株式会社だいとく投資ビレッジ 代表取締役 山田明弘氏 TOPインタビュー
今回は株式会社だいとく投資ビレッジの代表取締役の山田様です。
新卒では日産証券に入社され、その後祖父が創業した大徳証券(現:株式会社だいとく投資ビレッジ)へ転職。山田様が事業承継をするタイミングで、金融商品仲介業者として業態転換をされたIFA法人であるだいとく投資ビレッジを設立されました。
その代表である山田様にIFA転職希望者の方からよく上がる質問などをもとに、IFA業界のビジョンや考え方についてお伺いいたしました。
山田様のキャリアを教えてください。
大学を卒業後、日産証券に入社をして5年間に渡って場立ち、リテール営業、投資情報部などを経験しました。その後、昭和23年の4月に祖父が創業した名古屋の地場証券である大徳証券に転職。その頃、父が経営を行っていましたが、入社時から平社員として営業、経理、総務、内部管理など幅広く在籍している同僚に教えてもらいながら2〜3年過ごしていました。
そのあと取締役就任、2012年に大徳証券を金融商品仲介業者として新たなスタートをする際に代表に就任し、現在に至っております。
大徳証券を金融商品仲介業者に転換しようと思ったきっかけや理由は何でしたか?
だいとく投資ビレッジを設立した最大の理由は、お客様の人生に直結していくサービス提供をしたいと思ったからです。当時(2012年)、大徳証券は典型的な株屋で、株式の売買取引がメインで投資信託を数本取り扱っているような会社でした。その頃、リーマンショックや東日本大震災など外部環境も難しい中、株式一本で勝負していくということは厳しいと感じていました。
その状況下、大徳証券の代表に就任するにあたって将来のビジョンや経営方針を描こうと思っていたのですが、全く描くことができませんでした。
今後の方針を模索している中、旧来型の株式提案だけでなく「お客様のお金に関する悩みを全方位でサポートすることができないか?」「次世代にも繋がるよう、長期的にお客様と付き合う方法がないか?」と考えているところIFAに出会いました。
IFAであれば、バックオフィスやミドルオフィスの機能を運営元の証券会社に委託することができるので、弊社としてはフロントオフィスとなる営業のみに焦点を当てることが可能です。この制度を使って、もっと多くのお客様のニーズにお応えし、親子2代、孫3代に亘る地域の皆様とのお付き合いが可能となると考えました。
事業転換前からIFAのことは知っていたのですが、日産証券時代の直属の上司が証券ジャパンさんのIFA営業部長を務めていたこともあり、私自身が目指す事業展望を共有したところ強く共感していただき具体的なIFA法人転換への話が進みました。
金融商品仲介業者への転換で先代と従業員、何よりお客様の反応はいかがでしたか?
最終的には理解を示していただき現在でも金融商品仲介業を行うことができていますが、当時は父を説得することから始まり、従来型の株式中心の提案をしていた従業員、なによりもお客様にも理解していただく必要があり苦労しました。
しかし、幸いにも初めから頭ごなしに断られるということはなく、皆様に納得していただき約半年程度で金融商品仲介業者として活動を再開することができました。
どのように、皆様にご説明をして納得していただいたのですか?
お客様と従業員に対して一貫して、弊社の今後の想いや理念・コンセプト、転換することのメリットやデメリットを丁寧にご説明しました。
具体的には先ほど申し上げたような株式に偏った従来型の証券会社ではなく、お客様のニーズにお答えできるような人生に直結したサービス提供ができることやバックオフィスなどの体制変更、より一層地域に根ざした金融機関を目指すための転換であることです。
証券会社としての運営はバックオフィスのコスト負担が大きいことや偏った商品提案になってしまうことが多い一方で、IFAは一部の機能を外部へ委託することでコストを抑えると共に、フロントオフィス(お客様サービス)に資源集中を図ることが出来ますので、株式のみならず債券や投資信託、生命保険や損害保険、住宅ローンなどさまざまなソリューションを提案することができます。
ただ、単に取扱商品が増えることや弊社都合での転換と説明をするのではなく、IFAという業態の魅力を活かした、だいとく投資ビレッジのビジネスモデルを理解して頂くよう意識していました。
大きな転換をされた御社の強みや特徴、IFA法人としての提案内容について教えてください。
弊社の特徴は大きく二つあります。
一つ目は「地域密着」であることです。敢えて全国展開など大幅な拡大をせず、現状の名古屋地域、岐阜県の関支店地域、京都府の京都市地域に根ざしていこうと考えています。前身が地場証券だったということもあり長くお付き合いいただくお客様が多くいらっしゃいます。その方々や地域のために活動していく金融機関であろうと思っています。
もう一つは「ゴールベースアプローチ(以下、GBA)」を採用し、お客様の人生を直接サポートできるような提案を推進しているところです。GBAとは、お客様の夢や願望、目標をお伺いし、その設定したゴールを叶える為の実行プランを作成し、ご提案します。
もちろんお客様のゴールや考えは変わっていくので定期的にレビュー、アフターフォローを行いながら人生の伴走者として叶えたいゴールの達成をお客様と一緒に目指していきます。
これらを実現すべく「共生共幸」を弊社の理念として掲げています。この言葉は私の造語ですが、お客様及び地域社会の皆様と、共に歩み、共に考え、共に感じ、共に栄え、幸せを共有する人間関係を築いていきたいという想いを込めています。
株屋としての色が強い証券会社から企業文化の醸成やGBAの教育などマネジメント面で重要視していることはなんですか?
