株式会社エル・エルパートナーズ 代表取締役社長 永井良氏
「ライフプランを軸に最大限のサポートを」
今回は兵庫県尼崎市を拠点に活動している株式会社エル・エルパートナーズ。同社の代表である永井社長に、立ち上げの経緯や事業への想いについてお伺いしました。
これまでのキャリアを教えてください。
2000年に地方銀行に入社し、住宅ローンや保険、投資信託の販売を2年間担当しました。その後、外資系生命保険会社に転職し、保険の直販を2年間行いました。その後、独立して株式会社エル・エルパートナーズを設立しました。
設立の経緯を教えてください。
当初、私は銀行の仕事を続けるつもりで入社しましたが、独立を考えていたわけではありませんでした。しかし、「今の金融業界は、お客様にとって真の資産の相談役になれていない」と痛感しました。金融業界では2〜3年で担当者が異動するのが通例で、お客様一人ひとりの将来を見据えた提案ができる仕組みがないのです。
私は、数年で担当替えを行う会社では、お客様の将来に寄り添った提案ができないと感じました。実際、多くの営業マンがノルマに追われて提案しているのが現実です。相談役として最も大切なのは「長期的な視点で資金計画を行えること」だと考えます。
その経験から、お客様本位ではないと感じるようになりました。長期間にわたってお客様を担当することが最も重要であり、自分がその相談役になりたいと思いました。そこで、保険の仕事であれば長期間にわたりお客様をサポートできると感じ、外資系生命保険会社に転職しました。しかし、生命保険専業一社にこだわる必要もないと考え、その後独立し、株式会社エル・エルパートナーズを設立しました。
株式会社エル・エルパートナーズの社名の由来を教えてください。
エル・エルパートナーズの「エル・エル」は、「ライフロング」の頭文字から取っています。長くお客様を担当することが一番大事だと考えており、その理念のために独立した経緯もあります。初心を忘れないためにも、この社名にしました。
株式会社エル・エルパートナーズの強みや特徴を教えてください。
多くのファイナンシャルプランナーは保険代理業に特化していますが、当社は金融商品仲介業も行っています。具体的には、投資信託や外国債券など、さまざまな金融商品を提案できることが強みです。保険だけに特化してしまうと、ドル建ての貯蓄性保険や変額保険に限られてしまい、NISAなどの提案が難しくなります。
しかし、当社では保険だけでなく、幅広い金融商品をしっかりと提案できる点が強みだと考えています。
金融商品仲介業を始めたのは、設立された当初からでしょうか?
いいえ、途中からです。設立から約五年後に始まりました。当初はNISA制度も始まっていませんでしたが、ライフプランを作成する中で投資の相談が増えていることを実感していました。お客様と長く関わる中で、投資分野の重要性が非常に大きいと感じ、具体的にお客様に提案できる環境を作る必要があると考えました。そのため、金融商品仲介業に登録しました。
注力している取り組みを教えてください。
私たちは「お客様を長く担当する」という理念を持って仕事をしています。そのため、同じ思いを共有できる人たちと一緒に取り組んでいきたいと考えています。主な取り組みはライフプランシミュレーションです。ライフプランシミュレーションを基にし、お客様に対して長期的な目線で商品を提供することが必要だと考えています。
また、企業型の確定拠出年金を企業様に提案し、その手数料を基に従業員様のライフプランを年に一度、無料で提供する仕組みも取り入れています。こうした取り組みを通じて、お客様により良いサービスを提供できるよう努めています。
提案の際に心がけていることを教えてください。
将来的に投資や資産運用をしたい、保険に加入した方がいいのかなど、多くの疑問があると思いますが、不安を解消することが最も重要だと考えています。そのために、ライフプランの作成が役立つことが多いです。将来の見通しがしっかりと立たないと、最適な提案はできないと思っています。
