特定の金融機関等に所属することなく、独立した立場で客観的なアドバイスを行うのがIFA(Independent Financial Adviser・独立系ファイナンシャルアドバイザー)です。いわゆる金融商品仲介業者になります。2021年12月末のIFA人口は5,365人(法人所属5,141人・それ以外224人)と、2020年12月末の法人所属4,541人よりも約700人増えています。IFAの人口は年々右肩上がりであり、IFAという職業が注目されつつあるといえるでしょう。
「IFAへの転職に興味がある」と思われる方もいるのではないでしょうか。
当記事ではIFAとして働く流れや就職・転職先となるIFA法人の選び方、IFAとして新規顧客を開拓するコツを解説します。
IFA法人との提携と独立の違いも解説
IFAとして活動するには、証券外務員資格の取得が必要です。その後、IFA法人に所属するか独立するかを選びます。初めてIFAとして働く場合は、IFA法人に所属するのが一般的です。以下ではIFAになる流れを解説します。
証券外務員資格を取得する
IFAとして働くための必須資格は「証券外務員資格」です。証券外務員資格とは、有価証券の基本や金商法(金融商品取引法)などの証券取引に関する知識を証明する、日本証券業協会認定の資格です。
金融商品仲介業を行うには、証券外務員資格に合格し、外務員として日本証券業協会に登録しなければなりません。
証券外務員資格の合格率は、一種・二種ともに60~70%前後で推移しています。数ヶ月の勉強は必要ですが、勉強すれば比較的合格しやすい試験といえるでしょう。受験資格もなく、原則として誰でも受験できます。証券外務員資格については、プロメトリック株式会社の公式サイトにてご確認ください。
IFA法人に所属するか独立するか選ぶ
IFAとして働く方法として、主に「IFA法人に所属する」または「独立する」の2パターンがあります。
2022年4月現在での登録されている金融商品仲介業は845で、約3分の2が法人、約2分の1が個人となっています。(現在では個人で認可を受けるのは難しく、一般的には法人に所属する形になります)
IFA法人に所属する
IFA法人とは、法人として金融商品仲介業の登録を受けて金融商品取引業者(証券会社など)と契約し、IFA業務を通して利益を得る組織のことです。
このIFA法人と業務委託関係になったり、雇用契約を結んだりなどして所属できれば、IFAとして働けます。有名なIFA法人としては、「株式会社アイ・パートナーズフィナンシャル」や「ひびきフィナンシャルアドバイザー株式会社」などが挙げられます。
IFA法人に所属して働くメリット・デメリットは次のとおりです。
IFA法人で働くメリット | IFA法人で働くデメリット |
IFA法人の看板を使って活動できる | 利益の取り分が独立と比較して低くなる可能性がある |
営業活動やバックオフィス作業などを他の従業員に任せられる(所属法人による) | 職場の人間関係で苦労する可能性がある |
大手証券会社の金融商品を扱える可能性が高くなる | 扱える金融商品や働き方が、法人の方針やノルマなどに左右される |
IFA法人に所属するには、通常の就職・転職活動と同じく、IFA法人による採用試験や審査に通過する必要があります。
自ら金融商品仲介業として独立する
個人(自分で設立した法人含む)として金融商品仲介業者の登録を受け、独立して働く方法もあります。IFA法人を通じて金融商品を扱うのではなく、自分が金融商品取引業者と直接契約を結ぶイメージになります。(現在では個人で認可を受けるのは難しく、一般的には法人に所属する形になります)
独立IFAとして働くメリット・デメリットは次のとおりです。
独立して働くメリット | 独立して働くデメリット |
利益の取り分が多くなり年収が青天井になる可能性がある | 開業手続きや法人登記の作業などの手間や費用が必要になる |
扱う金融商品やオフィス用具、事務所、雇う従業員などを自分の裁量で決められる | スキルや営業力がないと顧客開拓や継続契約などが難しく収入が得られなくなる |
自分の能力や活動と比例して売上や事業規模を大きくできる | 同僚・先輩のIFAに出会いづらく情報収集や研修機会が不足する可能性がある |
独立IFAになるには、「税務署に開業届を提出して個人事業主になる」および「登記して法人化する」などを行います。また、金融商品仲介業者として内閣総理大臣の登録を受ける必要があります。
日本証券業協会の調査によると、個人事業主のIFAは1桁と非常に少なく、ほとんどが法人の代表者です。法人以外のIFAとは契約を結ばない金融商品取引業者も多いため、独立する場合は法人化が無難といえるでしょう。
IFAのキャリアをスタートさせる方は、難易度や負担面などを考慮し、独立ではなくIFA法人に所属するのが一般的です。
所属するIFA法人の選び方
IFA法人に所属して働く場合は、所属するIFA法人によって働き方が大きく変わります。以下では所属先となるIFA法人の選び方を解説します。
