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債券種別毎の特徴

 以前のコラムでは「債券投資分析の基本」、「債券ポートフォリオ運用」について解説しました。今回は債券種別毎の特徴について解説していきます。

 債券種別についてはNOMURA-BPI、Bloomberg総合指数、FTSE債券インデックス等のインデックス情報業者によっても定義が微妙に異なります。しかし、分類方法は概ね似通っているため本稿では各インデックスのサブセクターの定義をある程度まとめた形で解説していきます。

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目次

国債

 各国の政府が資金調達のために発行する債券です。一般的にはあらゆる債券の中で国債の信用力が最も高いとされています。ただし、信用力が高い反面、利回りは他の債券種別に比べて低くなります。年限も数ヶ月の短期債から100年の超長期債まで様々なものがあります。なお日本国債の場合は、40年債が最も年限の長い銘柄になります。また発行額が大きく信用力も高いことから債券の中では流動性(売買のしやすさ)も最も高くなっています。

 ただし、国債には自国通貨建て国債と外貨建て国債があり、自国通貨建てか外貨通貨建てかで事情が異なります。

自国通貨建て国債としては日本円建ての日本国債や米ドル建ての米国債が挙げられます。自国通貨建て国債の場合、原則としてデフォルト(債務不履行)となることはあり得ません。国債の発行残高がどれだけ増えたとしても、国債発行国の政府あるいは広義の政府部門である中央銀行が新たに通貨を発行して金融機関や国民に国債購入に必要な資金を供給することによって国債の買い支えと借り換えを続けることが出来るからです。より直接的には政府が発行した国債を中央銀行が買い入れることも可能です。もちろん国債の発行額や通貨供給量が大きくなりすぎると金利上昇や通貨の供給過剰に伴うインフレーションが発生して国債の実質的な価値は目減りしていきます。

しかし、一度発行された自国通貨建て国債は保有期間中における時価変動があったとしても、最終的には必ず額面で償還されます。例えば、トルコのような経済基盤が脆弱な国の国債であってもトルコリラ建ての国債であれば必ず額面で償還されます。保有期間中に利率以上にトルコリラの為替レートが下がるとトータルでは損失となることはありますが、トルコリラベースでは確実に資産は増えていくのです。

ちなみに日本国政府が発行しているのは日本円建て国債のみであるため、基本的に日本国債がデフォルトすることはありません。自国通貨建て国債がデフォルトする例外としては、政治的な混乱により国内の金融ネットワークが機能しなくなった場合、他国による侵略や国内の革命で国家(政府)自体が消滅してしまった場合などです。

 一方で外貨建て国債の場合、国債であるにもかかわらずデフォルトリスクがあります。有名な例では、アルゼンチンの米ドル建て国債のデフォルトがあります。

最近ではロシアの外貨建て国債もデフォルトとしたとされています。外貨建て国債は主に経済基盤の脆弱な新興国が経済開発や戦争のために米ドル等の主要通貨を調達するために発行します。わざわざ外国通貨で資金調達を行う理由は、信用力の低い自国通貨による支払いでは経済開発に必要な資源や工業製品あるいは戦争に必要な武器を輸入することができないからです。外貨建て国債の利率は発行通貨の国債金利に発行国の信用力に応じたプレミアムを上乗せした形になります。

例えば、米国債の利回りが3%であれば、発行国の信用力に応じて2%上乗せして5%で発行するといった具合です。当然ながら外貨建て国債の償還には外貨が必要になります。外貨建て国債の発行国において国際収支の赤字が継続していて外貨の流出が止まらず、新たな外貨の借り入れもできなくなくなれば、いつか返済に必要な外貨が底をつきます。そうなるとその国はクーポンの支払いや元本の償還ができなくなり、外貨建て国債はデフォルトします。

政府保証債

 国営企業、独立行政法人、地方自治体などの公的な組織が発行する債券に政府が保証を付けたものです。日本では日本高速道路保有・ 債務返済機構、日本政策投資銀行、住宅金融支援機構といった組織が発行しています。政府保証債は仮に発行体がデフォルトしたとしても、政府が元利金の返済を保証します。

そのため国債に準じる信用力を持っており、安全性の高い債券です。政府そのものが発行する債券ではないため、発行体がデフォルトした際に政治的な理由により保証がなされない可能性はあります。そのような事態が発生する可能性はかなり低いのですが、その分のリスクプレミアムとしてわずかとはいえ利回りが国債に上乗せされていることが一般的です。

地方債

 地方自治体が資金調達のために国とは別に独自に発行する債券です。日本では都道府県や政令指定都市などの大都市が発行しています。地方自治体に対しては政府の財政支援があるという前提の下に国債に準じる信用力があるとみなされます。

しかし、あくまで借入・返済の主体は国に比べて財政力の劣る地方自治体が主体であること、政府が地方自治体を支援するという保証があるわけではないことといった理由から国債や政府保証債に比べて信用力は劣ることになります。国に比べて信用力が劣る分のリスクプレミアムとして地方債の利回りは国債よりも高くなります。

