住宅ローンを使って住宅の購入を予定している人や、すでに借り入れている人が転職をしたとき、ローンの審査や融資の条件に転職がどのような影響を与えるのだろうか。
この記事では、住宅ローンを申し込むタイミングを転職前と転職後とに分け、メリット・デメリットについてそれぞれ解説する。
住宅ローン借り入れ時の審査の基準とは
住宅ローンを借り入れるとき、審査の際に融資が可能ないくつかの条件を満たす必要がある。転職をしてもしなくても、条件を満たしていなければ審査に通らず借り入れできなくなるか、借り入れ内容が不利になるリスクがあるため、審査の基準については理解しておきたい。
審査の際に重視される主な項目は以下の通りである。
- 年齢
借り入れを受けた時の年齢と完済した時の年齢のどちらも審査の対象である。住宅ローンにおいて重視されるのは完済時の年齢である。一般的には、借り入れは20歳から70歳まで・完済は80歳未満の場合が多い。 - 健康状態
多くの住宅ローンは「団体信用生命保険(団信)」の加入を借り入れの条件に設けている。このため健康状態に問題があり団信に加入できない人は審査に落ちて借り入れを受けられなくなる。 - 担保評価
借り入れを受けた物件(土地・家屋)が担保となっていれば、その物件の評価額が審査の対象となる。築年数の古い中古住宅など担保評価の低い物件は審査に通らず借り入れを受けられない可能性がある。 - 年収
収入が低ければ返済能力も低いと判断されてしまうため、もっとも重要な審査項目のひとつである。 - 勤続年数
勤めていた年数が長いほど安定的に収入が見込める、との判断により審査において重視される項目である。多くの場合、勤めてきた年数は2年から3年以上が望ましいとされる。
住宅ローンを転職前に使う際のメリット・デメリット
転職前のタイミングでの住宅の購入に際して住宅ローンを申請した場合のメリット・デメリットは以下の通りである。
メリット
- それまで勤めてきた年数を活かせる
前の会社で勤務してきた年数は、収入の安定性を判断する要素のひとつとして審査の際は重視される。
転職するとそれまで勤めてきた年数はリセットされてしまい、今の会社に3年以上勤めていることが条件の場合、審査に通らない。
転職する前であれば、在職中の会社に勤めてきた年数で申請することが可能だ。
- 現在の年収を基準にして借り入れ内容を決められる
一般的に、年収が高いほど金利面などで有利な借り入れが受けられる。転職をしたあとに収入が下がる場合は借り入れの内容が不利になるリスクが高い。現在の収入が転職をしたあとの収入を上回っていればそれだけ有利な条件で借り入れを受けることができる。
デメリット
- 転職をしたあとの返済が困難になるリスクがある
転職先の実際の給与が見込んでいた金額を下回っていたり、人間関係がうまくいかず早期に退職してしまったり、転職前には予想できなかったリスクによって収入が減ってしまうと、予定通りにローンを返済することができなくなる可能性がある。 - 借り入れ対象の物件が担保として没収されるリスクも
借り入れの条件として、借り入れ対象の物件を担保にしている場合、返済が滞ると最悪、物件を没収されるリスクがある。転職をしたあとに減収や退職などの予期せぬ事態が生じる可能性はゼロではない。住宅ローンを転職前に申請するときは、転職をしたあとに予想される収入の増減を十分に加味し、無理のない返済計画を立てておくことが重要である。
ローン審査の期間中の転職は避けるべき
通常、ローンの申請をしたのち審査の完了を経て借り入れが実行されるまでには1カ月から2カ月かかる。この間に転職をして審査の基準(勤めてきた年数や年収)が満たせなくなった場合、審査は無効とされ再審査を受けることになる。
その結果、転職前に希望していた内容(借り入れ金額や返済期間)での借り入れができなくなるリスクもある。
ローン審査の期間内に転職する利点は考えにくいため、借り入れが始まったタイミングでの転職をすすめたい。
住宅ローンを転職後に使うメリット・デメリット
転職をしたあとに住宅ローンを申請した場合のメリット・デメリットについて以下に解説する。
メリット
- 転職をしたあとの実際の収入や昇給、人間関係などを把握した上でローンが組める
思っていたより給与が少ないケースや、業務内容や人間関係に馴染めずに再転職や退職するケースなどリスクが不確定な時期にローンを組むのは危険といえる。
実際の月収や賞与などの報酬体系、金額・昇給にかかる時間やノルマ、職場の人間関係などを把握した上でなら、完済までに無理のない借り入れ額や返済期間でローンの計画が立てられる。
- 転職をしたあと勤め続ける年数を伸ばすことによりローンの選択肢が増やせる
審査の基準に一定の期間(1年から3年が多い)以上、勤めている年数が設けられた住宅ローンでも、年数の基準を満たすまで転職先に勤め続ければ利用可能となる。借りられるローンの選択肢が増えれば、より有利な借り入れ内容を探しやすくなるだろう。
デメリット
- 勤続年数がリセットされて借り入れできる金融機関が減る
転職すると、それまで勤めてきた年数が「0年」となり、勤めてきた年数(1年以上や2から3年)が借り入れ条件に設けられているローンには申請できなくなる。 - ローンの申請に必要な書類が増え繁雑になる
通常の申請に必要な書類に加え、転職したことを証明する書類(採用通知や雇用契約書など)の提出を求められ、手続きに余計な手間が増える可能性がある。
転職後はフラット35の検討を
フラット35は、独立行政法人である「住宅金融支援機構」が民間の金融機関と提携して提供する住宅ローンである。借り入れ対象者の年収や勤めてきた年数を中心に審査を行なう民間金融機関と比べ、勤めてきた年数が1年未満でも利用できるなど借り入れの条件が緩やかなのが特徴だ。
金利は民間より高くなるものの、勤めてきた年数や年収の制限がないため転職をしたあとに住宅ローンを組む人には十分に検討の余地があると言えよう。
転職前と転職後それぞれの事情に応じた住宅ローンを
転職前と転職をしたあとの住宅ローンの利用はそれぞれメリット・デメリットがあり、どちらが正解か一概には言えない。
いずれにせよ転職をしたあとに起こるであろう収入や支出の増減など、状況の変化を予想し、よりベターなタイミングを選択するようにしたい。