FPバンク株式会社-代表取締役社長 久保田正広氏
「金融のあり方を変えたい」
FPバンク株式会社は、日本でも数少ない、金融の3分野を合わせたFPコンサルサービスを提供しています。
今回は、代表取締役の久保田正広氏に、立ち上げの経緯や事業に対する想い、そしてIFA業界についてお伺いしました。
久保田氏の経歴と設立の経緯を教えてください。
大学を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入社し、11年間営業として融資の仕事に携わりました。しかし、当時の営業スタイルは顧客本位とはほど遠く圧力販売やお願い営業が中心でした。そのため、年次が上がるにつれてこのような営業手法に対して強い疑問を抱くようになったのです。
そこで、顧客本位での仕事を実現するためにはどうすれば良いかを模索した結果、ファイナンシャルプランナー(FP)の仕事にたどり着きました。しかし、当時はFPという事業モデルがまだ確立されていなかったため、まずはソニー生命に転職し、7年間ライフプランナーとして保険のコンサルティングセールスに従事しました。
ここでは、本当の意味での顧客本位の営業を実践することができ、いい機会に恵まれたと感じています。圧力やお願い営業ではなく、きちんとしたセールスを通じてお客様から感謝される経験を積むことができました。
その後、保険ショップなどの代理店が急成長する時期を迎え、私もソニー生命から乗り合い代理店に転職しました。ここでは営業ではなく、事業発展のために財務担当役員として5年間勤務しました。
そして、さらに中立性の高いモデルを作りたいという思い、2009年に株式会社FPバンクを設立しました。
FPバンク株式会社の社名の由来を教えてください。
独立する際、私の根底には「金融のあり方を変えたい」という思いが根本にあり、この思いを具体的に実現するために、FP(ファイナンシャルプランナー)として、優秀な人材を世の中にどんどん輩出していきたいと考えました。
つまり、FPの人材バンクとしての役割を果たそうと、それが社名の由来となっています。
FPバンク株式会社のビジョンを教えてください。
「金融のあり方を変えたい」つまり本当の顧客本位を実現したいと考えています。そのためには、「FPの6分野」すべてにおいてコンサルティングできる体制を整えることが重要だと認識しています。
そのためには、当然ながら採用や育成も重要ですが、まずは提供できる商品を揃えることが不可欠です。
ただし、単に商品が揃っているだけでは、顧客本位とは言えないのです。本当に重要なのは、「顧客本位」を第1の柱として掲げているかどうかです。これが弊社のビジョンの核心です。
貴社の特徴を教えてください。
今では、銀行に行けば金融商品は何でも売っています。但し、融資、為替、投資信託など各分野に担当が分かれており、それぞれの担当者が売りたい商品を優先する傾向があり、利益相反になってしまう恐れがあります。
これに対し、弊社では1人のFPがお客様を担当し、現状を分析することで、本当に必要な解決策を提供するコンサルティングを行っています。こうすることで、お客様の全体最適を確保することができて、極めて高い満足度につながっています。
また、案件相談の体制やカンファレンスを通じてチームでお客様の課題を解決する仕組みを導入しています。これにより、各FPが協力して最適なソリューションを提供できるようにしています。
この体制を実現するために、弊社ではフルコミッション制ではなく正社員型の雇用形態を採用しています。フルコミッション制では顧客よりも自身の売上を優先しがちですが、正社員型にすることでチームとして業界の課題すなわち金融のあり方を変えるというビジョンの達成を優先できます。
FPを目指す多くの人が中立性を持ち、顧客本位で業務を行いたいと考えながらも、実際には保険や証券など特定の分野に特化したモデルが多く、夢を諦めてしまうことが多いです。
しかし、弊社は金融の3分野すなわち、保険代理店とIFA(証券代理業)、銀行代理業務を一社で提供しています。3分野まとめて提供できる事業者は全国でも10数社しかなく、非常に珍しいことだと思います。
貴社の経営理念を教えてください。
弊社の経営理念は「Happy × Happy」です。これは、お客様がHappyになるのはもちろんですが、それを支えるFP(ファイナンシャルプランナー)もHappyにならなければ意味がないという考え方に基づいています。
お客様の満足は当然のことであり、それだけを理念に掲げるのは不十分です。 世の中には、特定の金融分野に特化して収益を上げるFPモデルが多く存在する一方で、中立性の高いフィーオンリーのFPが収益を上げられずに苦しんでいるという現状があります。
弊社は、FPの地位向上を図り、彼らが安心して働ける環境を提供することを目指しています。そのことがお客様の課題解決に真剣に向き合えると考えるからです。また30年以上にも渡る顧客の人生(ライフプラン)に最後まで責任を持ちアフターケアしていくことは、顧客にとって極めて重要な要素です。
従って私達が未来永劫存在し続ける必要があり、それを支えるFPがHappyであることが不可欠なのです。
メンバーの出身の割合を教えてください
銀行出身が4割、証券出身が2割、保険出身が4割、その他が1割です。銀行出身者は多くの分野を経験しているため、本格的に6分野に取り組める体制が整っていると感じています。
中には前職が花火屋さんという珍しい経歴の人もいますが、本人の努力はもちろんのこと、会社の手厚い研修体制もあって、今では主力メンバーとして活躍しています。
ご提案の際のポイントを教えてください。
弊社の商品をひとことで言うと「課題解決」です。そのためには、ライフプランに基づいたゴールベースアプローチを重視しています。
特に重要なのは現状分析です。お客様が現在どのような状況にあり、どのような課題を抱えているのかを丁寧に模索しています。顕在化しているお客様の課題だけでなく、潜在的な課題も掘り起こし、すべての分野において課題を明確にする作業を非常に大切にしています。
なぜならば、お客様の気付かないリスク(例えば金利上昇・資産価値変動・資金繰り・万一リスクなど)に見舞われた時に、本当にこのFPに相談して良かったと後から気付かれることも多く、本当のお客様第一を貫くことができないという信念があるからです。そのような対応をしておかずにお客様に想定外のことが起きたら一気に信用を失ってしまうでしょう。
このプロセスを、お医者さんに例えるならば、カルテのような形でお客様に状況を示し、処方箋のように課題解決策を提案しています。おいしいお店やお得な情報をお伝えするだけのスタイルでなく、たとえ苦い薬でも、どんなに痛い注射でも実行支援まで行うのは、お客様のためを思ってのことです。
IFA業界の課題
IFAを含む金融業界では不祥事が多発しています。今後、規制がさらに強化され、オーバーコンプライアンスの状態が進むでしょう。
そのため、弊社のように正社員型で不祥事が起こりにくい体制であっても、フルコミッション制と同じレベルのコンプライアンス体制が求められるようになります。このような管理体制や人員確保を求められるなど規制強化により、保険代理店やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)の淘汰が進むと考えています。
一方で、金融業界も他の業界と同様に人手不足が深刻化し、厳しい状況に直面しつつあります。その結果、マーケットホルダーは金融業界に進出しやすくなりますが、それに見合う人材の確保がますます困難になると感じています。
そういう中でマーケットの変化が著しく起きています。例えば、大手生保によるベネフィットワン(福利厚生会社)の買収やIFAのフィーモデルの登場など、新しいビジネスモデルが次々と登場しています。
このような変化の中で、転職希望者や一般の方々がどのアドバイザー(企業)を選べば良いのか、本当に良いものを見抜く力が求められる時代になるでしょう。私達は業界の一員としてそのような方々に丁寧にかつ真摯に正しい情報を発信していかなければならないと思っています。