IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)への転職を検討する際、多くの方はIFAの年収がいくらなのかに注目するのではないだろうか。
当記事ではIFAの平均年収や主な収益源、年収を増やす方法について解説していく。
IFAの平均年収について
IFAの働き方は一般的には、「社員としてIFA法人に勤務する」「業務委託としてIFA法人と契約する」の2種類に分かれる。以下では正社員IFAと業務委託契約IFAの両方の年収について考察した。
なおIFAの平均年収については、国や公的機関による統計資料が公表されていないため、正確な数値を割り出すのが難しい。そのため、あくまでも弊社の経験や関係各所のデータからの推測になる点を最初に補足しておく。
IFAの正社員の年収
まず国の「令和3年賃金構造基本統計調査 」によると、金融営業職業従事者の平均年収は約573.3万円となっている。
また、マイナビエージェントやエン転職、dodaなどの転職サービスでは、証券会社の平均年収はおおよそ500万~600万円だった。
年齢や実力によって変動するものの、転職が盛んな20~30代を基準として考えた場合、金融系営業職の正社員も同程度だと推測できる。正社員IFAを検討している場合は、この金額と同額程度を見積もるとよいだろう。
なおIFAの場合は運営コストが証券会社と比べてかからないことから、勤務先のIFA法人によっては、証券会社勤務より高い年収を得られることもある。
実際に大手のIFA法人の場合は高年収だ。例えば株式会社アイ・パートナーズフィナンシャルの有価証券報告書によると、平均年収は904万円だった。
IFAの業務委託契約の年収
業務委託契約のIFAの年収はどうだろうか。こちらは正確なデータがないものの、実力によっては1,000万円超える年収になることは珍しくない。
業務委託契約のIFAはある種フリーランスのような扱いであるため、報酬額は給与体系や年功序列などではなく完全歩合制で決まる。実力によっては、年収は青天井となるだろう。
1,000万円を超えるIFAは、前職が証券会社の経験者であるケースが多い。
弊社が実施した「【2022年版】IFA業界調査 IFAの活動年数やメインビジネス、顧客層に関して」でも、前職での外務員の活動経験が3年未満の方は10%に留まり、10年以上の割合が60%と過半数を占めていた。
前職の顧客やその他の人脈などを活かし、高年収につなげているようだ。

しかし一方で、実力がなければ業務委託契約のIFAは、稼ぐのが難しいのも実情だ。日本資産運用基盤の「日本におけるIFAビジネス(2020年12月)」によると、IFA法人は金融商品仲介業務の手数料収入のみでは、事業継続が困難との推察が挙がっている。
以上のことから「IFAなら今の仕事より高年収を狙える」と、安易に転職を検討するのはおすすめしない。実力磨きや営業戦略の検討を常に意識する覚悟を持っておこう。
前職との年収の差
弊社が実施したIFAの年収に関するアンケートにて、現役のIFAから「前職からの年収変化」「年収変化と年齢の関係」「年収変化と契約形態」など、前職と比べたときのIFA年収について回答してもらった。
まず、前職からIFAに転職した方の年収変化の結果は以下のとおりである。
・半分程度:26%(半分以下11%、半分程度5%) ・前職と同等程度:39% ・1.5倍程度:18% ・2倍程度:12% ・3倍程度:2% ・4倍以上:3% |

あくまで前職との比較であるため、各個人の状況が結果に大きく影響している。それを踏まえた上での結果は「年収が上がった方」と「年収が変わらない・下がった」という方の割合は、おおよそ五分となった。
アンケート結果からも、「IFAに転職しても年収が上がる保証はない」「実力次第では3倍、4倍以上の収入を得られる」ということがわかるだろう。
なお、3倍以上の年収変化となったのは、前職の年収が低い傾向がある20~30代の層のみだった。
また、今回のアンケートの結果では、正社員か業務委託契約かでは年収変化に相関関係が認められなかった。どちらの契約形態においても、インセンティブ報酬の割合が高いからだと推測される。
【関連記事】
IFAの収入源