私の考えとしては、自分自身がお客様ならどういう金融商品を選択するかを常に考え、それを基に提案しています。そのためには、ライフプランが見えないとお客様の立場に立つことができません。ライフプランは、年収、預貯金額、家族構成だけで判断できるものではありません。生活レベルや消費傾向も重要です。ライフプランを作成すると、お客様それぞれの状況が全く異なることがわかります。世帯年収と貯金額は比例しません。浪費家の方もいれば、倹約家の方もいます。浪費することが悪いとは思いませんし、それが生活の一部である場合もあります。
ただ、その状況を把握しないと、本当に投資してもいいのか、余裕資金があるのかが分かりません。そのため、しっかりと確認してから提案することを心がけています。
具体的にライフプラン表にはどのようなことが書いてあるのでしょうか。
ライフプラン表には、預貯金額を基にして資産形成の目標設定を行い、例えば「5年後にいくらまで増やしましょう」という具体的なプランをお客様と一緒に作成します。まずは現状を確認することが重要で、現状のままだとどのようになるのかをしっかりと見ていただくことが大事です。実際にお客様からは、ライフプランを作成して良かったという声を多くいただいています。
また、当社では有料相談でライフプランの作成を行っていますが、購入前の資金相談にも対応しています。例えば、家を購入する前にどのくらいの予算をマイホームに充てて良いのか分からないという方が多いのでライフプラン表は役立っています。
IFA業界に対して感じている課題を教えてください。
IFA業界には多くの課題があると感じています。特に販売手数料の低下が大きな問題です。手数料が下がることで、IFAの収入が減り、最終的にはお客様にも影響を及ぼす可能性があります。この問題を解決するために、企業型の確定拠出年金などの制度を活用し、ライフプランをお客様に提供することで、ファイナンシャルプランナーが安定した収入を得られる環境を作る必要があります。
しかし、手数料の低下が続くと、富裕層にファイナンシャルプランナーが集中し、一般家庭のお客様へのサポートが難しくなるという悪循環が生じるかもしれません。また、投資や資産運用に関する情報がネットで簡単に手に入るようになりましたが、それが必ずしもお客様にとって最適な選択とは限りません。
リスクを理解せずに投資を行うことで、大きな損失を招く可能性があります。最終的にはお客様自身が困ってしまうことになる可能性があると感じています。ファイナンシャルプランナーの役割は、お客様が余裕資金で適切な投資を行えるようにサポートすることです。
業界全体として、ファイナンシャルプランナーが安定した収入を得られ、かつお客様にしっかりとライフプランを提供できる仕組みを構築することが重要です。ライフプランの作成に関しては、有料で提供することが当たり前になる必要があります。
日本FP協会のイベントに参加した際、アメリカのファイナンシャルプランナーの仕事について学びました。アメリカでは、ファイナンシャルプランナーは主に分析やライフプランのシミュレーション、状況把握といったプランニング業務を担当します。一方で、投資信託や保険の販売といった商品提供はファイナンシャルアドバイザーが担っています。
これに対して、日本ではファイナンシャルアドバイザーが中心で、ファイナンシャルプランナーの業務が十分に普及していないと感じます。アメリカでこの仕組みが機能している理由の一つは、資産残高に対して1%のフィーを支払う制度があるからです。つまり、商品を販売しなくても、顧客の資産が増えればプランナーの収入も増える仕組みです。この仕組みにより、ファイナンシャルプランナーは常に顧客目線の提案ができ、顧客との方向性が一致します。このような仕組みが日本でも普及すれば、IFA業界の発展につながると感じています。
最後にIFAを目指す人たちに向けてメッセージをお願いします。
私が重要だと考えているのは、ライフプランを作成する能力です。特にIFAにとってこれは非常に大切なスキルだと思います。お客様の余裕資金を確認できないと、本来提案すべきでない商品を勧めてしまう可能性があるからです。
余裕資金とは、当社では「5年以内には使わないお金」と定義しています。理想的には、10年くらい寝かせておける資金です。ライフプランをしっかりと作成し、この余裕資金を確認しないと、大きな市場変動があった時に対応できなくなる可能性があります。
中長期に備えられる資金を運用に回すというイメージを持つことが重要です。IFAを目指す皆さんには、ぜひこの点を重視していただきたいと思います。