ちなみに日本では今まで地方債がデフォルトした例はありません。事実上財政破綻したとされている北海道夕張市の例でも、地方債ではなく借入という形ではありますが国の支援の下に債務の返済が行われています。なお海外では米国の自治領であるプエルトリコが2015年にデフォルトした例などがあります。

国際機関債

 世界銀行などの国際機関が資金調達のために発行している債券です。返済原資は当該国際機関自体が行う投融資等の事業による収益や加盟国による拠出金になります。発行通貨は発行体が行う事業により様々です。米ドル建てのような主要通貨で発行されることもあれば、ブラジルレアルや南アフリカランドのような新興国通貨で発行されることになります。利回りは発行通貨と国際機関自体の信用力(格付け)によって決まります。信用力(格付け)は基本的に資金の出し手である加盟国の国債の信用力に準じたものになります。

しかし、当該国際機関の加盟国が政治的な理由により資金拠出を拒否した場合は、デフォルトする可能性があります。そのため各国政府の国債に比べる信用力は若干劣るとともに、利回りは若干高くなります。

社債

 企業が資金調達のために発行する債券です。利回りとリスクは発行体である個々の企業の経営状態に左右されます。また多くの場合において担保は設定されませんが、担保が設定される場合もあります。

年限の設定は個々の企業の自由ですが、3年~10年くらいの期間で設定される場合が多くなります。トヨタ自動車のような収益力が高く財務基盤が安定している企業の社債であれば利回りは低めですがデフォルトの確率は低くなります。逆に経営状態が悪い企業の社債であれば、利回りは高い代わりにデフォルトする確率は高くなります。

転換型社債(CB:Convertible Bond)

一定の条件の元に債券から株式に転換できる社債です。転換型社債は債券と株式の中間的な性質を持つ金融商品です。株式転換に伴うアップサイドが狙える代わりに一般的な社債と比べて利回りが低くなる傾向があります。

資産担保証券(ABS:Asset Backed Securities)

 不動産や住宅ローン、自動車ローン、リース、消費者ローンに関する貸付金線債券などの資産を裏付けとして発行される証券の総称です。資産担保証券は金融機関や不動産会社などが自社の資産を証券化して他の投資家に販売することで、資金繰りを改善したりリスクを移転したりすることを目的とし発行されます。利回り、信用力(格付け)、年限等の条件は担保となる資産の中身に左右されます。

例えば、都心の一等地にあるオフィスビルを担保にした貸付債権であれば利回りは低めで信用力は高くなります。一方で、個人向けの消費者ローンを担保にした証券であれば、利回りは高いですが元本が毀損するリスクが高くなります。

仕組債

 債券の名前がついていますが、実質的にはデリバティブ(金融派生商品)です。為替、株価指数、個別銘柄に関わる先物やオプションの取引を組み合わせて様々な条件のキャッシュフローを生み出すように設計されています。

例えば、「日経平均株価が20,000円を上回っている間は年間2%のクーポンが発生して満期には額面で償還されるが、日経平均が一度でも20,000円を下回ってしまうとクーポンが0%になったうえで満期時の償還金額も日経平均株価に連動して変動する」といった条件で発行されます。仕組債は大手金融機関が発行していることが大半です。発行目的も他の債券のように資金調達でなく、発行体である金融機関が手数料収入を得るための商品として投資家に対して組成・販売している場合がほとんどです。仕組債自体の信用力は発行体である大手金融機関に準じます。

しかし、仕組債の場合は「信用力(格付け)」と「金融商品としてのリスク」が大きく異なる点に注意が必要です。ここで述べる「信用力(格付け)」はあらかじめ定められた条件でのクーポン及び元本支払が履行されるかどうかの問題です。「金融商品としてのリスク」は為替や株価の変動に応じて投資家が受け取る利益あるいは損失が変動してしまうリスクが該当します。先ほどの日経平均株価を参照する仕組債の例でいえば、発行体である金融機関の財務が盤石で発行条件通りの支払いがなされたとしても、日経平均株価が15,000円まで下落すれば元本が毀損して最終的には損失となる可能性があるということです。

 仕組債はリスク・リターン特性が一般的な債券のとは大きく異なるため、投資の際には発行条件を慎重に確認することが必要です。仕組債は一見すると、一般的な債券と比較して高い利回りが設定されており魅力的な金融商品に見えることが多いです。しかし、発行条件をよくよく確認すると実質的には為替や株式のリスクを取っているといったケースが多々あります。つまり債券よりもリスクの高い為替や株式に投資をしているのと同じ状態であるため、一般的な債券よりも高いリターンを実現できるのです。

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この記事を書いた人

IFA転職を運営し、IFA専門転職支援サービスを展開。創業から100名以上のIFAへの転職を支援。また、アドバイザーナビ経由でのIFAになった方の転職者のコミュニティ「Club IFA」も運営しており、IFA業界の転職市場に精通している。

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