IFAの主な収入源は、証券会社から受け取る、金融商品仲介業に関する各種手数料がメインとなる。具体的には次のとおりだ。
IFAの収入 | 概要 |
金融商品の売買手数料 | ・株式、債券、投資信託などの金融商品の取引金額などに応じた手数料 ・取引金額の1~3%程度が多い |
継続的な手数料 | ・投資信託の残高に応じた管理報酬 ・投資一任型の運用商品の預かり期間で定期的に発生する投資顧問報酬等(投資一任報酬等) ・上記いずれも預かり資産の約1%が多い |
資格や経験によっては金融商品仲介業以外にも、IFA業務と相性のよい仕事と兼業することで、IFAの収入源とするケースもある。例をみていこう。
・保険商品(生命保険・損害保険)に関する仲介業の手数料 ・不動産投資や不動産売買に関する手数料 ・資産運用に関するアドバイスやコンサルティングに関する報酬 ・ライフプランや税金、相続・事業承継などに関するFP業務の報酬 ・税務・会計・監査業務 ・執筆や講演などに関する報酬 |
資産運用分野+アルファの営業が、今後のIFAが伸ばすに当たり重要になるはずだ。
年収を増やすには
IFAが売上を伸ばして年収を増やすには、金融商品知識の習得や提案力の向上、コミュニケーション能力の向上といった実務能力を磨くのは効果的だ。
それに加えて、IFAの年収を増やすには営業面に目を向けることが大切になる。ここからはIFAの年収を増やすコツについて解説していく。
自身の能力や経歴に応じた顧客開拓を行う
以下では、出身業界に応じたIFA法人の顧客の特徴について簡単にまとめた。
IFA法人の前職(主たるサービスの母体) | 顧客の特徴 |
証券会社 | ・証券会社在籍時の顧客基盤引き継ぎ ・前職からの付き合いある顧客からの新規紹介が多数 |
税理士・会計士事務所 | ・金融商品に関する会計・税務関係の相談がある顧客 ・地元の富裕層や地元企業による相続・事業承継に関するニーズ |
保険代理店 | ・金融商品より保険商品を主力としているケースが多数 ・保険・証券の総合的な資産運用コンサルティングにニーズ |
FPサービス | ・FPサービスを利用する地元顧客が中心 ・顧客に寄り添った安心感あるサポートにニーズ |
参考:みずほ総合研究所株式会社「独立系フィナンシャルアドバイザー(IFA)に関する調査研究 」
上記のように、IFAの前職が何だったかによって、同じIFAでも顧客基盤に違いが見られる。自身の能力や経歴を理解し、適切な営業先にて新規顧客の開拓を進めよう。
営業先を増やす
IFAには限らないが、どれだけスキルや知識が優れていようとも、顧客から見つからなければビジネスは成立しない。IFAとして働くなら、自分から積極的に営業先を増やしていく必要がある。
以下では、IFAが新規顧客を獲得する主な方法をまとめた。
・既存の顧客・取引先・知人からの紹介 ・IFA業務以外で開拓した顧客 ・公式サイトのホームページやポータルサイトからの問い合わせ ・自主開催や取引先開催のセミナー ・SNSやブログ等での発信活動 |
参考;QUICK資産運用研究所 IFA実態調査(2018年11月)
資格を取得する・専門家と提携する
IFA業務と相性のよい業務を兼業するには、資格などが必要になるケースもある。保険商品の取扱であれば保険募集人、投資助言・代理業であれば金融商品取引法に基づいた登録、税務関係の具体的な業務なら税理士などが挙げられる。
もし自分自身で資格取得・登録が難しい場合は、対応する専門家と提携するのもありだ。とくに税理士や会計士など難関資格が必要な分野に関しては、士業事務所からの顧客流入も視野に入れつつ、業務提携を結ぶのもよいだろう。
提携する証券会社を吟味する
IFAが取り扱える金融商品は、提携先の証券会社によって大きく左右される。IFAの年収を増やすには、自身の強みや理想とするプランと相性のよい商品を扱う証券会社との提携が必要だ。
また、提携する証券会社や所属するIFA法人を選ぶ際の指標となるのは、提携先証券会社のサポート体制の有無である。IFA支援が手厚い証券会社や、コンプライアンス研修の実施やシステム・ツールの貸出などに積極的であるため、スタートしたばかりのIFAにとって非常に心強い。しっかりチェックしておこう。