方&年収に向けたアクションをしよう
年収に関するデータを把握したところで、自分の目指す働き方・年収に向けたアクションをしよう。
まずは、現在の業務で得た経験やスキルを書き出してみよう。
次に、自分が目指す働き方や年収とのギャップを埋めていくアクションをおこそう。
年収水準の高い証券会社への転職や、今の会社での部署異動希望、資格取得に向けた勉強などがその具体例だ。
また、転職エージェントへの登録もおすすめする。無料で登録できる上に、最新の求人動向を入手できる。さらに実際に相談することで、自分の経験に高い市場価値がついていることを発見することもある。専門知識のある第三者とはなすことで、自分の思考が整理され、次の一手が見つけやすくなる。