単に「資産管理サービス」とだけ説明してしまうと、ラップ口座を使用することだと認識してしまう方もいるので、GBAの本質についてしっかりと説明するようにしています。
具体的には「GBA型資産管理サービス」というのは、商品の売買ありき、取引ありきではなく、あくまでお客様のゴールの達成を目指した「サービスの提供」であるとお伝えしています。
提案方法については、保険会社出身者を中心にカンファレンスを設置し、担当アドバイザーを交えてライフプランシミュレーションを作成することに力点を置いています。また、現在も継続的に実施していますが、今後も社内では定期的に勉強会やミーティングを通じて、GBA型サービスの品質向上を講じてまいります。
所属IFAのバックグラウンドを教えてください。
大徳証券から継続して在籍している者とだいとく投資ビレッジに業態転換をしてから採用した者もいます。所属外務員は20名程度、年齢層は50〜60代の方が中心です。
若干、他金融機関と比較すると年齢層が高く感じますが、お客様層が同世代の方も多くいらっしゃる点、並びにライフイベントを経験した者の方が、ライフプランにおける具体的な設計が出来ることから、真にお客様と共にGBAを利用して伴走できる体制が整っていると考えています。
御社のターゲットとしている顧客層を教えてください。
弊社は富裕層やマス層でターゲットを分けたり、相談する最低金額は設けていません。ターゲットとしてこだわりがあるのは「地域密着」ということだけです。
個人のお客さまからのご相談が中心ですが、経営者層や富裕層の方にもサービス提供させていただいております。現時点で口座数は約8,000口座、お預かり資産は300億円強に上ります。
現在のIFA業界をどのように見ていらっしゃいますか?
業態転換をしてから約10年、金融商品仲介業者として活動してきて、少しずつ知名度が上がってきているような気がしますが、まだまだ知名度向上が必要だと思っています。また、ここ数年IFA法人数が急増してきましたがそろそろピークアウトして淘汰されるような時代に足を踏み入れているような気がします。
今後求められるものは、これまで証券会社が行ってきた利益を追求する提案内容ではなく、お客様のライフプランの追求が必要だと思っています。知名度が上がってきている分、IFAは「玉石混合」だと報道されていますが、お客様による厳選により、「石」は淘汰され、「玉」が残っていくものと思われます。
他方、IFA事業者として他業界との棲み分けが必要だと考えています。現在の金融機関は、業界を超えるサービス、つまり横断的なサービスが求められていることを理解しつつも、未だ「銀行・証券・保険」といった縦割りの思考が残っているが故、創造するサービスについて自前主義が当たり前となっております。
しかし、お客様へのサービスの品質を高水準に維持しながら、横断的なサービスの展開を体系的に進めるとなりますと、自前主義では限界があります。つまり横断的なサービスにおいて適材適所にIFAを利用する方法が必要と思われます。
例えば、信用金庫、銀行、保険会社、大型保険代理店等でNISAやiDeCoについての相談を受けた場合は、IFAを紹介する等といった役割分担が求められるのではないでしょうか。
地域密着で外部との連携が必要とのことですが、御社が取り組む具体的なエピソードはありますか?
地域密着という観点だと、年に一回、ある地域の商工会議所と市役所が主催でビジネスプラス展というイベントを開催しており、昨年IFAで唯一出店させていただきました。まずは地域に弊社の存在を認識してもらうことが重要だと考えています。
地域密着を特徴としているからこそ、地域に一番得意な人・専門家が分担をしてお客様の悩み事を解決できるよう環境整備を行っていきたいと思っています。その中心になるのが、IFAであり弊社だと考えております。
どのようなテーマでセミナーを行っていますか?
ただいま、月1回の頻度でオンラインセミナーを行っております。NISAやiDeCoの制度について話をしたり、相続や保険についてもIFAの立場から分かり易さ重視で説明を行うセミナーを行っております。昨年参加したビジネスプラス展では、来年就職をする高校生向けに給与明細の見方について取り上げ、ミニセミナーを開催しました。
例えば、額面上の給与から、社会保険料や税金が差し引かれたものが「手取り額=可処分所得」になる旨、また、社会保険料はなぜ支払うのか、社会保険を支払うことで何がもたらされるのか、社会保険料は会社も負担をしている等について分かり易く説明をしました。
今後の金融業界やIFA業界はどうなっていくと考えていますか?
金融業界は他業界を学ぶべきではないかと思っています。金融機関にもオープンイノベーションが必要です。製造業が発展した際、グローバリゼーションを含むオープンイノベーションが進み、多くの物の価値向上や産業の発展がありました。これまで、閉塞的にビジネス展開をしてきた金融機関が解放され、他業界との結びつきからのサービスを深めていくことで、日本の金融業界は発展していくと考えています。
具体例としては、小売店で商品販売を目的に集客をしたいと思った時に、IFA法人とコラボをして資産運用に興味がある人を集客することで小売店も集客が行うことができる仕組みを作るなど新しいモデルを想像していく必要があると考えています。
山田様が目指していることや御社の今後のビジョンを教えてください。
一番注力して行きたいところは引き続きGBA型のサービスをお客様にとってどう定着させていくかを追求していきます。利益の追求ではなくライフプランの追求を考えていくのはまだ始まったばかりで、さらに精度を上げて行きたいと思っています。
そのために社内で「GBA推進事項」を掲げ、「理念(purpose)」「連携(corporation)」「知識(intelligence)」「意思疎通(communication)」「おもてなし(hospitality)」「フィデューシャリーデューティー(principal)」の6項目について、その目的と目標、体得するうえで定期的にフィードバック&ブレークスルーをする体制を構築しました。その一環として、弊社のアドバイザーは全員FPの取得、保険募集人の資格を取得しました。
IFA法人としての経営戦略と現場の連携を強く保ち、組織的にIFA業界の発展やお客様の幸せを追求していこうと考えています。