銀行からのキャリアパスを考えるとき、「専門スキルもないし、キャリアアップは望めないのではないか」と考える人もいるかもしれない。しかし、営業ノルマや正確な事務作業をこなしてきた銀行員は、他業界でも活躍できるスキルが十分身についている。そこで今回は、銀行で培われるスキルからキャリアパスについて考えていきたい。
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銀行で培われるスキル
銀行は、「預金」「為替」「融資」の3つが業務の柱である。そのため、一口に「銀行員」といっても業務の内容は実に幅広い。しかし、どの業務についていても目標ノルマ達成や仕事の正確さが求められることには違いないだろう。ここからは、そのような銀行業務の中で培われるスキルについて解説していく。
営業力
銀行では、リテール営業や法人営業を通じて「営業力」が培われる。銀行で取り扱う商品は預金や個人ローン、金融商品(保険商品、投資信託など)、法人融資と多岐に渡っている。どれも「お金」に直結する「無形商材」であり、そのような商品を顧客へ営業・販売するには相当のスキルが必要となるものだ。
コミュニケーションスキル
銀行で培われるスキルとして、コミュニケーションスキルが挙げられる。銀行は営業活動を通じて多くの顧客と接する。銀行員が取り扱う商品は「顧客の大切なお金」であるため、無礼やミスがあっては顧客からの信頼を失ってしまいかねない。
顧客からの信頼があってこそ成り立つ営業活動であるため、コミュニケーションを円滑に行うためのスキルや、他人から心を開いてもらうような話術については、自然と鍛えられているだろう。これらのスキルは、どの業界に進んでも必ず役に立つものである。
正確な事務力
銀行では、正確な事務力が求められる。「1円でも合わなかったら帰れない」とよく聞くように、お金を扱う銀行では「大体でOK」で通じる業務はないのだ。さまざまな管理台帳や提出書類を正確に作成することを叩きこまれている銀行員は、他業種でもその堅実な事務力を買われることが多い。
目標達成に対する計画実行力
銀行業務は、営業ノルマとは切っても切れないものである。半年ごとに与えられる目標は預金額から融資額、役務収益額、ローン件数などさまざまだ。これらの目標を必達させるためには、「月次で〇%の進捗が必要」といった細かい管理が必要であり、銀行員であれば誰しもが当然行っていることだろう。
こうした営業計画に基づき、しっかりと目標を達成させる実行力は、どの業界でも求められるものである。
財務・税務に関する知識
銀行業務では、財務や税務に関する知識も身につく。どのようなキャリアパスを選んでも、お金から切り離された業種はないだろう。銀行で得た金融知識は多くの人が持っているものではないため、たとえ異業種に進んだ場合でも必ず役に立つ場面が訪れるといえる。
銀行出身者のキャリアパス
ここまで、銀行で培われるスキルについて解説してきた。銀行出身者は、これらのスキルを活かしてどのような道へ進めばよいのだろうか。ここからは、銀行員のキャリアパスの一例を挙げていく。
① 証券会社
銀行でリテール営業や法人営業を経験した人は、証券会社への道を選ぶこともある。幅広い業務を取り扱う銀行では、人事異動や昇進によってこれまでと全く違う業務に就くことも多い。「金融営業だけを専門に行いたい」と感じる人にとって、証券会社への転職はひとつの選択肢となり得るだろう。
② 地方銀行・メガバンクなど同業他行
銀行では、同業他行へのキャリアパスも珍しくない。「転勤で赴任した地域の地方銀行から引き抜きにあった」「キャリアアップを目指してメガバンクに転職する」など、動機もさまざまだ。銀行は違えど業務に大きな差はないため、即戦力として働けることも大きなメリットである。
③ コンサルティング業界
異業種へのキャリアパスでは、コンサルティング業界が挙げられる。銀行業務とは一見無縁のように感じられるが、「顧客のニーズを引き出し、顧客が抱える課題解決の手助けを行う」という点は、銀行での業務にも通じる部分は多いだろう。
リテール営業や法人営業の経験者であれば、顧客の潜在ニーズを引き出すコミュニケーション力や、顧客と自社との契約条件をすり合わせる折衝力も大いに役立つといえる。
④ M&A仲介会社
近年、後継者不在や経営者の高齢化を受けて企業のM&Aニーズが増加している。法人営業を行うなかで、いかにM&Aのニーズが多いかを実感する機会もあるだろう。その流れを受けてM&A仲介会社への転職を決める銀行員も多い。
銀行ではM&A専門部署を設けているところもあるため、そのような業務の経験者であれば即戦力としても期待できる。
⑤ 不動産業界
銀行出身者のキャリアパスとして、不動産業界を選ぶ人もいる。銀行で取り扱う住宅ローンや不動産融資の知識は、不動産業界でもそのまま活用できるスキルである。
銀行での営業経験を活かし不動産営業を選択する道もあれば、不動産投資や不動産証券化などの不動産金融業務で専門知識を活かす道もあるだろう。
⑥ IFA
銀行出身者が選ぶキャリアパスとして、近年急増しているのがIFAである。IFAとは、「独立系アドバイザー」とも呼ばれ、特定の金融機関に属さずに金融商品を販売する業種である。
営業ノルマに縛られることがないため、真に顧客のニーズに沿った営業活動を行えることが特徴だ。銀行での営業活動において、「銀行の方針と顧客のニーズが合っていない」と感じた経験はないだろうか。IFAでは、組織の経営方針や営業計画などに影響を受けないため、本当に顧客に必要だと思った商品だけを販売できることが魅力である。
「金融営業は好きだけど、ノルマばかりを気にするのは疲れた」という人は、IFAへのキャリアパスを検討してはどうだろうか。
銀行で培ったスキルはどんな業界でも活用できる
「銀行はつぶしが利かない」とはよく聞くが、厳しいノルマや正確な事務力を求められてきた銀行員には、実はたくさんのスキルが身についている。それはどの業種に進んでも、必ず役に立つものだ。銀行からのキャリアパスを考えるとき、ぜひこの記事で紹介したような道を参考にしてほしい。