業務提携中の金融商品取引業者や当該IFA法人の得意分野を見る
IFAの所属先を選ぶときは、当該IFA法人の業務提携先や得意分野などをチェックしておきましょう。
IFA法人に所属して働く場合、取り扱える金融商品は所属IFA法人と契約中の金融商品取引業者に左右されます。そのため、IFA法人によって金融商品の種類やターゲットとなる顧客層、得意分野、運用方針などが変わります。自分に合った法人を選びましょう。
また、金融商品取引業者は業務委託先のIFAを指導・監督する義務があります。厳格な指導・監督を行うところと契約しているIFA法人かどうかも、所属先を選ぶ基準の1つです。所属先のコンプライアンスや運営方針に問題がないかの判断材料になります。
雇用形態・報酬体系(契約内容)を見る
雇用形態・報酬体系は、所属したIFA法人ごとに異なります。例えば、業務委託契約による完全歩合制だったり、雇用契約(正社員・契約社員など)として固定給+歩合制だったりです。事前に求人票や面接などで確認しておきましょう。
IFA法人の種類ごとの特徴を掴む
IFA法人は、どのような業務形態かどうかによって特徴が異なる傾向があります。身の能力を活かせる法人を選択することをおすすめします。
業務形態の違いによる特徴は次のとおりです。
業務形態 | 特徴 |
大手証券会社出身者等によるIFA法人 | 大手証券会社在籍時の顧客や当該顧客からの紹介、新規開拓による顧客獲得が多い傾向 |
税理士・会計士事務所 | 税制上のメリットが多い商品や地元企業・相続に関する資産運用ニーズを持つ顧客が多い傾向 |
保険代理店 | 保険商品を切り口としたコンサルティングに加えて証券分野を強化したいIFA法人が見られる傾向 |
FAサービス | 地域住民や小規模事業者など、長年の付き合いになりやすい顧客が多い傾向 |
地域金融機関軽金融サービス拠点の担い手 | 地域の金融機関を利用する住民や新規開拓の顧客が多い傾向 |
証券会社からの業務転換先 | 既存の対面系証券会社と同じで、株式投資中心の顧客が多い傾向 |
参考:金融庁「独立系ファイナンシャルアドバイザー(IFA)に関する調査研究(みずほ総合研究所)」(2020年7月)
IFAの顧客開拓を成功させるための3つのコツ
ビジネスモデル上、IFAとして利益を上げるには顧客開拓が欠かせません。提案できる金融商品のラインナップを増やすのはもちろんのこと、新規開拓のために必要な戦略や能力が必要になります。
IFAの顧客開拓を成功させるためのコツを以下で解説します。
(1)顧客を紹介してくれる人脈を形成する
QUICK資産運用研究所が実施した「IFA実態調査(2018年11月)」によると、IFAの新規顧客獲得方法として「顧客・取引先・知人からの紹介」と回答した人が7割強に上りました(複数回答あり)。IFAで顧客開拓を成功させるには、顧客を紹介してくれる人脈をいかに形成できているかがカギになります。
顧客へ直接アプローチするだけではなく、IFA同士や税理士といった専門家などとの交流を深めておくとよいでしょう。
(2)ファイナンシャル・プランニング関連の学習・資格取得を目指す
IFAとして成長するには、ファイナンシャル・プランニング全般の知識や市場状況を常に学習し続けることが大切です。
資産運用に関するアドバイスを行うIFA業務には、顧客ニーズやライフプランに応じた多様な金融商品を提案できる能力が必要になります。資産運用と関わりが深い保険や税金分野も勉強しておくと、提案できる幅が広がるでしょう。
ファイナンシャル・プランニングの学習の一環として、資格取得を目指すのもおすすめです。体系的に学べるうえに、取得する資格によっては行える業務が増えます。また、IFAとしての権威性向上にもつながります。
IFAと相性のよい資格は次のとおりです。
資格 | 概要 |
ファイナンシャル・プランニング技能士(ファイナンシャルプランナー) | 金融や税制全般を幅広く学べる資格 |
生命保険募集人資格 | 生命保険の販売に携われるようになる資格 |
損害保険募集人資格 | 損害保険の販売に携われるようになる資格 |
士業(社労士・税理士・行政書士など) | 取得難易度は高いが各種独占業務が行える資格 |
(3)新規開拓や顧客ニーズの引き出しができる顧客開拓力
顧客と1対1で対話し、中長期間にわたって顧客のサポートを行うIFAにとって、顧客開拓力が重要になります。IFAにおける顧客開拓力とは、「コミュニケーション能力」「マーケティング能力」「人間力(誠実さ)」などです
顧客開拓力を身につけるメリットは次のとおりです。
・新規顧客の信頼を勝ち取って契約に結び付けられる ・ヒアリングで顧客のニーズを引き出し適切な金融商品を提案できる ・顧客獲得につながる他IFAや専門家との交流がスムーズにできる 等 |
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